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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

待ち時間

2009年09月30日 | バリ
 私の知る限り、インドネシアにはセルフサービスのコピー機というのは置かれてはいないようだ。自分でコピーしてしまったら、きっとコピー屋の仕事が奪われてしまうことになる。つまりインドネシアでは「コピーをすること」は、「職業」を意味する。
 コピーをしたい場合は、一枚でも千枚でもコピー屋に資料を持っていき、コピーをしてもらうわけで、その時にはカウンターごしにインドネシア語でどんなコピーを必要とするのか、製本の方法はどうしたいのか、などをしっかりと説明しなくてはならない。20数年前は、つたないインドネシア語を使って細かい指示をするのがえらく面倒で、どうして自分でできないのかと頭をかかえたものだが、今は正直なところたいへんありがたい。大学に戻れば、授業の資料は別にしてもコピーは自分でとる。秘書なんていないので当然である。コピーにかかる時間はばかにならないものだ。しかしインドネシアではコピー屋で説明したら、あとは取りに行くだけである。
 量が多ければ預けるのだが、20分か30分くらいの待ち時間ならば、ぼくはコピー屋のカウンターに腰をおろして、車が行きかう明るい外の風景やコピー機が数台置かれた暗い店内を交互に見つめる。飽きもせず、行き来するバイクや車を眺める。文庫本を持っていったこともあるが、喫茶店のように本に集中できるような場所ではない。だから眺めながらその日のテーマを決める。「今日はバイクの二人乗りの後ろの人の姿勢について」とか、「ヘルメットの形と色の分類」、あるいは「コピー屋にやってくる人の職業分析」や「コピー屋の女の子がコピーのボタンを何回押したら、自分の携帯をいじくるか」とか。観察を始めると時間がたつのが妙に早いものだ。ふと気づくとちゃんと資料のコピーができあがっている。


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