白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―市販キャベツが美味しくない訳は?―

2018年04月15日 | 野菜栽培

今年の春の天候は例年になく気温の上昇傾向が著しく、各地の桜開花も1週間ぐらい早まって、東京は4月早々に葉桜に替わりました。

先週末は時を逸せずにと、外房菜園での春撒き大根、こかぶ、春撒きニンジンの播種を済ませ、伸び出したジャガイモ、キタアカリの余分な芽を抜き取って土寄せを終わらせました。

例年なら今頃は、柔らかくて甘みのある春キャベツの収穫時期を迎えるのですが、残念な事に昨秋に2度も襲った台風に、植え付けた苗類が覆っていたネット毎すっかり吹き飛ばされ、今年はキャベツの収穫は皆無です。それで例年とは違って、昨秋から天候不順で不出来で値段の高い寒玉系キャベツの市販品を買って食べる羽目になりました。

 

―寒玉キャベツは少い葉数の葉重型―Web画像より

其の東京での近くのスーパーで購入するキャベツの味気の無さにうんざりさせられたのですが、同居する娘曰く、市販の野菜類は見た目の良さと手頃な価額が購入の決め手であり、産地や品種の違いなど選択の余地は無く、野菜の美味さ言うなら昔の八百屋の話であり、今どきはスーパーの店頭に並ぶ野菜からしか選びようが無いと言うのです。

其れもそうかも知れませんが、キャベツと言えば一般にこの時期は、旬となる春キャベツが市場に出回るのであり、その春系キャベツ特有の葉の締まりが緩くて大きく膨らんでいる姿を最近は見掛ける事が少なくなっているように思われます。

あの柔らかくて特に甘く、サラダにして生で食べると抜群の美味さがある春キャベツ、そんな味の特徴の決め手は春キャベツ特有の品種の違いにあり、生産者からすれば、其れには掛かる手間暇をはじめ生産コストで違いがあって、今では採算が取りにくいと言うのが出荷量の減っている理由なのかも知れません。

 

―春キャベツは裂球や抽苔し易いので不利?Web画像より

今日の野菜の一般生産者から見れば、作る野菜類の品種選びの第一は、栽培上のリスクが無くて一定の市場品質(外観と規格寸法)の確保が容易であり、その上に収穫から出荷までの省力化が何よりも大切なのです。

それに品種での味の良さも食の多様化で、消費者のそれぞれの食べ方や料理の違いで決まるのであり、それ故か昨今は、キャベツは市場性に優れる寒玉系と、春系の特徴を生かしての両方を兼ねるような品種が多くなっていると言うのです。

其れを思うと毎年外房菜園で作って来た昔からの春キャベツの固定種 「富士早生カンラン」は当たり外れがなく、成長には早晩のむらがあるのですが、其れが返って家庭菜園では次々と頃合いを選んで収穫できる重宝さがあるのです。今年は全くそのキャベツの無収穫とは誠に残念で溜りません。

 

キャベツの春系と寒玉の違いは?Web画像より

其れで、来期に備えるつもりで美味しいキャベツ作りの秘訣を求めて先日来、西尾通徳氏の著書 「有機栽培の基礎知識」を書架から取り出して改めて読み始めて居ります。

そんな事を考えられるのも家庭菜園だからできる話であり、市販品のキャベツでは満足できないというならば、どうぞご自分で作るなり、そんなキャベツを特別に探すなり、ご自由にと言うのが当世の商業生産者側の申す言い分かも知れません。

それにして、当世の市場出荷される野菜類が食べて見て、あまり美味しいとは言えない理由、其れが昨今の各産地での当然の姿であって当たり前と言うことは、何とも消費者にとっては不本意な話です。

其の理由の多くは、産地農業が一般に実施している許容限界ギリギリの単作(連作農法)にあり、化学肥料と多種類の農薬との組み合わせで採算の取れる収量と品質の確保に成果を上げている点であり、其れが現状の農業生産体制での実施可能な姿で有ると言う事は如何なものでしょう。

今日の農業生産効率が一定以上に維持できる要件と言えば、それが化学肥料中心の高度な施肥管理であり、加えて発生が予期される病虫害の徹底防除であり、それに応える最新のF1栽培品種であり、続いての容易な収穫穫物の選別出荷の作業性の良さであり、今や市場に並ぶ日本の農業生産品の品質の確かさと、見た目の良さはピカ一であり、素人目には非の付け所の無い事は誰もが認めるものと思います。

 しかし、その陰で決して見逃してはならないのが、化学肥料主体の施肥管理であり、それを支えている多種類の登録農薬の利用であり、其の結果でもたらされいる、農地圃場だけに限らない、農業生産体系の中にあっての大気、水系、土壌を含めた自然生態系に及ぼしている計り知れない長期に亘っての環境負荷であります。

 

―群馬妻恋地域の高原キャベツ圃場風景Web画像より

更に何よりも大切なのは、そうした農業生産物の食しての安全、安心であり、その美味しさは本当は如何なのか、また私たち誰もが、日常的に食べていても身体に何も影響も無い、充分な健康が約束されるか如何かであります。

 西尾通徳氏の著書 「有機栽培の基礎知識の中で、有機肥料栽培は植物である作物の栄養生理の観点からは大変好ましいのであり、化学肥料栽培区との比較では、無農薬栽培での病害発生の顕著な相違が確認されていると紹介しています。しかし、だからと言って多収量や品質向上を狙って有機肥料を多投すれば、化学肥料の過剰施用と全く同じ問題を起こすと述べています。

 現状の主流となっている慣行農業の化学肥料と農薬を使用する事を前提とした農業技術体系にあっては、実際には不適切な土壌管理に起因して作物の栄養代謝が攪乱され、その結果、病害の激化させている例が多くあると言います。

其れを作物の「栄養病理複合障害」と呼んで懸念を示しながら、その現状は変えるに充分な論拠には乏しいと言い、作物の栄養代謝と病気の関連性に触れて、作物の生育を全体で見据える視点が大切と申しています。

そうは言えるのも現状の農法は、化学肥料主体と農薬の多投で問題となる作物の「栄養病理複合障害」実際には克服し、収穫物の外観の良さ、高い収量を確保しているのであり、唯、その結果で失ってしまっているのが野菜類の本来持つその美味しさであり、味覚成分での低下であり、亦一方では、農業生産活動が結果的にもたらしている生態系への、由々しいばかりの過酷な環境負荷であります。

それでは最後になりましたが、同書の中で紹介されている美味しい野菜が生まれる理由?となる、野菜の栽培知見に就いて触れてみたいと思います。

 

農文協の農芸リーズ本は愛読書です!-

一般に有機栽培農産物は、美味しくて栄養的にも優れていると思われ勝ちですが、前述のように、多収量や品質向上を狙って有機肥料を多投すれば、化学肥料の過剰施用と全く同じ問題を起こすのであり、実は美味しい野菜を作るコツは栽培土壌側の管理にあって、其の根本要素は用いられる有機質肥料類の質と量に有るのです。

其れを律するのが、栽培土壌の持つ土壌粒子間隙に保持される水分量であり、其の持つポテンシャルエネルギー、作物が養水分を摂取する当たっての水分張力であります。

其処に働く作物の養水分の摂取能力を、或る程度制限する養水分ストレスが、収穫物の糖度、ビタミンなどの含有量を高め、食べて美味しくする栄養分を豊富にすると言うのです。

其の栽培土壌中の土壌粒子間隙と間隙径の分布が、その決め手となるのですが、栽培土壌の中に作られる団粒構造体に発生する水分勾配が、其の鍵を握っているのです。

其の団粒構造の中の土壌粒子間隙に保持される作物の生育に必要な養水分の摂取状態によって、作物の健康な栄養生理が維持されて美味しくて栄養豊かな収穫物が生まれるのです。

 

―作物の根量と土壌水分量との相関イラストーWebImagesより

作物は光合成で合成した糖から作物体内のアミノ酸や蛋白質を合成するのですが、其れには根から吸い上げた窒素成分が必要であり、其れを律しているのが作物に必要な様々な必須要素成分が溶け込んでいる前述の土壌養水分であり、その適度な養分摂取ストレスが、作物には必要になるのです。

其れを堆肥等の腐食を栽培土壌に混入させて、其の構成有機微粒子と土粒子の凝集に依って作られる団粒構造によって、作物栽培に適する土壌水分の保持環境が作り出されるのです。

それに合わせて作物に与えられる有機肥料成分は、前述の有機微粒子と土粒子の凝集に依って作られる土壌団粒構造体に棲み付いた、土壌微生物類に依る分解作用によって緩行的に無機化され、其の緩慢な肥効によって生まれる適度な肥料成分摂取ストレスが、美味しい野菜を作る要素となるのです。

 

―輪作も野菜を美味しくする健康効果!Web画像より

その適度に維持される土壌水分量と緩行的に無機化される有機肥料成分による適度の肥効条件こそ、美味しくて栄養豊かな収穫物が生まれる理由であります。

化学肥料中心の肥効管理では、野菜は見ては立派に育っても、それ相当程には美味しくはならない訳が、其処に有った事、お分かりかと思います。

其処には当然、経験律によって得られた多くの知見が必要であり、其れらのキーワード、土性、土壌団粒、堆肥、有機肥料、耕転、養水分ストレス、輪作、作型、気候条件、品種選択等など、多方面に亘る広汎な知識と技能習熟が野菜作りには欠かせません。

其処に奥の深い野菜作りの楽しさを見つけて、其のレベル迄に辿りつくための多くの修練が何よりも大切です。その美味しい野菜作り、園芸老人にとっては決して楽しみの尽きる事のない課題です。

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