坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

青森県立美術館開館5周年記念 光を描く印象派展

2011年03月06日 | 展覧会
東北新幹線の全線開通記念により青森県立美術館では常設コレクションが開催されていますが、この夏から秋にかけて開かれる開館5周年記念展では、大規模な印象派展が開催予定です。
自分の眼に忠実に光を追い求めた印象派は、筆触分割法(パレットで絵具を混ぜないで、筆のタッチによって描く)によって、それまでにない明るい画面を獲得しました。
本展は、その誕生の謎を解き明かす異色の印象派展と言えるでしょう。掲載画像は、ギュスターヴ・カイユボット「セーヌ河畔の洗濯物」1892年頃〈ヴァルラフ・リヒャルツ美術館/コルプー財団蔵〉。現在では、画面上の顔料などの分析や下絵などの研究が、顕微鏡やX線や赤外線などでリサーチする研究が進んでいますが、この作品においても、左隅の画面に顕微鏡調査で、ポプラの芽が発見されました。この作品が実際に戸外でポプラ並木の下で描かれたことが実証されました。
この作品は、縦約1メートル50センチ、横1メートルほどもある大作で、風がポプラや洗濯物を揺らすなか、描くのに苦労したかと思いますが、影も青味がかった紫色で明るい陽光の美しい河畔風景となっています。
ルノワールやモネ、マネ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌなどおなじみの巨匠たちの作品60点を超える展覧となります。
数年にわたる大学機関との科学的なリサーチの研究も発表され、100年以上の時をこえて巨匠たちの制作現場へと誘ってくれます。
◆光を描く印象派展/7月9日~10月10日/青森県立美術館 Tel 017-783-3000