
(オリンパス・フォトパス、ブルーキャンパスさんの作品。)
紅葉は美しい。初めて紅葉に感動したのは中学生のころである。正確には紅葉ではなくて黄葉だが。
東京のお茶の水だったか信濃町だったか、とにかく「スクール・オブ・ビズネス」(「ジ」ではなく「ズ」と書いてあった)という専門学校前の道の銀杏並木がみごとに黄葉していたのだ。空が紺碧に晴れていた。
銀杏の黄葉はそれまで何回でも見てきたのに、その時なぜ特別に感動したのかは分からない。怖いほど心に染み入った。
当時、写真に凝っていた私は、ぜひその光景をフィルムに残したいと思った。だが、カラーフィルムは目が飛び出るほど高価で、かなわなかった。コダック社のエクタクロームというプロが使用するカラーフィルムは一本4,000円だった。大卒初任給が2万円程度の時代である。
黄葉は今でも美しいと思うが、あの13歳のころの銀杏並木が格別に美しかった。文化や芸術や学問、そして異性にも目が開かれた年頃だったからかもしれない。
(銀杏は鎌倉時代に日本に入ってきたとされている。それ以前の日本人は銀杏の黄葉を見たことがないことになる。だからか、古歌には詠まれていない。)