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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

消えたマイアミ

2007年11月26日 | 東京
 マイアミといえば、フロリダ州のマイアミではなく、松田聖子の《マイアミ午前五時》のことでもなく、言わずと知れた橙色の看板が目印の純喫茶の名称である。ルノワール、談話室「滝沢」と並んで、私の中では三大「純喫茶」だった。携帯がない時代、「マイアミで何時」といえば、六本木でも渋谷でも、たいてい待ち合わせで会えないことはなかった。決して旨いとはいえないコーヒー、ドアを入るとタバコの煙で白く曇った店内。当時吸っていたインドネシアのタバコの銘柄グダン・ガラムの丁子の香りとマイアミの落ち着きのない不思議な空間・・・それは私にとっての80年代、90年代そのものである。
 沖縄に行ってから、とんと東京の純喫茶などという場所とも縁がなくなった。だいたいバブル崩壊後、「カフェ」なる新たな飲食店形態が日本中に林立した上、「ドトール」、「スタバ」などという洒落たコーヒーチェーン店もできて、そのせいか、薄暗くて、タバコ臭く、待ち合わせと時間潰しに使われる喫茶店に注がれる日本人のまなざしが、多少とも冷たくなった気がする。
 そんな時代のせいなのだろうか、ふと気づくと渋谷のマイアミが消えて、妙に明るい雰囲気のパスタとピザ屋「マイアミ・ガーデン」に装いを新たにしている。流行の「カフェ」を思わせる雰囲気だ。もうマイアミは時代の役割を終えたのだろうか?そんなことを思いながら、よく看板を見てみると・・・「旧喫茶マイアミ」としっかり書かれているではないか!
 やはりマイアミは歴史的、伝説的純喫茶なのだ。まるで時限付きモニュメントのように、かつて賑わいをみせていたマイアミの存在が、ちゃんと看板にまで記されているのだから。嬉しくもあり、悲しくもあり。まあ40代半ばの「おじさん」の戯言ですから。


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