吉原祇園祭の面白さの一つは、各山車に乗る囃子が、通過したり、出会ったりする山車とただすれ違うのではなく、「競い合い」を行うことである。お互いの山車が向かい合うか、並んで停止するやいなや、その「競い合い」の演奏が始まる。速度の速い曲を正確なリズムでたたき合う、まさに囃子の「競演」である。「共演」ではないのだ。
ところがこの「競演」には、勝敗がつかない。コンクールではなく、勝敗はその山車を引き、囃子を演奏する人々が自身の中で決めることでそれを口外する必要は何もない。それなら「共演」でいいじゃないか、と思うのだが儀礼の当事者にとっては「競演」なのである。
この写真は、四辻に4台で山車が出会い、まさに「競演」の最中なのだ。みている側にとって、その音風景はすさまじいもので、演奏者の興奮が間近に伝わってくる。各チームがバラバラに演奏しているわけで、そこに音楽的な「調和」は存在していないのだが、不思議と祭礼としての調和を感じるのだ。祭りの興奮、非日常、ハレの風景がまさにこの音世界から生み出されるのだ。
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