(藤田保健衛生大学病院全景)
一昨日紹介した私が元勤めていた病院は、約1,000床ある。病床数では日本で10本の指に入る。それが20年前に建て替えをしたことはすでに述べた。
建て替え時に何科の病棟をどこに配置するかなど、いろんな議論があった。そのときに私が「これについては議論しないのだろうか?」と思ったことがある。それは院内食堂の数である。1,000床もあるなら、外来患者数だけでで1日2,000名は超える。家族や見舞客、業者を入れると万という数になる。田圃の中に作られる病院だが、建ったらそこは一つの街になるだろう。
当然たくさんの院内レストランが必要になるだろうと思っていた。でも、医療と関係がない話だから、医者はレストランについては意見を述べる機会がなかった。
その結果どうなったか?1,000床の病院にレストランがなんと1軒だけしか作られなかった。たった1軒では競争が起こらない。しかも、そのレストランは給食会社が経営する店だった。その結果、そのレストランの味はいつまでも不味く。客があまり寄り付かなくなった。病院の利用者は、別のところで食事をせざるをえなくなった。
経営母体は市である。役人に経営のセンスはない。医者はと言うと、大学卒業直後から定年までいる医者は皆無である。医者はみな、一定期間在籍したら去る。要するにゆきずりの旅人みたいなものだ。建築予定の病院のレストランの数なんか眼中にない。
それにひきかえ、私立の病院は抜け目がない。上に示した写真は同じ愛知県にある藤田保健衛生大学病院である。病床は約1,500床を擁する。病床数は私が元いた病院の1.5倍だが、院内レストランはなんと5軒以上ある。しかも、それぞれのレストランは名古屋市内の名店のサテライトである。その後のこの大学病院の繁栄は知る人は知っている。
官はいつまでたっても民に追い着かない。いや、官にはそもそも追い着く気がないのだ。
参考:公立病院はなぜ赤字なのだろうか?