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台風が迫る中「多幸山」のゲネプロを見たが、沖縄芝居役者の琉球舞踊は格別!

2011-05-29 10:59:48 | 沖縄演劇
                 (舞台冒頭に躍る仲嶺眞永さんのゼイ)

もっとリハを見たいと思っていた真喜志康忠さんがかつて主演した「多幸山」である。氏が戦後懸命に沖縄芝居に創作した作品である。演出家の幸喜良秀氏の演出も気になっていたが、なかなか見に行けなかった。でも台風最中でゲネも含めキャンセルになるかと思いながら企画課に電話するとゲネがあるというので、急いで風雨の中、向かった。前座を躍る芝居役者の方々の舞踊が面白かった。芝居役者の独特な味わいがあった。若い『多幸山』に村人で出演する舞踊家や芝居役者や組踊伝承者もゲネを見ていて心地よい拍手が良かった。いつもながら写真を撮らせていただいたが、国立の宜保栄治郎専務や幸喜演出家の寛大な眼差しゆえであり、彼らが背負っているこの国立劇場ゆえに、批評の立場で【批判】も多いかと思うが、その場に参加させていただいている。

さて八木政男さんの案内のウチナーグチが面白かった。芝居役者がウチナーグチのプロであり、ウチナーグチの面白さを十二分に引き出す方々だという事に感銘を受ける。舞踊がまたいい!与座朝惟さんなど70歳を超えてかつ姿勢に美しさがあり、「みやらび」を軽やかに踊っている。「夫婦船」の瀬名派孝子さんも宮里良子さんもいい!歌劇風の踊りで楽しませた。劇団「花園」の団長泉賀寿子さん、そして杉野早苗さんの「恋路枕」は実にあでやかで幻想的なラブシーンに思わずニンマリした。平良進さんの「取納奉行」も長い歌詞ながら軽やかに女を躍りきった。「チョッカリ節」の伊良波冴子さん、中曽根律子さんも足取りが興味深かった。駆け落ちの歌ながらかつての『乙姫』現【ウナイ】の踊りの面白さと言えよう。冒頭は舞台を清める「麾」(ゼイ)を仲嶺眞永さんが躍った。芝居役者の踊りという雰囲気を醸していた。

(恋路枕)

さて『多幸山』だが、今回の演出で変った所が何か所かあった。フェーレーの兄、普久原明の「山」が吃音で話すという事である。長男が弟に馬鹿にされるという理由づけに吃音を持ってきたのは最近の映画の影響かとも思ったが、演出としてはその理由づけが必要だったという事だろう。そのおかげで山のキャラは鮮やかさが増した。普久原は熱心に役柄に成りきっている。彼は脇役ながら目立つ重要な役回りである。芝居役者として中堅の彼の今後をもっと応援したい。おそらく吃音にしなくても良かった、とう批評が出る可能性もある。舞台でキャラクターがどれほどその必然性を持ち得ているか、だろうが、見ていて違和感はなかった。誤って殺されることになる弟の亀じゃーだが、その悪辣さを嘉数道彦がうまく演じていた。役柄に幅が出てきて、彼がまた今後どう演出を生かしていくかとういう事に関心がいく。幸喜さんも宜保さんも後継者養成という点で厳しく優しく若者たちに忍耐強く接している。平田太一さんの中学・高校生を指導する姿勢とも異なる沖縄芸能本道の厳しさがある。しかしもっと時間があればもっと脇役の村人の集団演技のメリハリが付けられただろうと思うが、その集団演技の現代劇、リアリズムの細やかさを演じきるには時間が必要だと感じた。

しかしである。アンマー役の知花小百合の演技が実に良かった。かつて平良とみさんがやっていた役だが、知花の演技者としての成長ぶりには驚く。彼女のセンスが実にいい!また旅人役の宇座仁一がうまく演じている。重厚な役柄だが、彼のまじめな人柄の良さだろう。オーソドックスに演じのけたというイメージだ。新作組踊「今帰仁落城」そして「ラッキーカムハワイ」でも主人公役を演じた。その流れで現代劇、沖縄芝居、そして組踊と彼の役者の幅が深まっている。拍手!康忠さんが演じた味わいを出すにはまだ早いのかもしれない。願わくば「上演を続けてほしい」という事である。

また注目するのは、僧の役の東江裕吉さんだ。彼は尚巴志の役柄も「今帰仁落城」で重厚に演じていたが、今回の僧の役も見ごたえがあった。事の是非を糺す役回りをうまく演じた。そして旅人の息子浦太の佐辺良和もいつもながらりりしく演じていた。その連れの三良・金城真次もいいね。彼は私が見る沖縄芝居公演の劇場でよく会うのである。芝居をよく見ている組踊伝承者は彼と佐辺さんと大湾三瑠さんか!それだけ芸を深めることに熱心だという事である。頼もしい!

今回沖縄芝居の中で多くの雑躍りが誕生した事、また他ならず「花風」の登場がおそらく古典女踊りに多大な影響を与えたであろうことを考えると、芝居役者の芸を大いに尊重する気風が高まることを念じるばかりである。若者がどう継承していくか、配役を見ると演出家が意図的に劇団うないの若手や組躍伝承者や舞踊家を採用したことがわかる。願わくばこのリアリズム劇を理解するために東京などの現代劇を見る探究心もほしいね。演劇の世界は音楽やダンス以上に普遍的な言語を持っていて、多様に理解しえるものだと考える。そしてそれは極めてエスニックな世界でもある。沖縄のアイデンティティーのエキスでもありえる。それと演出助手が大田守邦さんだが、彼は沖縄芝居実験劇場の代表でもある。彼や嘉数道彦さんや阿嘉修さんなどがリードして今後の沖縄伝統演劇をより洗練されたものへと、幸喜演出のセンスを引き継いで、舞台の花を大きく咲かせてほしいものだ!

(さて今日29日はスピードの早い台風が去って公演がなされる!「多幸山」の写真は画素数が良すぎてUPできない!もう一つのブログに一枚紹介する予定!)

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