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名著「アフリカのアート」〜アフリカ芸術批評の古典

2016-10-02 07:30:26 | アフリカ音楽・アート・文化
先日、当地アビジャンの本屋さんに立ち寄ると、一冊のペーパーバッグの本が目を引いた。

'Les arts de l'Afrique'
(アフリカのアート)


なんだろう?

パラパラめくると、白黒の本にもかかわらず、ひたすらアフリカの伝統的な彫刻やお面の写真がつまっている。しかもだいぶ写真の写りも悪い。とにかくマニアックすぎる。その強烈な個性に惚れ、気づけばレジでお買い上げであった。20,900フランCFA(約3,600円)、ちと高い。


家に帰って、まぁワインでも飲みながらゆっくりながめるとするか・・・なーんて感じでソファーに横たわり、本を手にした。



しかし、表紙をめくった途端、その中身の重さに目を擦った。気づけば、身を正して前書きから読みふけることになった。


この本、カール・アインシュタインという美術史研究家で作家の人が書いている。解説によれば、1885年、ドイツ生まれ、ユダヤ人。先鋭的美術、社会派芸術に傾倒し、ピカソやミロなどとも親交があった。

ドイツが右傾化傾向にある中、アインシュタインはパリに移住。そこで芸術批評と作家としての活動を継続。またスペイン内戦では左派への支援を行なった。しかし1940年、55歳の若さで没。ヒトラーのナチスドイツがユダヤ人の迫害を強める中、囚われの身になる前に、自ら死を選んだ。ピレネーの激流に身を投じ、自殺したという。


そしてこの本は、アフリカアートを語る上で外すことのできない名著の合本だった。一つは1915年に出版された'La Sculpture nègre'(「黒人世界の彫刻」、原題'Negerplastik')。二つ目は1921年に出版された''La Sculpture Africaine'(「アフリカの彫刻」、原題'Afrikanische Plastik')。どちらの本も、アフリカの伝統的創作品を初めてアート、芸術として評価したものとして、歴史的な遺作とされている。

アインシュタインは書き出しでこう述べている。
「ヨーロッパ人が最も芸術価値を無視し、創作的価値を軽視してきたのはアフリカアートに他ならない。アフリカを自らよりも低いものだと決めつける先入観と、自分たちとは相容れないものという蔑みを持って見てきたことがその大きな要因だ。」

当のアインシュタインはアフリカに暮らしたことも、足を踏み入れたこともなかった。しかしヨーロッパに持ち込まれた「作品」を鑑賞し、自らも収集。その芸術的価値を批評しようと試みた。


ということで、一見マニアックなつくりのこの本。アフリカアート研究において、最も古典的な二つの著書の合本であった。ここにはアインシュタインによる鑑賞のエッセンスが詰まっている。改めてしっかり読んでみたいと思う。

Carl Einstein,'Les arts de l’Afrique, présentation et traduction de Liliane Meffre, édition Jacqueline Chambon, 2015, 24ユーロ(←※ヨーロッパなら)





(おわり)

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