白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―堆肥―土壌有機物の効用―

2012年02月04日 | 肥料

先のブログで堆肥と化学肥料の関係に触れましたが、ご存じのように土壌は植物が必要な栄養素を獲得する媒体であり、その栄養素の種類は、大気と水からの炭素(C,水素(H,酸素(O)、土壌からの窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシュウム(Ca)、マグネシュウム(Mg)、硫黄(S)の多量要素、鉄(Fe,亜鉛(Zn,マンガン(Mn, 銅(Cu,ホウ素(B,モリブデン(Mo,塩素(Cl,ニッケル(Ni)の微量要素の合計17の必須元素であります。

 

―(社)日本土壌肥料学会HPイラストよりー

勿論、植物は、その他の幾種類かの土壌に含まれる元素を摂取し、中には有益とされる元素もありますが、今日までの植物生理上の知見ではそれらは必須要素とはなっていません。

 

その大切な17種類の必須元素が植物の成長にはどのくらいの量が各々必要であり、どのように土壌に備えられ保持されているのでしょうか。

 

―高等植物の必須金属元素、必須非金属元素及び有益元素―

今日までの科学的知見では、既に植物に必要な必須栄養素がどのような割合で、その成長に関わっているかは土壌を離れた養液栽培で明らかにされて居ますし、又土壌栽培では多量要素である窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシュウム(Ca)、マグネシュウム(Mg)、硫黄(S)や1部の微量要素が、土壌にどのくらい保持されているか土壌分析等で分かるようになりました。

 

土壌の主要な構成物は母岩風化鉱物粒や派生2次粘土鉱物に有機腐植であり、植物は自然界では、母岩鉱物由来の無機元素や堆積した生物遺体等から無機化する諸栄養素を土壌から摂取しているのですが、農耕を始めた我々人間はそうした植物が必要とする栄養素を肥料として人為的に土壌に添加する知恵を学びました。

 

植物は土壌が保持している養水分を根から摂取するのですが、その養水分が植物の摂取に最適な濃度と組成の“有効態養水分”として土壌に保持される事が大切であり、与えられる肥料量は必ずしも稙物の摂取量とは直接は相関しないとされ、その摂取される“有効態養水分”をどのようにして土壌に持続して保持させていくかが肥料を与える上での大切な課題であります。

 

その最適な濃度と組成の有効態養水分のカギを握るパラメーターは、土壌に含まれる土壌有機物由来の腐植コロイドや構成している1次鉱物粒、2次鉱物の粘土微粒子等の物理性、化学性、生物性と言われています。しかし、それらの組成や添加された堆肥等の土壌有機物からどのような経過を以って、その効果をもたらすのかは多くの議論の余地があると申せます。

 

―リサイクルロゴマークーHPより

さて、その堆肥の効用、土壌有機物の役割等について、専門家の話を紹介したいと思います。日本の堆肥研究の第一人者である原田靖生氏(社団法人日本土壌肥料学会 現常務理事)が、前職時代に「循環型社会造りにおける堆肥利用」ついて語られた対談でのお話です。

 

「日本の主要な土壌を代表する約2万地点の農地を対象にして20年にわたっての土壌の物理性、化学性等の詳細な土壌環境基礎調査の結果、日本の農耕地土壌は概ね良好に維持されているが、一部では養分の過多も現れていて、肥料や有機物の多投で地下水を中心とした周辺の環境悪化をもたらしている面が指摘され、それがより大きな問題」と申されました。

                      ―窒素循環参考図―HPより
そして、「化学肥料が悪で、有機物が善というわけではない。どんな資材であれ、適切に使用しなければ土壌や周辺環境を悪化させるのは同じであり、むしろ、化学肥料のほうがコントロールしやすく、環境保全的な資材や施肥技術が多く開発されている」と申されています。

又、エコファーマーの大量の堆肥の施用量条件については、「堆肥の適正施用量は、対象作物や成分含有率によって異なるが、一般的には反当たり1~4㌧程度の範囲内であり、堆肥でも多投すれば、当然環境に悪影響を及ぼし、また、堆肥中心で栽培すれば窒素の溶脱が低減できるという試験結果が報告されているが、ほとんどは短期間の試験であり、期に連用した場合の試験結果では、4年目頃から急激に上昇して、その後は化学肥料区と同等に土壌溶液の硝酸態窒素濃度が高くなる事が明らかになった。」と申しています。

 

―エコファーマーのシンボルマークー

堆肥、土壌有機物の功罪については、「土壌の物理性、化学性の改善など、土づくりに果たす堆肥の役割は大きいが、適正施用は重要であり、品質の悪い堆肥を多量施用すると、かえって作物に様々な害作用が生じたり、土壌環境を悪化させる結果にもなる」と申しています。

 

有機物施用の必要性には、「作物の品質などに直接反映しないかもしれないが、土づくりに果たす堆肥の役割は大きいと思うし、低品質有機物の過剰投入は論外だが、化学肥料と組み合わせた適正施用は必要」と申しています。

―堆肥は品質管理が大切-コンポストプラントーHPイメージより

そして、「別の論議になるが、わが国では膨大な量の有機性廃棄物が発生しており、これらに含まれる大量の窒素を含む有機性廃棄物を放置しておけば、重大な環境汚染が生ずると思われる。 政府は、バイオマス・ニッポン総合戦略を立ち上げ、農業もそのなかに組み込まれた形で推進されている。“農地をごみ捨て場にするな!”という主張は従来からあり、これは当然なことであるが、物質循環における農地の位置付けは重要であり、農地で有機性廃棄物を一切引き受けないということになれば、循環型社会の構築は根底から覆されることになろう。このような広い観点から、農地が物質循環の一翼を担うことは必要なことであろう。もちろん、高品質の有機物を適正量施用するという範囲であるが。」と
結んでいます。

堆肥は有機性廃棄物リサイクル推進の観点からは大切ですが、その利用の難しさをご理解頂けたでしょうか。

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