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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

高齢者虐待防止法 5ヶ月・・・

2006-09-04 22:23:56 | 福祉雑記録
高齢者虐待防止・養護者支援法が施行されてはや5ヶ月。これまでのところ、それほど劇的な変化の兆しはない。
市民の間に、この法律の影響があることはまだ実感できない。それは、高齢者虐待防止法自体がメディアで扱われないことにもよるだろう。そもそも、高齢者虐待は児童虐待とは異なり事件になりにくく、表面化しにくいという面があった。それに加えて、高齢者の虐待がまだ社会問題化する前の法施行ということもあって、未だに市民に認知されるには至っていない。
果たして、本当に法施行の影響はみられないのだろうか。

この5ヶ月の間にも、高齢者虐待防止法に違反する事件は多数起きているが、法律には虐待行為そのものに罰則規定がないため、報道にもその文字は出てこない。
『介護殺人』や『介護心中』という名でメディアを騒がす事件も、高齢者の虐待であることには変わりない。また、施設における身体拘束も虐待に当たる。
身体拘束においては①非代替性、②切迫性、③一時性の3要件をすべて満たさなければ、虐待に当たる。その上、本人や家族に説明し、記録もしっかりととることが要求される。
施設における虐待事件が報道された時は、さすがに法との関連性にも触れていることが多かった。

高齢者虐待防止法では、高齢者を65歳以上と規定しているが、65歳未満の人が虐待を受けた場合はどのように対応するのか。
その答えは『介護保険法』にある。介護保険法には、保険者の責務として虐待を防ぐことが明記されている。介護保険の被保険者は40歳以上であるから、市町村は40歳以上でも虐待に対して責任があることになる。また、被虐待者が障害者であれば『障害者虐待防止法』が適用されることになる。児童であれば『児童虐待防止法』だ。

そもそも、虐待とはどのような行為のことを言うのだろうか。
法では、養護者が高齢者に対して以下のような行為をすることを虐待としている。
①身体的虐待・・・殴る、蹴る、つねる、閉じ込める・閉め出す、身体拘束等
②心理的虐待・・・暴言、無視、友人から遠ざける等
③世話の放任・・・治療や薬を与えない、介護をしない等
④性的虐待 ・・・わいせつな行為をする・させる等
⑤経済的虐待・・・年金を勝手に使う、必要な生活費を渡さない等
ここで問題になってくるのは、養護者(介護している人)ではない人の虐待行為はどうなるのか。しかしそれも、上記のように介護保険法やその他の法律に基づき、市町村としては適切に対応することが望まれる。

今回の法施行の一番効果は、高齢者虐待における市町村の責務が明確になったことだろう。地域包括支援センターが同時期に創設されたことも相乗効果になっている。
事件にまではなっていないが、地域における高齢者虐待は確実に市町村まで届くようになってきている。法律ができたことで、行政の職員が無視できなくなってしまったのだ。相談窓口としては地域包括支援センターでもよいが、最終的な責任はやはり市町村が担わなければならない。
直営の地域包括支援センターでは、これまでよりもすばやい連携が可能になったことで、迅速な対応が期待できるだろう。問題は、すべての地域包括支援センターが委託しているところである。現場の職員と行政の職員の間の温度差が悲劇を生まないように、連携体制を構築していく必要がある。