それは、慢性の掻痒症と皮膚炎で通院していたミッキーちゃんが、原因追及のためアレルギー検査をする予定の日のことでした。
ふと見ると足跡に血が付いていたのです。
「どうしました?怪我でもしましたか?」と聞くと、最近足裏から血が出ているとのこと。
そこで、右の後ろ足を確認すると・・・指の間に大きな腫瘤があり、そこからの出血でした。
腫瘤の種類によっては断指や断脚を考慮しなければならないような状況でしたので、①出血を止める事②腫瘤の確定診断をすることを目的に、腫瘤の切除を行う事になりました。
↑切除前の様子。腫瘤と指の境界が不明瞭でした。
このような場所の腫瘤を切除する際の注意点は、完全切除が出来るかと切除後周囲の機能を維持出来るか(今回の場合は、指としての機能の維持と皮膚欠損を起こさず縫合出来るかということ)ということですが、手術前の見積もりではどちらも厳しい状況であることは明白でした。
今回は目的を達成する為に正常組織と腫瘤組織の境界ギリギリで切開していく必要があった為、半導体レーザーを使用しました。
↑半導体レーザーの利点は出血が少ないことと侵襲性が低いことであり、繊細な場所での切除作業に威力を発揮します(今回使用した機器は富士エス・エル・アイのダイオードレーザCHEESEです)。
さて、切除を進めていくとやはり最深部に異常と思われる固い組織が残ってしまいましたが、これ以上切除すると指の機能に異常を来すため、今回の切除はここまでにし、念のために最深部にはレーザーで熱処置を施して終了しました。
手術後は5日間の入院治療を行い、その後も術創は比較的順調に治って行きました。
切除した腫瘤は病理検査センターに依頼し、その診断結果は
「皮膚形質細胞腫(高分化型)」
と言う事でした。
また、予想通り最深部においてマージン不明瞭ということで、再発の可能性は充分ありますが、転移性のない腫瘤なので、再発すれば最悪断指だけで済む事も分かりました。
↑切除後の様子(カメラ目線は得意のようですね)
現在は再発が無い事を検診しつつ、慢性の皮膚炎の治療を継続しております。