坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

生誕100年 船田玉樹

2012年06月16日 | 展覧会
国際的な美術展だけでなく、各自治体の美術館では地道な研究の成果により、これまであまり紹介されなかった画家に光をあてるという使命感があります。
日本画家、船田玉樹(ふなだ・ぎょくじゅ、1921年~1991年)をご存じの方は相当日本画通とお察しします。私は展覧会の案内を頂く前は、知らない画家でした。
リリースの中で、作品を見ていて、これはすごい、正統派の技法と豪快さもあり、繊細華麗な色彩で、皆さんに見て頂きたい企画展として取り上げました。
船田玉樹は、郷里広島から最初、油彩を学ぶために上京しますが、すぐに日本画に転向し、大御所速水御舟に学ぶ幸運を得て、その後、やはり日本画界の重鎮、小林古径に師事し、謹厳な線描と端麗な色彩を学んでいきます。
現在は、朦朧体から進んで、日本画においても油彩的に彩色を盛り込む技法(東山魁夷、平山郁夫作品などが有名ですね)もまた魅力ですが、日本画のルーツは線の美しさもありますので、現在見直されている点でもあります。
玉樹はその古来からの日本画の線を引きだした手法の上に彩色豊かな世界を獲得しています。
〈異端にして正統派〉と展覧会の副題にあるように、玉樹は、戦後は故郷にこもり画壇とは距離を置いて、自己の世界を追求していきます。そのため美術史の上でも取り上げられる機会が少なかった画家です。
約200点の展覧により、その全容が紹介されます。

◆生誕100年 船田玉樹/7月15日~9月9日/練馬区立美術館(西武池袋線
中村橋)