坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

エル・グレコ展 宗教的情熱と近代性

2012年06月24日 | 展覧会
16世紀後半から17世紀前半にかけて、スペイン繁栄の黄金期に活躍したエル・グレコの代表的な作品群50点以上が、プラド美術館、ボストン美術館など海外十数カ国から集結。過去最大規模の回顧展となります。
グレコと言えば、祭壇画などの聖書場面を描いた宗教画が有名ですが、マニエリスムを思わせる引き延ばされた人体と構図的にも対角線を利用した動的な旋回するような斬新さ、劇的な色彩性など、先見性に富んだ作風が魅力です。
ベラスケス、ゴヤに先立つスペインの三大画家に数えられていますが、宮廷画家ではなかった(宮廷画家になれなかった挫折感も味わっています)だけに、どこか破天荒な宗教画の新たな魅力を開示しているようにも見えます。
・掲載作品は、高さ3mにも及ぶ「無原罪のお宿り」。最晩年の最高傑作のひとつで、筆力の衰えを感じさせない色彩と群像のオーケストレーションで上昇するエネルギー、天上の光のもと輝く神秘的な色彩の乱舞がスケール感を呼び起こします。
グレコの宗教的情熱に打たれるとともに、ピカソやセザンヌに近代性を再評価されたグレコの魅力あふれる展覧会になることでしょう。

◆エル・グレコ展/10月16日~12月24日/国立国際美術館
 13年1月19日~4月7日/東京都美術館