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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

山鉾町で――祇園祭にて(1)

2007年07月19日 | 
 16日の宵山から祇園祭に出かけた。川端康成はその著書『古都』の中で、たいていの遠い地方からの見物客は1ヶ月行われている祇園祭りのうちの16日と17日を訪れるだけだと書いているが、まさに私もその言葉通りの京都滞在である。とはいえ、京都に住んでいるならまだしも、観光客には祇園祭が続く約一ヶ月を京都で過ごす時間などあるはずがない。
 16日に京都に到着するやいなや、山鉾が飾られている山鉾町を歩いてまわる。山や鉾を見て思うのは、当時の町屋の人々の繁栄ぶりである。日本の伝統的な祭礼である祇園祭の山や鉾の飾りものが、日本の伝統的な絵画や織物に加えて、ベルギーの16世紀のゴブラン織りだったり、古いペルシャ絨毯だったりすることに、若い頃は違和感を覚えたが、今はそれが「京都」らしく思えて面白い。山や鉾は神輿のように神々が降りる場所であり、きわめて神聖なものだ。だからこそ、その神の乗り物を輸入品である高級な渡来物で飾るという意味は理解できる、その一方、誰もが見たことのないような贅沢で、最高級の品々を山や鉾につけて、京都市中の人々に見せてまわる光景は、町屋の商人達が自身のその繁栄ぶりを誇示しているようにも見える。そう考えると、聖と俗の両極端な側面が祇園祭に混在しているようで興味深い。
 古都である京都の大きな儀礼が、近世、近代、現代という歴史を経て、「西洋」とも結びつきながらその姿を変えてきたことを実感する。伝統とはそういうものだ。古さと伝統の継承ばかりを強調するだけの祭事には、あまり心が躍らない。


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