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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

初蝉

2011年06月17日 | 那覇、沖縄
 昨夕、大学キャンパスの彫刻棟の方向に茂る木々の一角から、今年の初蝉を耳にした。たった一匹、クマゼミが静かに鳴いている。
 だいぶ昔、ブログに書いたことがあるが、セミは暗い土から大空のもとに姿を現してどんな気持ちだろう、と学生達に問うたことがある。まるで小学生に対する質問のようだった。学生たちはそんな質問にとまどいながらも、「それは嬉しいのではないだろうか」と異口同音に言ったと記憶する。
 しかし、本当にそうなのか?蝉は人生の大半を過ごす暗い土の方が快適で、楽しく過ごせていたのではなかろうか?蝉は、人間である「自分」と同じ価値観を持っているのか?そんな話を枕に文化論を展開していった。
 初蝉の声を聞いて、そんな自分が若かった教員時代の授業のことを思い出した。あの初蝉はどんな思いで沖縄の澄んだ夕焼け空を見て、たった一匹で鳴き続けているのだろう?なんだか「苦しいよ、苦しいよ」と悲しく呟いている気がしてきて、そのせいかすっかり悲しくなって、急ぎ足でその場を離れた。「ごめんよ。今、ぼくは君の哀しみを受け入れられるだけの心の余裕がないんだよ。」

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