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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

払えぬ?払わない!治療費・国保料の滞納

2007-02-15 19:31:49 | 福祉雑記録
治療費を払わない患者が増えている。

全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会(以下、四病協)は、未払い患者が加入する国民健康保険などの保険者に肩代わりを求める方針を固めているという。
2004年までの3年間での未集金額は、把握しているだけで426億円に及んでいる。未収金の原因は、治療費さえ払うことができないほど生活が困窮している例もあるが、最近では、支払能力があるのに治療費を何度も踏み倒したり、患者を入院させて行方不明になる家族など、モラル低下に伴う悪質な例も目立ってきている。各病院は、治療費の徴収努力にも限界があり、今回の決断に踏み切っている。

そもそも、保険者に肩代わりを依頼することは可能なのだろうか。そこは両者で見解が分かれているところだ。
国民健康保険法と健康保険法には「医療機関が相当の徴収努力をしたにもかかわらず、患者から支払いを受けられない場合は、保険者が医療機関の請求に基づいて患者から徴収できる」と規定されている。これを根拠に「保険者に請求をできる」と四病協は解釈しているが、厚労省は「診療行為は、医療機関と患者の契約」という立場で、肩代わりをする義務はないという考え。

確かに、契約の側面はあるが、病院は救急であれば受け入れざるを得ず、毎回支払い能力の有無を調べてから治療を行うことができるわけではない。
医療は欠かすことのできないセーフティネットである。セーフティネットであれば、国や各保険者は病院まかせにはできないはずである。未収金の増加により、医療機関が潰れるようなことがあれば、私たちの生活の根幹に関わる一大事である。

その医療を受ける前提に関わるもう一つの問題として、国民健康保険料の滞納による個人の預金口座や不動産の差し押さえが増加しているという。
国民健康保険料の滞納者に対し、自治体は預金口座や保険、不動産などの差し押さえができると地方自治法に定められている。この数年で、差し押さえをしている自治体も39%から55%に増加している。つまり、それだけ滞納者が増えているということである。
滞納者は、差し押さえに先立ち保険証を返還させられ、代わりに「資格証明書」をもらうことになる。その状態で受診すれば、いったん全額自己負担になってしまう。

滞納者が増える背景には、高すぎる保険料と低所得がある。差し押さえでは何も解決にはならず、生活の根本的な問題を解決しなければならない場合が多い。

一方、前者の問題と同じように、モラルの低下による悪質な滞納も目立つという。支払う能力がありながら、滞納している場合には差し押さえは有効な手段と言える。保険料によって医療が受けられる状況にあり、なるべく多くの人から徴収しなければ、適切な医療を受けられなくなる状況に陥ってしまうかもしれない。

今の医療費をめぐる現状からセーフティネットの構造的な変革と、私たちのモラルの向上が求められている。