What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

ほっと・安心(徘徊)ネットワーク

2005-09-05 22:11:36 | 認知症
8月31日にNHK教育テレビの福祉ネットワークという番組で、福岡県大牟田市のひとつの学区“はやめ”地区で取り組まれている「ほっと・安心(徘徊)ネットワーク」が紹介された。
認知症のある人が安心して徘徊できるまちづくりのため、7月に地域住民参加のもと「ほっと・安心(徘徊)模擬訓練」がおこなわれ、それが取材された。

このネットワークを主催したのが、従来の住民組織(老人クラブ、公民館など)を中心に組織された「はやめ人情ネットワーク」である。もともと人情の厚かった地域で、さまざまな活動を通して「誰もが安心して暮らせるまちづくり」を目指している。
今回は、住民組織に消防署、警察署、市役所、地域商店、民生委員、介護サービス事業者、介護支援専門員、社会福祉協議会、在宅介護支援センターなどが協力し、模擬訓練がおこなわれた。
徘徊する高齢者役の人が誰にも行く先を告げずに家を出た後、連絡を受けた地域住民が近所を探していく。今回が2度目の模擬訓練だったため、より充実した訓練にはなったがその分課題も多く見つかった。

ひとつは、連絡方法。電話連絡を基本とし、連絡網に沿って伝言ゲームをしていったが、時間がかかってしまううえに、その家の人がいなければ次に回らず、最後まで伝言が行く間に徘徊する人が遠くまで行ってしまう可能性もある。また、伝言が途中で変わってしまう可能性もある。
ふたつめは、可能性のある人が目の前を歩いていても声をかけられなかったことである。普段から地域の中で、声を掛け合えるような環境をつくっていなければ、なかなか他人に声をかけるのは難しい。「どこに行くんですか?」「どうしたんですか?」その一言がなかなか出てこないのである。まさに地域づくりの課題を突きつけられる結果となってしまった。

テレビの中でも言っていたが、人情ネットワークの人たちにとって衝撃的なことが4月にあった。それは、実際に徘徊した人が行方不明になり、なかなか見つけることができなかったのである。結局3日目に衰弱した姿で見つかり、後1日遅れていたら命にかかわる状態だった。
もし、徘徊のうえ行方不明になってしまったという相談が私たちの勤める福祉施設にきたらどうだろうか。福祉の専門職である私たちに何ができるだろうか?ぜひ考えてもらいたい。
実際に相談を受けた人は、何もできなかったという。もちろんなじみの場所などから徘徊しそうな場所を警察に情報提供したり、ネットワークに情報を流して捜索は続けたが、結果は芳しくなかった。そこで唯一できたのが、家族のサポートであったという。不安に思う家族の側にいて不安を和らげたり、逐一情報を家族のもとに連絡することに力を注いだという。結局、無事発見され事なきを得たが、地域住民にとっては大きな衝撃であった。

そんなことがあった後の模擬訓練ではあったが、課題や限界ばかりがクローズアップされる結果となってしまった。しかし、課題がみつかるということは、とても大きな前進である。何もしなければ課題もみつからないのだから。
その課題を糧に、次なる取り組みはすでに始まっている。徘徊死が問題になってきている今、国はモデル事業として全国10ヶ所の地域で徘徊模擬訓練をおこなうという。すでに取り組み始めている地域はいくつかある。その地域が少しずつ広がり、いつの日か日本全国どこでも安心して徘徊できるまちになっていることを願うばかりである。