
『あなたの話はなぜ通じないのか』 山田ズーニー
ユーモアのある名前の著者の素顔は聡明できれいな女性。
元ベネッセ・コーポレーションで進研ゼミの小論文編集長を担当し、
その後コミュニケーションに関する教育に携わる彼女のこの本は、
論理的に話を展開し、人に納得してもらうためのコミュニケーション術
が書かれている。
日本人の話というのは大概大事なことが最後に来るので
短いやりとりの中で相手の言いたいことを理解するのに
時間を要することがよくある。
私など、つねに思考がぐるぐる渦を巻いていて話に一貫性がない。
日常生活でもビジネスでも、言いたいことを伝えるにはただひとつ、
「論点」を見極め、それに対する自分の「意見」を持ち、なぜそう思うか
という「理由」で裏付ける、というシンプルな構造だけでいい。
また、冒頭で書かれていた「自分のメディア力を高める」ことの重要性。
以前、「人間のレッテル」を話題にしましたが、相手にどんなレッテルを
持たれるかによって、同じ話がまったく違って聞こえてくる、ということ。
「宇宙人との交信に成功」
というニュースを日経とスポ日で見るのとではまるで印象が異なると。確かに。
これと同じで、人も情報を発信する「メディア」だと。
「○○さん、ちょっとお話があるんだけど」
を声をかけられたとき、いつも機嫌の悪い人から声をかけられたなら
何かよくない話かな、と相手に警戒心を抱かせかねない。
相手に素直に耳を傾けてもらえるよう、自身のメディア力を高める必要がある。
ほかにも「正論はなぜ人を動かさないのか」など。
真摯に人の心と向き合う姿勢を貫く著者のように、
毅然と、論理的に、無駄なく人とコミュニケーションがとれたらいいなあと思う。
内容はいたってマジメなので、ご一読の価値ありです。
「ほぼ日刊イトイ新聞」で「おとなの小論文教室」連載中。
おお、CCきのしたさん、わたしが山田ズーニーさんに対してなんとなく思っていたことをずばり表わしてくださいました!
まじめな内容の著作ばかりなので、「ズーニー」はご本名なのだと思い込んでいました。
で、この名前にまつわるストーリーを勝手に想像していました。
改めて著書を見たら、ペンネームなんですね…。
「ペンネームかと思ったら本名!」というケースが多い中、異色の人です。
いや、わたしの勘違いが突飛なのか?