フリードリヒの日記

日常の出来事を、やさしい気持ちで書いていきたい

下町のジャズ喫茶

2020年04月04日 07時00分00秒 | 日々の出来事・雑記

新潟から東京に出てきて、最初に住んだのは中央区の月島だった。

すぐ近くに門前仲町があって、いろいろ探索して、あるジャズ喫茶に入った。

その時、客はいなくて、僕と友人の二人だった。

僕たちは、若造でジャズなんか聞いたこともなく、場違いなところに来てしまった気分だった。

でも、マスターは、気にもしていなかったようだ。

名前は覚えていないが、後で聞いたところによると、そのジャズ喫茶はかなり有名な所らしい。

それ以外ほとんど覚えていない。

ただ、流れていたピアノの演奏をはっきり覚えている。すごく美しいメロディーラインだった。

僕はもう一回そのピアノの演奏が聞きたいとリクエストをした。

マスターはうなずいてもう一回かけてくれた。

僕は、その時、すごく好きな女の子がいた。片思いだった。

僕はそのピアノを聞きながら、その女の子のことを考えていた。

ただ、覚えてるのはそれだけだ。

何年か経った。

女の子は他の男と結婚し、僕は僕の人生を歩んでいた。

ふとした時に、あるピアノの音楽が流れた。

僕はすごく切ない気分になった。

そして、なぜか、片思いだった女の子のことを思い出した。

そのとき、ああ、そうだ、あのジャズ喫茶で流れていた音楽だ、と気づいた。

そのピアノは、Bill EvansのWaltz for Debby

今でもこのピアノを聴くと、ただ一途に思い続けるだけだった切ない気持ちを思い出す。

コメント
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