熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

アボカドの葉をかじる珍虫。

2019年09月06日 | アボカド
※今回の記事は、害虫写真が掲載されています。


 2019年6月7日に沖縄県うるま市にある知人が栽培するアボカドを見せていただきました。
 このアボカド(品種不明)は、ビニールや防虫ネット等が被覆されてパイプハウス(実質、露地栽培)で栽培されていました。
 知人は「花はよく咲くけど、結実はほとんどしない」と言いながら樹を見せてくれました。

 アボカド樹を見た私は新葉が何者かの食害を受けていることに驚きました。
 今までアボカドでは見たことがない食害痕だったからです(写真2、3)。





写真2、3.何者かに食害を受けたアボカドの新葉。


 樹に近づいて観察すると、葉の上にゾウムシが大量にいるのが見つかりました(写真4)。
 多い場合は1枚の葉に5頭のゾウムシがいました(写真5)。



写真4.アボカドの新葉にいたゾウムシ。





写真5.1枚の葉に5頭いる葉もあった。



 ゾウムシの種類がわからなかったので数十頭採集し、後日昆虫に詳しい先輩に預けました。
 それから数日後、ゾウムシを預けた先輩から連絡がありました。
例のゾウムシは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、九州沖縄農業研究センター の上級研究員:吉武啓さん(農学博士)というゾウムシ分類の専門家に同定していただいた、とのこと。
※ 吉武様、同定ありがとうございました。

 同定結果は、ヨナグニアカアシカタゾウムシ(Metapocyrtus yonagunianus)(写真6、7)。
 元来は与那国島にしか分布していなかった固有種でしたが、近年は沖縄本島にも移入、定着し、様々な植物を食害しているとのことでした。
 本虫は「飛べない虫」みたいですが、沖縄本島内で点在して見つかっています。どうやって分布を広げているのか不思議です。
 また、本虫がアボカドを食害したと云う記録はないとのことです。



写真6.ヨナグニアカアシカタゾウムシ(青っぽい個体)。





写真7.ヨナグニアカアシカタゾウムシ(赤っぽい個体)



  *  *  *

 同定結果を知らせるために、同年7月30日に再度採集現場を訪ねました。
 その際にアボカド樹を確認すると、以前食害に遭っていた樹からは新梢が芽吹き、新たな新葉が展開していました。
 しかし、それら新葉には本虫の食害痕がほぼ見られず、食害は落ち着いた様でした(写真8)。



写真8.7月末の新葉は食害痕が少ない。



 あれだけいたゾウムシ達はどこへ行ったのでしょうか?
 樹をじっくりと観察すると、前回程ではありませんが、硬化した葉で複数のゾウムシ成虫を確認しました(写真9)。



写真9.7月末のヨナグニアカアシカタゾウムシは旧葉上にいた。



 また、枝の一部が枯れていないかと探しましたが、枯れたり、萎んだりしている樹は見つけられませんでした。
 ゾウムシがアボカド樹で繁殖している証拠も見つけられませんでしたが、1ヶ月以上に渡りゾウムシが常駐しているので繁殖している可能性は大きいのではないかと思います。

  *  *  *

 さらに後日(同年8月6日)、ゾウムシを預けた先輩と共に同農場を訪れました。
 相変わらず少数の本虫(成虫)を見つけることができましたが、繁殖している証拠は掴めませんでした。

 先輩は「本虫は広範囲の植物を食べる習性があるから、繁殖場所は他にあるかもしない」と農場周辺の雑草を観察し始めました。
 そして間もなく、シロバナセンダングサの葉に食害痕を見つけ、本虫(成虫)を見つけました(写真10)。



写真10.シロバナセンダングサの葉上にいたヨナグニアカアシカタゾウムシ。



 シロバナセンダングサ(沖縄県では、とてもよく見かける雑草)を食べているなら、周辺に広範囲にいるはず・・・。
 繁殖植物の特定は諦め、私と先輩は農場を後にしたのでした。




【お知らせ】熱帯果樹に関心のある方は「Facebook」「Twitter」もご覧ください。



 リアルで面識がなくても気軽に「ともだちになる!」とリクエストしてください。
 その際、メッセージも付けて頂けるとスパムではないことが確認でき助かります。


 気に入ったら「フォロー」してください。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿