もうあけましてしまいましたが、DIR EN GREYの昨年のレポを振り返ってみようと思います。
mode of 鬼葬。鬼葬は僕がDIR EN GREYで初めて聞いたアルバムです。よくバンドマンで「衝撃を受けた」という言葉を使われますが、僕に取ってそれが当てはまるのがこの作品でした。
1曲目の「鬼眼-kigan-」が流れた時、おどろおどろしいギター、骨太で極悪なリズム隊、何より鬼気迫るボーカル、そしてシャウトというものに触れ、その曲を最後まで聞くことが出来ずに、初めてフル尺で聞けたのが「embryo」という曲でした。当時はシャウトに全く免疫が無かったほか、ポップな音楽しか聞いてこなかった自分としては、その作り出す変幻自在かつ不気味なサウンドに恐怖しかなかったのです。しかも歌詞が何を歌っているのか分からないうえ、歌詞を見てもエログロか失恋系しかなく、近親相姦や自殺の歌、自虐的に落ちぶれていく詩など、何一つ前向きな歌がない。結局、初聴きの後であのアルバムで聞けたのは「JESSICA」「undecided」だけでした。
それでもリピートして聞いていく内に思ったのは、いろんな音楽を聞いてきましたが、圧倒的に訴えてくる何かが他のアーティストより強かったというものです。決して大衆に寄り添った音楽ではない、けれども、そこには彼らにしか作れないモノ、彼らがやりたいこと、それが無機質で歪だけど、恐らく何よりもストレートに響いてきました。たぶん、バンドとの意思や意地のようなもの、生き様そのものだと思います。ある程度免疫ができた頃に、「衝撃を受けた」と自覚するに至りました。以降、彼らの音楽がいつも自分の傍にあります。そこから「six Ugly」「Child prey」と聞き込むようになり、「VULGAR」で完全に虜になって、今に至るわけです。
「mode of DUM SPIRO SPERO」がある程度アルバムとしての世界観が出来上がっていた反面、このツアーがどうなるのか、が予測が付かないところではありました。オンラインでリハーサルに試行錯誤しているとの記載もあったので、思いの外選曲に悩んだんだろう様子は浮かびました。ただ参戦した感想から結論を言ってしまうと、「mode of DUM SPIRO SPERO」よりも遥かにライブとして堪能できた内容でした。不謹慎かもしれないけど、単純に楽しかったんですよね。何故かというと楽曲すべてが個、バラバラだからです。当時のインタビューで薫が「1曲1曲バラバラで単純明快な曲が多い。でもライブでは楽しめる曲ばかり」と発言していたのを思い出しました。
DIR EN GREYの場合、世界感に重きを置くバンドなので、代表的なのが「MACABRE」「VULGAR」「THE MARROW OF A BONE」「UROBOROS」「DUM SPIRO SPERO」あたりだと思ってますが、アルバムで統一されたコンセプトのようなものが暗黙の了解として存在します。だから1ツアー終わってしまうともう演奏されない曲も結構ある訳です。でも、唯一この「鬼葬」に関しては作品のトータル性も世界感も後付けな気がします。バラバラなものを一つに収斂してみたらこんなイメージだった、みたいな。そういう意味では「ARCHE」と性質が一番似ている気がします。
棘のような映像が流れるSEから「鬼眼-kigan-」で演奏開始すると京がすかさず「踊れ!」とフロアを煽り、「ZOMBOID」ではステージ上を動き回り、「詩踏み」へと繋がっていく序盤。そこからアコースティックの「undecided」「輪郭」、「Cause of ficklness」で再度盛り上がる等このバンドとしては珍しく落差がはっきりしていました。と言っても意外にミディアムな歌モノの曲が多いんだなと感じたのを覚えています。
「embryo」から「蟲-mushi-」では崩れ落ち泣き声混じりになりながら歌う京。そこから披露された新曲は「生きたい...」という言葉が強く印象付けられた自分の弱さを歌い上げているようなパワー・バラードでした。何かに縛られていない自由な表現が出来ていることを、ステージを縦横無尽に動き回り、時にメンバーにいたずらをしたりする京の姿から感じました。「24個シリンダー」ではDieがボーカルをするなどレアな場面もありつつ、「鴉」「FILTH」、どよめきが起こった「Ugly」そして「Un deux」で締めるというすさまじいセットリスト。会場の福岡国際会議場も初めてでしたが横長のホールでかなり後ろでしたがメンバーの姿がよく見えました。
アンコールでは「G.D.S」から始まり「Mr.NEWSMAN」や「umbrella」が演奏される等「six Ugly」の曲もプレイされており、「列島激震行脚」を彷彿とさせながらも「懐かしい」というよりは「新しい」と感じたライブでした。このバンドのライブでここまで開放的な気分に慣れることは近年無かったので、何やかんやラストの「JESSICA」まで駆け抜けて終了したライブ。UROBOROSは世界観に拘るものなので、また今回と違ったライブになるでしょう。
次は尼崎。
SE
1.鬼眼-kigan-
2.ZOMBOID
3.詩踏み
4.undecided
5.輪郭
6.Cause of ficklness
7.embryo
8.蟲-mushi-
9.新曲
10.24個シリンダー
11.鴉
12.FILTH
13.Ugly
14.Un deux
ENCOLE
SE.G.D.S
EN1.Mr.NEWSMAN
EN2.The Domestic Fucker Family
EN3.umbrella
EN4.Sustain the untruth
EN5.JESSICA