「タマネギは犬に食べさせてはいけない」・・・一度は耳にされたことがあると思いますが、今回のお話は、そのタマネギ中毒のお話です。
では、どうしてタマネギは犬に食べさせてはいけないのでしょうか?
ネギ属に分類されるネギ、タマネギ、ニンニク、ニラなどは、有機チオ硫酸化合物という物質を含んでいます。
この物質は赤血球に対して障害作用を持っており、これによって赤血球が破壊され各種の問題(貧血、ヘモグロビン血症による臓器障害など)を起こすことが、食べさせてはいけない理由になります。
先日来院された、プリンちゃんは、おしっこに血が混じってるとのことで来院されましたが、血液検査にて溶血性貧血(体の中で赤血球が破壊されて起こる貧血のこと)が認められました。
↑赤いおしっこの写真(この状態は血尿ではなく、血色素尿と呼ばれます)
お話を聞くと、「昨日の夕食の材料にでタマネギを使いました。もしかしたら台所で落ちたタマネギを食べたのかも。」とのことでした。
他の疾患を疑わせる異常な所見もないことから、タマネギ中毒と診断して治療を開始しました。
一時は血の濃さが通常の30%ぐらいに減少するまで進行して病状が危ぶまれましたが、8日間の入院治療でなんとか改善しました。
↑退院前のプリンちゃん(笑顔がかわいいですね)
日本では、ネギ属は一般家庭でよく使用される食材であり、さらにこの中毒物質は調理(加熱処理等)をしても毒性は消えないので注意が必要です。
実はこの障害には個体差があり、遺伝的に体内の「還元型グルタチオン」という物質が高濃度にある犬ほど、重篤な症状(治療の甲斐なく死亡する例もあります)が出やすいことが分かっているようです。
なので「うちの子はタマネギを食べても大丈夫だった」という話を聞いても、それはたまたま大丈夫な子だったりするので、油断せずに気付いたら即座の対応をして下さい。
タマネギを食べて1−2時間以内であれば、中毒物質が体内に吸収される前に取り除くことが出来るケースもありますので、まずはご連絡下さい。