今回は、以前治すのに苦慮したタケちゃんのお話です。
外で自由に生活するタケちゃんは、たまに喧嘩をしていたそうですが、いつもは自然に自分で治っていたそうです。
しかし今回はなかなか治らなかったので、自宅で薬を塗って看病していたそうですが、その結果が・・・
↑鎮静下で傷を洗浄した後。右耳の裏側辺りに大きな皮膚欠損が。
血液検査で分かった事ですが、残念ながらエイズウイルスにも感染していました。
(エイズウイルスは免疫力を低下させるので、傷の治りが悪いことを予想しての治療開始になります)
このような大きな皮膚欠損を治す上で重要な事は、どのような方法であれ皮膚と皮下組織を定着させるということです。
初日はまず、皮膚と皮下組織の再生力をみるために無理して傷を閉じず寄せるのみにして反応を見ました。
↑この状態でウェット包帯を実施
↑3日後の様子
創面の色もよくなり、若干傷が小さくなったので、一度本格的に傷を閉じる処置を行いました。
↑傷の張力をみながら、皮膚移植をせず傷を閉じる事が出来ました
今回の処置では60%ほど傷が塞がれば成功と思っておりましたが、結果としては90%の傷を塞ぐことが出来ました。
そこまで至るのに27日間の入院治療、残った傷も小さくなっていたので、ここから通院治療に切り替えました。
さて、ここから順調に治ってくれるものと期待しておりましたが、家ではタケちゃんのやんちゃ振りが発揮され、治ってきては外に出て傷が開き、治っては後ろ足て掻いて傷が開きの状態が3ヶ月続きました。
そうこうしている間に、皮膚糸状菌症まで発症して抗真菌療法まで行わなければならなくなり、飼い主の方を説得して、再度入院治療を行いました。
2度目の入院は計20日間の治療期間となりましたが、治療開始から約半年をかけて、どうにか完治に持って行く事が出来ました。
今回の反省点としては、もともと傷が治り難いと判断していたのだから、一度目の入院の際に+2~3週間の入院が追加となったとしても飼い主の方を説得して、完治させてから退院させるべきだったと思う所でしょうか。(実際は、ただでさえ長期の入院になっている時点からの入院追加は説明が難しいですが・・・)
最後に、外に一人で出かける猫さんは、たまに喧嘩傷を作って帰ってくる事があると思います。そのほとんどは、小さな傷で自分で治してしまうでしょうが、自分で治せなかった時の大変さを考えれば、「自分で治すから大丈夫。治らなかったら病院に連れて行こう」と自分で判断するのではなく、大事をとって「とりあえず、大丈夫か早めに獣医さんに診てもらおう」と考えた方がよいのではないかと思います。(化膿していない咬傷は、そのほとんどが抗生剤を数日投与するだけで治ります!)