院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

本物の「うつ病」の原因はストレスではない!!

2015-11-19 11:41:12 | 医療

(「うつ病」を経験した歌手のマルシアさん。NHK「今日の健康」より。)

 子どもを亡くした母親が深く落ち込む。これは正常な反応であって、元来「うつ病」とは呼ばない。子どもを亡くしてにこにこしている母親のほうが、むしろ異常である。

 一方、特段のストレスがないのに、自殺願望が起こるほどに落ち込む場合がある。これが本物の「うつ病」である。

 ストレスに対する正常反応としての落ち込みと、「うつ病」による落ち込みをマスコミを中心として、世間は混同している。

 これは、DSM(アメリカの精神疾患の診断分類マニュアル)の弊害である。DSMの診断基準では、子どもを亡くした母親も「うつ病」ということになってしまうからだ。(ズル賢いことにDSMは死別反応を別扱いにして、「うつ病」に入れないようにと但し書きに書いてあるが・・。)

(DSMの基本姿勢は、現在の病状だけを見てものを言うべきだ。過去のことは考慮に入れないという潔いものだった。それがPTSDを初め、過去を問うようになったのは、大いなる自己矛盾と言えよう。)

 上のNHKの番組でも、DSMの診断基準が紹介されていた。マルシアさんは本物の「うつ病」だったと私は思うのだが、DSMの診断基準を「その通りだった」と肯定している。

 こういうところから、「うつ病」に関する誤った理解が世の中に蔓延するのだ。

※私の俳句(冬)

   かなたまで土蔵造りの雪の屋根