長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

138 醸す香り

2016-03-09 18:03:21 | 日記
 昨年末に「強権に確執を醸す歌人の会」が組織されて安倍政権の強権的な政治手法に反対するシンポシウムが開催された。行ってみようとも思ったが別の用事を優先したので行かなかった。この会の名前は三枝さんと言う有力歌人(僕と同年代らしい、お会いしたことはない)が命名したとのことで、その由来を1910年の大逆事件のあと石川啄木が「我々日本の青年はいまだかつてかの強権に対して何らかの確執をも醸したことがないのである」と書いた文からの引用とのことである。
 で、違和感を持った。いや、歌人が政治に口を出そうとするのは、そしてある意味の先導・扇動をしようとするのは個人の自由であるし構わないと思うのだが。確かに安倍政権の強権手法には僕も賛成ではない。ちょいと検索すると、1970年ごろにも、日大全共闘が「「強権に確執を醸・・」という文言を使っていたらしい。
 で、僕の違和感は・・・醸すというのは酒や味噌、醤油など発酵食品を作るときに、コウジカビや酵母による糖化やアルコール発酵、あるいはほんの少しの乳酸発酵や酢酸発酵など、およびそれに付随する各種の代謝過程で産生される、エステル類、アルコール類、アミノカルボニル反応産物などによる香気が発酵が進んでいることを知らせてくれる状態を示す言葉が本来だろうと思うのだ。だから良いことが期待される時に使いたい気がしたのだ。それを「啄木が使ったから」とか言うのは言葉のセンスに欠けている気もしたのだ。しかし、「物議を醸す」との言い方は辞書にも出ていて正しい日本語でもあることになっている。とすると僕は啄木や日大全共闘や三枝さんに文句をつけるのではなく、日本語用法に異論を唱えなければならないのかもしれない。
 まあ、長生き日記も確執ではなくて、もうちょっとほんわかした何らかの空気を醸したいのでやっているようでもあることよ。ときどき、生き物確執っぽくなるけれど。