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国仲銘子さんの修論「沖縄の位牌継承と女性問題:父系血縁イデオロギーの歴史的形成過程を通して」をきちんと読んだ!

2022-10-22 22:37:03 | 沖縄文化研究
「トートーメー万歳」(大城立裕作、幸喜良秀演出)の初演は1989年。琉球新報社は1980年に『トートーメー考ー女が継いでなぜ悪い』でトートーメー問題の特集を組んだ。それ以来トートーメー問題は沖縄でシリアスな問題でありつづけている。「トートーメー万歳」は尚、日常レベルでこの沖縄社会で深刻な問題なのだという事は、身近でも本家のトートーメーとお墓、財産問題があり、家族単位でも位牌やお墓をどうするか、は死生観や社会現象として他人事ではない。

法政大学学術機関リポジトリ  ← クリックしてください。論文が読めます!とても示唆的です。

国仲さんのこの論稿(2004年)は、読み応えがある。多くの参照文献もじっくり読みたい。トートーメー(位牌)とお墓、財産相続問題の歴史的経緯や父系血縁イデオロギーが根っこにあること、祖先崇拝、沖縄独自の祭祀、門中共同体、社会構造の問題、ユタの問題の大きさが迫ってきた。

国仲さんは、論文の冒頭に以下の引用を提示している。

「秩序の効力が伝統の神聖視から生まれるというケースは、非常に広汎な、非常に原始的なものである。それに手をつけると祟りがあるという恐怖、それが行為の伝統的慣習のあらゆる変更に対する心理的ブレーキを強めてきたし、また、秩序がひとたび効力を得たとなるとそれへの服従の永続化にいろいろな利害が絡むようになるもので、それらの利害が秩序の永続化を生んできた」(マックス・ウェエーバー:清水幾多郎訳)

この冒頭の引用が、空恐ろしいほどの沖縄の状況を暗示していることが分かる。父系主義の慣習、ハビトスとユタの関与を示している。トートーメーに関する禁忌、因習的な祟り思想を持ち込んでいるのが、実はユタであるという実情がある。先祖の祟りをもちだすゆえに、同じ父系主義でも韓国や中国以上に徹底した直系主義、長男優先主義の慣習となっていることが展開されている。改めて、目からウロコだった。ある程度そうなのだろうと考えていたことが、論理的に展開されている。

トートーメー継承の「女元祖」、女性相続排除の禁忌がユタによる「女が継ぐと必ず災いがある」という判示が強烈な後ろ盾になっている事例は、大きいようだ。父系イデオロギーの担い手のユタは、時代の支配的価値を資源として、家父長制を代行しながら生き延び、一面において沖縄の社会構造の矛盾を、象徴的にあらわしている。(国仲)

いろいろな社会の諸相で、この論文が突きつける沖縄社会の問題は、そのまま深く関連していることが見て取れる。それはアカデミズムの男性優位の実情にも見て取れる。

祖先崇拝が天皇制に直結していくことや、幻想的琉球王国のよみがえり、再生についても言及している。父系原理の中で生きていくために、女性は男性以上に家父長的思想を内面化せざるを得なかった。近代的ジェンダー・イデオロギーの陥穽があった。など、テキストからの引用だが、何度か読み返したい。

そういえば、演劇「トートーメー万歳」にはユタは登場しない。しかし位牌と墓と財産相続問題が物語の芯になっている。誰が相続するか、沖縄社会の風刺コメディーになっている。大城立裕さんの喜劇作品は秀逸だ。

沖縄芝居の中では意外とユタが登場するのは事実だ。




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