今回は伝染病のワクチンの検診で乳腺にしこりが見つかったアイスちゃんのお話です。
↑人懐っこくて、名前を呼ぶと小さいしっぽを一生懸命ふりふりしてくれます。
去年より当院にかかられていて、普段は外耳炎の治療で時々お耳掃除をして、今まで特に大きな病気にかかったことはないそうです。
アイスちゃんの場合、8歳という年齢(中高齢)、未避妊で元気食欲もあるという事だったので避妊手術を進めようと思っていた時に乳腺の所に軟らかいしこりを発見しました。
しこりの部分は触っただけでは何かはわからないけれど、乳腺腫瘍かもしれないし、乳腺の腫れ(過形成)かもしれないというお話すると、次の日にはしこり部分の外科的切除と避妊手術の予定を組む事が決まりました。
〇実際のしこり部分
仰向けにてきれいに毛刈りを行うとしこり部分がわかり易く出ていますが、しこりが軟らかいものであるというのもあり、普段の姿勢だとなかなか気づきにくいものです。
まずは避妊手術を行い、その後にしこり部分を切除する前に針吸引という処置を行うと液体が入っており、しこり部分がきれいになくなりました。
結果的に、このしこりは乳腺の過形成という判断をし、今回は避妊手術だけで手術は終わりました。
今後は再発などがないか、まずは経過観察という事になります。
今回は乳腺の過形成により避妊手術の傷だけで済むことができましたが、もしこれが腫瘤だった場合は外科的切除が第一選択の治療となります。
犬の乳腺腫瘍は、未避妊の中高齢で最もよく認められる腫瘍になります。
良性と悪性の割合は1:1と言われていますが、良性腫瘍であっても大きくなっていく毎に悪性腫瘍になってしまう恐れもあります。
また、今ではご存じの方も増えてきていますが、雌性ホルモンは腫瘍発生には大きく関わるものであります。
初めての発情が来る前に避妊手術を行うと、避妊していない犬に比べて乳腺腫瘍の発生率は0.5%、2回目の発情までに手術を行った犬では8%、2回目の発情以降に手術した犬では26%になります。
なので、子犬さんの時に飼われた方は赤ちゃんを作る予定がなければ早めの避妊をおすすめします。
身体の変化は普段のリラックスした状態でいろんなところを触ったり、ごはんの食いつき方、うんち・おしっこの状態などが指標となるので、元気な時の状態を知っておくことはとても大切なことです。
今後も再発などがないか、アイスちゃんをサポートしていきます。
獣医師 平湯