乳腺にしこりが出来ているとのことで来院された14歳の女の子のシェリーちゃんを紹介します。
診察してみると、乳腺が張って一部からは乳汁が出ていました。さらに下半身の乳腺には直径3cmほどの大きな硬い腫瘤が3つ認められました。
話を聞くと、前回の生理の時も妊娠もしていないのに乳腺が張って乳汁が出ていたので、偽妊娠かな?と思われていたそうです。(偽妊娠は正常な犬でも起こります。)
しかし、今回のしこりは結節性で固く、乳腺腫瘍の可能性が高いです。念のために乳腺の腫脹を抑える薬で経過を観察しましたが、やはり結節は変化なく、乳腺腫瘍と判断しました。
犬の乳腺腫瘍
雌犬の全腫瘍中の約半数を占め、一般的によく見られる腫瘍です。
悪性のものが約半分と報告され、平均約10歳の高齢犬に起こり,ほとんどが避妊をしていない高齢犬や2~3歳以降に避妊を行った犬に起こります。
他の腫瘍性疾患で行われる、針を刺して採取した細胞を顕微鏡で見る検査(細胞診)でも良性、悪性の判断が難しいとされています。
そのため、基本的に治療の第一選択は外科的切除になります。
シェリーちゃんは14歳と高齢でしたが、今後のことを考え、手術を行い、乳腺切除と避妊を行いました。
↑ 手術後の写真です。乳腺切除は傷が大きくなります。
その後順調に回復し、無事退院しました。
↑2週間後の抜糸時の様子です。傷もきれいに塞がり、さらに元気になっていました。
その後、腫瘍の病理検査の結果は、残念ながら複合癌(悪性腫瘍)と診断されました。
ただし、リンパ節への転移や組織の取り残しはないとも診断されているため、今後も補助療法を行いながら、再発が起こらないか注意深く観察していく予定です。
獣医師 小芦