歳を経ると歳月の流れが一層早まるように感じられますが、今年も早くも8月に入り自家菜園のある外房のいすみ市周辺でも間もなく早場米の収穫が始まります。
毎年の事ですが今年も亦、美味しい新米が賞味できる季節の到来であり、妻が他界して今年の7月で早くも丸2年を越し、一人身となっても健康で無事息災に2年を過ごせたのは、先に逝った妻が草場の陰で無事を祈ってくれているからと思えて、妻への供養を尚一層長く続けられるように日々精進を重ねて更に長生きしたいと思わず欲ばって仕舞います。
―いすみ米のふるさとーJAいすみより
扨て、其の新米ですが、現地での専業農家の方から直接購入させて頂いて今年で8年目になります。有機栽培に準ずるエコファーマーの作る 「特別栽培米」であり、食べての美味しさは格別ですが、其処には大地を守って、健康に良いお米を消費者に届けたいとする思いが込められて居り、そうした生産者に応える消費者は僅かなプレミヤム価額の上乗せだけで充分なのかと常々思いながら、そのお米の美味しさと食べての安心を甘んじて享受させて貰って居ます。
それが昨今では 「コメ離れ」とも言われてコメの消費は低下方向にあり、当世はコメ豊穣への感謝の気持ちも薄れて居り、瑞穂の国のコメ文化、此の先は誰が守るのかと思ってしまいます。
―いすみの特別栽培米コシヒカリ「いすみっこ」―より
それでは表題の話に入りますが、実は先のブログで紹介した 「サイエンスデイーリーニュース」の中に、以前に発表された記事があり、其の表題が “Rice agriculture accelerates global warming” であり、それで 「稲作農業は地球温暖化を加速化する?」と書いたのです。
この話、生来の好奇心から何事かと早速読んでのですが、何といっても日本にとってのコメはTPPの重要課題の一つのであり、瑞穂の国の日本人なら興味を持って然るべきとの思うのですが、皮肉な事に今やコメ離れ時代であり、誰もが知りたくなるような話のインパクトはありません。それで一寸憚れるのですが敢えてその概要を意訳で紹介させて頂きます。
先ず地球の温暖化と言えば言わずと知れたこの地球上での産業革命以来の多くの化石燃料を使い続けた結果で大気に増加するCO2濃度が原因であり、いわゆる温室効果ガスのもたらす現象ですが、考えて見れば植物である稲が、そのCO2を減らしても増やす事など考えられないのが一般常識であり、其処が違うからこそ 「サイエンスデイーリーニュース」に取り上げられて報じられたと言えばご理解されるでしょう。
稲作農業で増える地球温暖化ガスの正体、同じ温室効果ガスでも、その温暖化効果がCO2の25倍とも言われる メタンガス(CH4)の増加であります。
そのメタン発生の程度が、CO2の増加に伴う温暖化の環境下では、稲作によって拍車が掛かって更に増加すると言う現象、新しい研究でそれが明らかにされているのです。
ー稲を今尚手で植えるアジアの農村風景―サイエンスデイーリーニュースより
アジアの農民は稲を植えていますが、大気のCO2が増えて気温が上がると、稲作農業はコメ1キログラム生産する毎に、より強力な温室効果ガスのメタン(CH4)を発生させます。
我々の研究結果では、大気の引き続く変化に連れての稲作農業は、天候には優しくないことが示されています。
これは重要な事であり、何故なら、稲作田圃は最も大きなメタンガスの人的資源の一つであり、コメは世界で2番目に多く生産されている食用作物であるということです。
―Nutrient Cycling in Agroecosystems, 49, 153-161 (1997)より
研究を行ったのは、 Kees Jan van Groenigen博士,と北部アリゾナ大学及びカルフォニア大学デービス校からの同僚研究者達であり、集められて発表された研究は63本の異なる実験であり、主としてアジア及び北米の稲作田圃から集めたものとあります。
実験の共通テーマは、温度が如何に上昇して、余剰となった大気の中の二酸化炭素がコメの収量に影響し、稲作田圃から放出されるメタンの量が、どのように増えるか測定することであったとあります。
研究チームが使った技法は、メタ解析と呼ばれる大きな実験データ本体の中からジェネラルパターンを見つけ出す統計処理ツールであります。
分析した結果、2つの強力なパターンが出現しました。その第一が、より多いCO2がメタンの放出を押し上げ、その第2は、より高い温度がコメの収量の低下を引き起こすと、この研究の共同発表者である北部アリゾナ大学のBruce Hungate教授は説明しています。
メタンは、人間が酸素を呼吸するように、稲作田圃の中で嫌気性の微生物が、CO2を呼吸して発生させます。
大気中のCO2が増えれば増えるほど稲は早く成長し、増えた成長分だけ余計にエネルギーを土壌微生物に供給して代謝活動を増大させます。
CO2の増加レベルはコメの収量も押し上げますが、発生するCH4より小さい範囲に留まるのです。その結果、コメの収量1kg当たりのCH4の発生量は増えて仕舞うのです。
上昇する温度はCH4の発生量には僅か少量の影響しか与えないことが分かりましたが、コメの収量は減少させますし、又コメの収量1kg当たりのCH4の発生量は増大致します。
上昇するCO2の濃度と上昇する温度を一緒にして予想すると、今世紀の終わりには、コメの収量1kg当たりのCH4の発生量はおよそ2倍の量に増大すると、この研究の共同発表者のカルフォニア大学デービス校のChris van Kessel教授は言います。
―アメリカのカルフォーニアの稲作農場風景―Web Imagesより
世界の人口増加と共にコメの需要も世界で更に増えるので、我々の研究が示唆するのは、何か追加的な措置が無くしては、稲作農業は大きくCH4の発生量を増大せる事になるというのです。けれども、研究発表は、稲作農業からのCH4の発生量を減らす有効な選択肢の幾つかがあると指摘しています。
その方法ですが、例えば、栽培シーズン中に田圃から1度排水するような管理実践や代替肥料の施用が田圃からのメタン発生を抑えると言います。
その上に、温度上昇による収量減は、高温耐性への品種切り替えや播種時期の調整で大きく阻止出来るのであり、依って収量当たりのCH4の発生量を減らす事も可能です。
これらの発見は、今般の研究結果と一体となって、同時に一方で温室効果ガスの放出をチェクしながら、地球規模の食糧供給を確実する為の適応手段と温度上昇を緩和する必要性とを真に強調する事となったとvan Groenigen博士は結論しています。
Date:
October 21, 2012
Source:
Trinity College Dublin
以上の話、どのように受け止められましたか。日本はアジアの稲作農業の最も豊かな経験を持つ先進国であり、その気候風土の違いでどこの国でも通用する先進技術の蓄積とは言えないまでも、温度耐性の稲品種の作出や播種育苗の時期の調整など、日本では朝飯前の熟知のノウハウと思われます。
―様々な色と粒形サイズを持つコメーWikipediaより
その日本が、コメで欧米諸国の研究に後れを取るなど考えられないのですが、今アメリカでは消費者の有機栽培のコメの需要が拡大しているのに供給量が足りないと言います。
アメリカの生産者に言わせれば、無農薬のコメ栽培は害虫や病原菌に雑草の大宴会場を用意してやる様なものであり、それは至難の技と言いますが、今や関係科学者を集めての多国籍軍を編成し、農家の採算の取れる有機栽培米の生産ゴールを目指して活動を開始していると言います。
コメ豊穣が需要と供給のギャップとなる一方で、海外からの輸出攻勢で採算に苦しむ日本のコメ事情、日本人は持てる知恵を出して、コメの可能性を見直すべきと申したいです。
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