むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

映画「1895」字幕の日本語訳初稿完成!

2008-11-26 03:17:15 | 台湾言語・族群
ふーっ。といっても実質2日間4時間でしかないが、1895の字幕の日本語訳が完成したと。もちろん日本語せりふの箇所は訳さなくていいし。
映画は編集前の長尺版も含めて全部で4回見ているわけだし、それでも全部の場面を細かく覚えていないので、やっぱり最終的には映画を見ながら照らし合わせて修正していかないとね。
日本語って、漢語・タイ語系と比べて対称表現が多いんで、場面設定がないと文字面だけでは翻訳は不可能だからね。
幸い私はこの映画に出てくる主要3言語である客家語、台湾語、日本語がわかるわけだし。てか、台湾でもこの3つともできるやつはいないはず。

そういえば、製作会社から来たファイルは、エクセル形式だった。そっか、台本と違って、映画になった台詞だとエクセルにしたほうがいいもんね。これは発見。

映画「1895」の鑑賞会でなぜか現れた中国人留学生が無教養な言いがかり

2008-11-20 16:57:48 | 台湾その他の話題
11月17日、映画「1895」の鑑賞会が欣欣戯院であり、民進党民主学院の呼びかけで、民進党主席や立法委員、その他市民団体が鑑賞した。上映後に監督との質疑応答があったが、中国から淡江大学に来ている交換留学生(っているんだ)が「映画の中で出てくる客家人女性の髪型はなぜか日本的だ(けしからん)」みたいな質問というより、言いがかりをつけた。アクセントを聞いて、会場は「中国人だ」といって、一瞬険悪かつ白けた空気が流れた。監督は冷静に「われわれは服装などの考証に力を注いだが、これは客家人の伝統の髪型。日本とも違う」と切り返した。

確かに前から見ると日本の丸髷などに似ているが、後ろを見ると朝鮮王朝王宮女性のそれと似ている。というか、これこそいわゆる「伝統漢人」(てのも、いまいち語弊があるが)の髪型だ。そもそも日本だって江戸時代までは中華文化の影響が強いから、江戸時代の髪型も中国のある時代の様式を真似たものだ。
それに呉服はまさに「呉」服と呼ばれるように、もともと3世紀ごろ江南から渡来したものだとされている。
文化というのはそういうものだ。何をもって「日本独自」などとはいえない。

中国人は常日頃日本文化を蔑視して「中国の亜流だ」といっているくせに、髪型については日本独自のものがあると思い込んで、中国伝来のスタイルを排撃している始末だ。この勢いだと、くだんの中国人は「大宅門」をみても、「登場人物が和服を着て、日本の聖徳太子みたいな髪型をしているのはけしからん!」とか言い出しそうだwww。無知とは恐ろしい。

そもそも中国でも時代によって、地方によって、服装や髪型の様式は微妙に違う。日本も台湾も朝鮮もベトナムも、みんなある時代の中国のものをパクって、発展させたものが多いのだ。そして、チャイナドレスや辮髪はむしろ漢人の伝統ではなくて、北方民族のものだ。そんなことも、この中国人はわかっていないらしいw。それでいて「中国は強い、すばらしい、日本など目ではない」と思い込んでいるのだから、あきれる。

それにしても、くだんの中国人、妙なところに目がいっているようだ。これ、この映画を5日夜に鑑賞した「英明なる総統」w馬英九ですら気にしなかったことなのにw。
逆にいえば、こんな、中国文化史もわかっていない、拝金主義の、レベルの低い中国人ばかりが増えているのだから、むしろ台湾と日本と南北朝鮮とベトナムは安泰だ。

台湾独立派出版社「前衛出版」が在庫一掃セール23日まで

2008-11-20 16:57:20 | 台湾その他の話題
台湾独立派で文化・政治関係の本を主に出してきた「前衛出版社」がこのほど運転資金繰りに困り、在庫一掃セールを台北市MRT圓山駅出口右手の中山サッカー場1階で行っている。11月1日から始まり、23日午後9時まで。
1冊あたり15-50%引きで、10冊以上まとめて買うとさらに割引される。
前衛出版社の公式サイト:http://www.avanguard.com.tw/
セール特価本の一覧:http://vip.web66.com.tw/web66/_file/1838/upload/guardmmm.htm
なる台NEWS No.7642、2008-11-11、前衛出版社が直売:http://www.naruhodo.com.tw/news/search.php?page_num=0&no=7642

私も遅ればせながら、先ほど行ってきて、これまでもっていない二冊ばかり買ってきた(前衛の本はめぼしいものはほとんど持っているため)。

前衛出版社(林文欽社長)は80年代に反政府運動に関する本をたくさん手がけ、本土(台湾)化・民主化が進んだ後は、台湾の政治・歴史・文化・社会運動に関する硬い本ばかり出してきた。私自身は本は出したことがないが、林社長とは旧知で、以前会社が信義路にあったころはよく遊びに行ったものだ。その後家賃払いが苦しくなり、関渡に引越し、最近では再び市内の農安街に引っ越していた。
これまでのヒット本としては2001年に著者が入国禁止となって話題となった小林善紀(小林よしのり)の「台灣論」や、2007年に人気討論番組「大話新聞」で取り上げられたジョージ・カー(George Kerr)の「被出賣的台灣 Formosa betrayed(裏切られた台湾)」がある。しかしこの2冊が爆発的な記録を飛ばしたものと、その他多くの埋もれた本の在庫費用などがかさみ、決して経営は楽ではなかった。
馬英九政権になって、その反動から再び台湾文化が復興しつつあるが、出版市場そのものはインターネットや実用化の波で苦しくなり、今回運転資金も困って、在庫放出となった。
林社長はそれでも硬派路線を貫くとしている。しかし、私個人は転換を薦めたい。というのも、このまま硬派路線では立ち行かなくなり、つぶれてしまう可能性が高く、つぶれてしまったら元も子もないからだ。それに、林社長の人のよさからか、台湾独立派というだけで、どうみても質も良くなく、売れない本もたくさん出している。これも検討が必要だ。

日本でも学術書や語学書などそれほど売れない領域の本を出している出版社の多くは、一方ではポルノや実用書などを出して稼いでそれを元手にしてあえて売れない本を出している例が多い。日本の左翼系や台湾の人権派の弁護士だって、ヤクザや金持ちの弁護で金を稼いで、そのうえで貧しい人のためにサービス弁護を引き受けているのだ。
台湾でも台湾本土文化ものを出してきた出版社としてほかに玉山社や遠流などがあるが、玉山社は絵本、遠流は実用書も手がけて儲けている。

理念堅持も大事だが、問題は食えなきゃしょうがない。つぶれたら元も子もない。
たとえば、台湾で今一番売れている分野としては健康食品の本があるが、中国の有毒食品が蔓延している中で「台湾国産で安全な食品」をテーマにした食品・料理本を出すという手もある。これなら本来の理念と実益の両方が兼ね備わる。

前衛出版には絶対につぶれてほしくない。

今週の台湾は一挙に冬に突入

2008-11-20 16:56:52 | 台湾その他の話題
寒い。19日から20日にかけて台北の気温は昼も夜も15-16度。しかもどんより曇っているくせに、湿度も低い。肌がかゆい。
先々週までは暑くて扇風機をつけていたが、わずか10日間で夏から一挙に冬入りだ。
週末や土日は寒波も去って気温があがるようだが、基本的にはもう冬だ。
台湾には秋と春はほとんどなくて夏と冬しかない。11月は夏から急に冬になり、4月は冬から急に夏になる。

源氏物語千年紀に寄せて 温暖で母系だった平安時代の環境に近い台湾で古典文学を読み返す

2008-11-18 22:45:37 | 芸術・文化全般
そういえば、今年は「源氏物語千年紀」にあたり、17日は一条天皇に本が献上された1000周年にあたるとか。まあ、むりやりこじつけの感もあるが。実はそれとは知らずにたまたま今年夏ごろから、古典文学がマイブームになっていて、高校時代によく読んだ「帚木」(源氏の一帖)を読み返したりしている。「堤中納言物語」は面白くてはまってしまった。
はまったついでに、最近、「落窪物語」「とりかへばや物語」、時代はくだるが「無名草子」など、以前読んでいなかったものどもを古本でアマゾンして読み始めている。
(源氏は長すぎるから、全巻読破は将来の課題。長編といえばプルーストの「失われたときを求めて」やアプレイウスの「黄金の驢馬」も頓挫しているけどな)

もともと源氏物語など「平安文学」なるものはどうでもよい派だった(高校時代の古文の成績はよかったが)。「創られた古典」でも指摘されたように、そもそも古事記や万葉集から十返舎一九に連なる「日本文学史」なるものは、明治以降の国民国家化によるでっち上げであり、江戸時代ならともかく平安時代の人間は今から見ればはっきりいって「外国人」だから、これを日本文学史と称するのはおこがましい、と思っていた。

しかし、ここにきてふと「日本古典文学」を読み返してみると、高校や大学時代に読んでいて気がつかなかった面白さに気がついた。
というのも、ちょうど平安時代初期から中期までの畿内の気候は、きわめて温暖で亜熱帯に近く、平安貴族は母系社会のしきたりが色濃かったこともあって、ある部分では今の台湾に非常に近い部分があるからだ。
紫式部と同時代の和泉式部の「やりまん」ぶりに見られるように、平安貴族は(庶民も)頭の中はどうやって「やる」かばかり考えていた節がある。まあ、平安時代は不潔だった点はちょっと違うが、基本的には気候といい頭の中で考えていることといい、台湾に似ている。そういう環境の中で、改めて読み返してみると、非常にわかりやすいのだ。

源氏物語千年紀実行委員会のHPを見てみると、質問コーナーの回答者は、近畿地方の学生ばかりであることがわかるが、それは古典文学(古代から中世)の舞台や地名が畿内であることから、近畿地方にいる学生や学者が有利だということなんだろう(実際、高校時代の同級生で、京大などで国文専攻した人間はそういっていた)。
とはいえ、ここにひとつ盲点があると思う。それは気候環境、社会構成、思考パターンがは同じではないからだ。
もちろん台湾も平安時代の畿内とは同じではなく、気候はもっと暖かいが、それでも母系的な特徴や快楽的思考パターンなどは現在の畿内よりも、今の台湾のほうがよほど平安時代の畿内に近いといえる。
というか、今の京都は文化の重荷でどこか気取った冷たい部分があるが、平安時代はもっと開けっぴろげだったはずである。

そういう意味では、台湾に住んで、快楽的な発想に慣れていると、平安文学の作者の感覚がわかりやすいと思う。
特に「堤中納言物語」に出てくる「花桜折る中将」「はい墨」の間抜けなところ、「貝合」の無邪気なところは、今の京都人よりも台湾人に通じるものがあって、なるほどそうか、と思った。

そういえば、平安時代って、当時までに文芸文化作品が輩出された世界のいかなる地域の中では、やたら女性が活躍していることが、特筆すべきことだな。ほかの「古典文学」って男性ばかりだもん。
しかも「とりかへばや」みたいに今のジェンダー論で読み直されている特異な観点の作品もあるし。
亜熱帯的だっただけに、今の日本なんかよりもよっぽどオープンだったんだろうね。衆道とかそういう部分も含めて。


ちょっと話が変わるが、素謡ってのを以前習ったことがあって、こちらにも謡本を数冊持ってきて、最近は時々声に出して謡っている(近所迷惑?)。
故郷の金沢はシテ方宝生流が盛んなところで、毎年夏に市内の小学5年生から中学3年生を対象に県立能楽堂が「素謡教室」を開催しており、それに私は小学5年から中学1年まで参加し、「鶴亀」「土蜘蛛」「橋弁慶」といった、わりと入門者向けの演目を習ったことがあるのだ。
それが役立って、以前台湾の連続テレビドラマで霧社事件をテーマにした「風中緋桜」でもチョイ役で結婚式のシーンの「高砂」を披露したことがあるってわけ。ただ、高砂はけっこう難しいので、本当は鶴亀で勘弁してほしかったんだけどね。鶴亀だって目出度い曲で、結婚でまったく使われないわけじゃないし、何よりも高砂よりもはるかに謡いやすいから。

しかし、この年になると、こういうのを子供のころやっておいてよかったと思う。あと20年もして老人になったら、曲も増やして、さらに仕舞も習ってゆっくり楽しみたいものだ。

戒厳令時代どころか、趙樹理が描いた1940年代の姿に戻っている反動封建国民党

2008-11-17 01:47:26 | 台湾政治
馬政権になってから、台湾の民主主義は確実に後退している。これを批判者は戒厳令時代に戻ったといっているが、私はそんな生易しいものではなく、馬政権集団の頭の中は、近代的軍事支配である戒厳令(軍事法)の頭ではなく、1940年代中国大陸支配時代の無法無能封建反動の国民党に先祖帰りしたと思っている。

そもそも戒厳令といえども、まがりなりにも近代法の産物(鬼っ子としての)であり、戒厳令時代の戦後台湾でも悪法とはいえ、その法律にのっとって厳しい支配が行われた。そして何よりも近代国家に必須な主権は全土に均等に及ぶという支配権が確立し、権力側にもその実力があった。

ところが現在の馬政権がやっていることは戒厳令ですらなく、悪法すら無用、それでいて、一貫性も、統治能力もない、古代専制帝国のあり方そのものだ。蒋経国が生きていたらびっくりするだろう。

そういう意味では、共産党や民主人士を乱暴に捕まえているが、それでいて一網打尽にする能力もなく、ばらばらだった1930-1940年代の中国大陸時代の国民党に先祖帰りしているともいえる。当時の国民党は頭の中身が古代で、荒っぽく弾圧するが、それでいて一貫性も能力もなかったという意味で、後漢末期や短命王朝時期のような無能政権そのものだった。中国1940年代への退行とは、「打倒した前の王朝の一族もろとも滅ぼす」という古代封建主義の復活と同義である。現在の馬政権もまさに同じだ。

ちなみに反国民党闘争から新中国建国初期にかけて活躍したばりばりの共産党員の中国作家・趙樹理が1943年に発表した詩「反動派に告げる」には、ちょうど次のようなくだりがある。
「国民党の頑迷派は、反共専売店を開いて、自らは永遠に進歩することもなく、それでいて他人が進歩すると嫉妬する」
「頑迷派はとても頑迷だ、敵と同じ道を歩み、敵と協力してスパイを放ち、敵ととともに共産党を攻撃し、敵とともに反民主主義を実行する」
「経験や教訓を学ぶことをしない」
65年前の詩だが、今の国民党にも完全に当てはまっている。趙樹理はやっぱりすごい!

そういえば、1945年に「抗日8年戦争」で「勝利」して党勢が最高峰にあったはずの国民党が、その2年後には共産党との内戦で敗退に転じ、さらに2年後には中国大陸を追い出された。

しかも、ここは21世紀の台湾であって、1940年代の中国ではない。時代も空間も異なる。1940年代の中国よりも、はるかに市民社会も発達している現在の台湾では、国民党転落の歩みはもっと速いであろう。中国バブル崩壊も来年には目に見えるところなので、早ければ半年が山場か。

馬英九が「高校生以下はレベルが高い」と妄言

2008-11-17 01:45:54 | 台湾政治
「中華民国総統」を自称する馬英九は15日、ラジオ番組に出現、野いちご運動を念頭において「(大学生よりも)高校生以下のほうがレベルが高い」などと発言した。最近、精神的に危なくなっていると思ったが、こういう妄言まで飛び出す始末である。
野イチゴ運動には、12-13日には高校生も座り込みに加わったり、付近の高校生や中学生もしばしば訪れて声援を送っている(写真参照、12日午後写す)。そうした事実を無視して、あたかも「抗議運動をやっている大学生は駄目だが、高校生以下はおとなしいので自分にとって都合が良い」とでも言いたげな発言は、単なる傲慢である以上に、政治家として必要な最低限の情報収集能力もないのではないことを暴露するものである。

もちろん、高校生のほうがレベルが高いというのは事実かもしれない。それは、少なくとも14日夕方から試験などの圧力から解放された大学生が思ったよりも参加者が少ないのに対して、受験勉強や校則などの圧力がある高校生や中学生が運動に加わったり、声援を送っているのがまま見られるからである。そういう意味では皮肉にも馬が言ったことはあたっているともいえるが、それは馬の意図とは正反対の意味においてであろう。

ハンスト中の陳前総統が強制栄養補給のため病院へ移送 陳がもし獄死したら馬も地に落ちる

2008-11-17 01:44:56 | 台湾政治
ハンストを展開している陳水扁前総統は、身体が衰弱し危険な状態になりつつあることから、台北看守所(拘置所)から近くの病院に移送された。
陳前総統は政権時代にちゃんと台湾独立化を進めず口先ばかりで、支持層をだましてきたことなど、道義的には問題があるとはいえ、今回の逮捕は人権侵害であり、馬政権による前政権粛清という政治闘争の一環である。

陳水扁は党外、民進党にいたる民主化勢力の中では骨がないほうだとはいえ、それでも戒厳令末期にやはり投獄された経験もあり、馬英九など国民党政治家の多くよりははるかに気骨もある。

国民党当局は陳水扁には恨み骨髄なので、保釈することはないだろう。勾留期限の2ヶ月、あるいは4ヶ月、あるいはさまざまな罪の別件逮捕を重ねて2年半勾留したままにするかもしれない。
そうなれば、陳水扁のハンストは今後も続くし、その結果、陳水扁は獄死してしまうかもしれない。
そうしたら、馬政権は政敵を乱暴に投獄して嬲り殺したということになって、国内外でイメージは地に落ちるだろう。

また、いったんこうやって無謀に逮捕したら、今度は保釈するタイミングをつかみにくい。逮捕が無謀だった以上、途中で保釈した時点で、逮捕の不当性を認めることになりかねないからだ。
馬にはない陳水扁の気骨や逮捕の波及効果を国民党権力は甘くみたのではないか?

しかも、今年国民党がまがりなりにもまとまり、選挙にも大勝した原因はひとえに「反陳水扁感情」のためだ。
もともと国民党には何の正当性も政策も思想もない。陳水扁を獄につないで、さらに死んだりしたら、「反陳感情」はもはや利用できない。いや勾留した時点で、すでに陳の多弁に嫌気が差していた人たちの反感も消滅しているから、反陳はもはや無効である。これでもし死なれたりしたら、逆に「政敵を獄死させた」として内外からの攻撃の的になるのだ。

国民党がもし賢ければ、永遠に陳水扁を泳がせて、陳の多弁への反感を盛り上げればよかったはず。「やっつけてやれ」という一時の感情論で突っ走ったのは、明らかに国民党の失敗である。

現時点では反陳水扁感情で陳逮捕を喜んでいる国民党系勢力やメディアも、時間を経るごとに「元首経験者に手錠をかけて侮辱する」という危なさに徐々に気づくだろう。実際、TVBSの討論番組では2日くらい前から「逮捕して手錠をかけるのはやりすぎ」という反省の弁も出ている。

民進党政治家ばかり狙い撃ち、それに対する抗議ハンスト続出で、地に落ちた台湾司法の信頼性

2008-11-17 01:44:22 | 台湾政治
陳雲林が台湾を訪問前の10月28日に嘉義県長の陳明文氏、訪問中の11月4日に雲林県長の蘇治芬女史、11日に陳水扁前総統と、民進党関係の重要政治家が検察当局によって「汚職」などの容疑で次々に逮捕、勾留されている。しかし、いずれも証拠不十分のままの逮捕、勾留であり、しかも国民党政治家の汚職事件は逮捕はおろか捜査すらしていない、党派偏向性がある。
特に、蘇治芬県長に関しては本人への事情聴取もなくいきなり拘束していることもあって、一連の逮捕は、権力の乱用による不当拘束だという認識が台湾内外で広がっている。
こうした不当拘束に対して、蘇治芬県長は拘束直後の4日から保釈の提案も拒否し、ハンガーストライキに入った。途中生命の危険に陥ったため、病院で強制栄養補給措置がなされたが、拘置所に戻されるとハンストを繰り返し、しかも国民党系メディアの間でも「蘇治芬県長については逮捕は不当だ」とする声が高まり、民進党支持層による強い抗議行動も誘発されたことから、困った検察当局は14日に蘇治芬県長を起訴するという形にして、起訴直後に保釈した。当初保釈の提案では保釈金600万元が要求されていたが、起訴後は保釈金もなしに保釈となっている。

それにしても、蘇治芬県長の態度は立派だった。逮捕されてもあまり多言を弄せず、一言「私は潔白だ」とだけいって、手錠をかけられた手を高く掲げ(80年代党外政治家がよくとった行動でもある)、さらに拘置所でハンストに入るなど体を張った行動で、検察の不当性に抗議を表明した。
さすがは60年代に台湾独立党事件で逮捕、長年獄中にあった蘇東啓氏の娘だけのことはある。骨がある。

陳明文県長については地方派閥のボスだけに潔白かどうかはわからないが、少なくとも検察が主張している案件については関連性はないとみられ、さらに検察の捜査の荒っぽさもあって、やはり同情論が広がっている。陳県長は11日からハンストに入った。

陳水扁前総統については、任期中の2006年から国民党系メディアで盛んに「汚職疑惑」が報道され、まさに人民裁判みたいな形でバッシングされてきた。捜査に入ったのは2年以上前であることから、十分起訴するに足る証拠が集まったはずで、それなら退任直後に在宅起訴すればいいし、今でも逮捕することなく在宅起訴すればいいだけだ。
ところが、今回、荒っぽく逮捕して、しかも手錠をかけ、さらに検察は懸賞金をかけて証拠集めを訴えた。
これは起訴して公判維持するに足る証拠集めがまったくなっていないことを意味するもので、手錠をかけて逮捕したのは、ひとえに陳水扁前総統を辱め、リンチを与える目的がありありである。

だからこそ前総統逮捕を伝える日本その他の外国のメディアは、前総統が手錠をかけられた手を掲げた写真を採用したのにみられるように、逮捕容疑については懐疑的な報道ぶりである。
また、馬べったりだった米国在台協会AITのヤング所長も、陳前総統の逮捕勾留直後に「捜査が公正、透明に行われるよう望む」と声明をわざわざ発表したり、馬英九の米留学時代の恩師のジェローム・コーエン教授も台湾司法の後退を懸念する文を発表したりしている。
AIT所長が台湾の内政についてこういう声明を出すことは異例で、それだけ一連の逮捕劇が公正性も透明性も欠けるという強い疑念があるからでもある。

15日付けの自由時報によれば、台湾検察がこの8年で「汚職事件」で起訴したうち、有罪確定したのはわずか55%で、捜査と起訴がきわめて杜撰に行われていることが明らかになっている。
しかも、台湾の現行刑事訴訟法では起訴前勾留は一回あたり2ヶ月で、普通は二回4ヶ月勾留されるので、日本の10日、最長であわせて20日と比べて、杜撰な捜査と人権侵害を生み出しやすい土壌になっている。2ヶ月も勾留しておいて、しかも無罪になるのが多いのだから、検察の質の低さは明らかだ。

それでも李登輝や陳水扁時代は、指導者が民主的な考え方だったから、特定党派を狙い撃ちにしたりすることはなく、予断に満ちた不法逮捕もなかったが、統治者がいったんファシストになると、運用次第でやっぱりここまでおかしくなってしまう。

台湾の民主化は、李登輝と陳水扁を選び、あまりにも順調に進んできたことで、体制のもつ根源的な問題に手をつけてこなかった。
反動勢力を温存し、根源的な問題を野放しにしてきたことのツケは、今こういう形できている。そして代償は先送りにされた分だけ高くつくことになるだろう。

野いちごは台湾語ではchhi3-pho 運動の方向性は民進党よりさらに左の進歩的台湾派

2008-11-17 01:43:54 | 台湾社会運動
ちなみに野いちごは台湾語ではchhi3-phoという。15日も学生自身が紹介していた。
参加学生には、社会学系や台湾文学系が比較的多い。

そういえば、国民党権力の御用学生や集団は、この運動を「民進党が操縦している」と喧伝したがるが、実際には、民進党にも批判的だ。メンバーには、民進党政権時代に弾圧された「楽生院保存運動」系も多い。とてもじゃないけど、民進党と同列に論じられない。
(もちろん、中道リベラルな民進党よりも、さらにずっと右にある反動国民党に対する反感はもっと強いが)

これが90年代前半以前のまだまだ左派色が濃かった民進党だったら別だろうが、政権を担当し、特に民進党内では右派的だった陳水扁によって急速に保守化した今の民進党には飽き足りない、民進党では代表されない、もっと急進的な台湾進歩派というべきだ。

もちろん、国民党反動勢力からみれば、民進党だって本来、社民色が濃い中道左派政党であった背景があり、それより左であったとしても、しょせんは民進党と同じ側(サヨク)にあるため、ごっちゃに見えるんだろう。だが、それは国民党のめがねが白色反動の色めがねで見ているからに過ぎない。

人権弾圧に抗議する学生たちの「野いちご運動」、15日に大行動、ただ人数はそれほど増えず

2008-11-17 01:43:08 | 台湾社会運動
中国特使陳雲林の訪問時の警察の過剰警備、民進党系政治家ばかり狙い撃ちした逮捕など、人権弾圧事件が増える中で、集会デモを制限する集会デモ法の改正を求めて座り込みを展開している学生たちの「野いちご運動」が15日、台北市の自由広場に中南部の学生たちも集結して大規模行動を展開した。午前11時過ぎから開かれ、当初は午後10時までの予定だったが、分科会討論などで午前2時近くまで事実上活動が行われた。

ただし、15日は天候にも恵まれ、大学の中間テストも終わったわりには、参加者および観衆は思ったほど多くなかった。座り込みに参加した学生、それを支援して座り込んだ教授、NGO関係者を含めて、直接行動に参加したのは300人強といったところか。観衆もそれほど増えず、最大時の午後3時過ぎごろでも1000人行くかいかないかといったところ。当初いわれていた「3000人」には遠く及ばなかった。
これは不思議だ。集めようと思えば、実は5000人くらいは集められたはずなのに。
ただ私がここ数日観察しているところでは、どうやら主催者の学生と呼びかけ人の学者ら自身が、あまり積極的に増やそうと思っていないように見える。
これについて、運動歴が長いある中年の人は次のようなうがった見方をしていた。「学生の核心部分に実は国民党の職業学生がいて、それが故意に拡散するのを抑制しようとしているのではないか。先細りになればみっともないし、このまま続くとしても少人数のほうが操縦しやすいからだ」。

とはいえその一方では、国民党権力集団の手先とみられる学生たちによる妨害行動、馬英九が15日に「高校生以下はレベルが高い」と問題発言をしていることからみられるように、権力側も明らかにこの運動を強く意識し、圧力を感じているのは確かで、必ずしもうがった見方どおりともいえない純粋な側面もあることは確かだ。
また、テレビでは、三立だけがずっとSNG車を待機させていた(なぜか民視は最低潮だった14日には取材車しかなかった)。そういう意味でもこの運動に批判性があるのは事実である。
ただ、そうした疑心暗鬼が生まれる背景には、陳雲林訪問以降の台湾の動きは混沌としており、なにが真実だかわからない状態で、民主主義が確実に後退している現状がある。

台湾近代化の父マカイ宣教師を描いたオペラ、27-30日国家戯劇院で上演

2008-11-17 01:40:54 | 台湾言語・族群
台湾に近代的医療やキリスト教を持ち込み台湾近代化の父ともいえるカナダ生まれの長老派教会宣教師マカイ(George Leslie Mackay)の生涯を描いたオペラ「福爾摩沙信簡-鬚馬偕 Mackay--The Black Bearded Bible Man」が11月27日から30日にかけて台北市の国家戯劇院(国立演劇堂、自由広場のところにある)で上演される。台湾語と英語で歌われ、台湾語のオペラは史上はじめての上演となる。
ドイツ人ルーカス・ヘムレプ(Lukas Hemleb)が演出、米国人のトーマス・メリョランザ(Thomas Meglioranza)が主演、その他台湾人、韓国人歌手も加わった多国籍の舞台となる。台湾人以外は台湾語ができない人だが、この舞台のために特訓した。
時間hが27日から29日が午後7時半、30日が午後2時半から。
チケットは6000、3600、3000、2400、1800、1200、600元だが、安い席から売り切れるので、現在のところ買えるのは2400元以上の席。
公式サイト http://event.ntch.edu.tw/2008/opera/
http://www.shadowgov.tw/?p=news,detail,14237&target=act&act=116

野いちご運動、嘉義にも拡大、15日に市民も加え大規模行動予定

2008-11-14 00:57:56 | 台湾社会運動
国民党政権の法律無視の弾圧に抗議し、「集会デモ法」を許可制から届出制への改正などを求めて座り込みを行っている学生たちの「野イチゴ運動」は1週間を超えたが、12日までに新たに嘉義市でも座り込みが始まった。
また、「野いちご」運動本部では週末の15日土曜日に、台北市自由広場周辺で市民も交えた大規模な抗議デモ開催を予定している。この行動は同時に中部、南部でも開かれる予定だが、具体的なスケジュールは未定。本来は13日夜には結論を出すはずだったが、慎重に検討を重ねているため、今のところ結論は出ていないようだ。

嘉義市が加わったことで、この座り込み行動は次の場所で行われていることになる。

台北市:(自由広場)
新竹市:(清華大学小吃部=購買部)
台中市:(市民広場)
台南市:(成功大学光復キャンパス)
嘉義市:(228公園)
高雄市:(城市光廊)

台中市については市当局、台南市については大学当局がきわめて協力的な模様。
新竹市、台中市、嘉義市は国民党市長だが、わりとリベラルなため大丈夫だ。そういう意味では桃園県でも始めればいいのに。

12日以降は、中学生や高校生も声援に訪れるようになっていて、若者の間で、少しずつ「格好いい」一種のブームになっていることがわかる。
ただ13日午後は見たところ、中間テストのピークだったこともあってか、人数は激減していた。ただ寒波が去って、気温も上がり、晴れ間も覗いたりしているので、屋外でも座り込みも寒波ピークの10-11日に比べてしのぎやすくなっている。
14日夕方には中間テストも終わるので、もっと多くの学生が出てくるだろう。

映画「1895」、封切1週目興行収入500万元、「海角」を超える

2008-11-13 02:51:51 | 台湾言語・族群
製作会社によると、日本統治初期の客家人の抗争を描いた映画「1895」は7日の封切から1週間の興行収入が500万元と、この5年の台湾国産映画の記録を塗り替えた。「海角7号」の出だしより良かった。
全編の日本営業向けの字幕日本語訳は近々私がやることになっている。
映画に出てくる客家語と台湾語と日本語がすべてわかるのは、あまりいないしね。

台湾語ローマ字新約聖書の新訳

2008-11-13 02:49:50 | 台湾言語・族群
台湾語ローマ字新約聖書の新しい訳本が出ていることを先日はじめて確認した(新約の新訳というと、オヤジギャグみたいだが)。
李江khioh基金会で毎週月曜夜に開かれている台語読冊会(台湾語文学鑑賞会)に久しぶりに顔をだしたところ、出席者が持っているのを見せてもらった。
ネットで検察すると、どうも今年3月ごろには出版されていたようだ。
この件に関しては2001年ごろにキャッチしていて、長老教会総会(本部)で「ヨハネ福音書」以外のほとんどができていることを知らされていたが、総統選挙だなんだかんだで、失念していた。最近、どうもアンテナの感度が鈍くなっていかんな。

現代台語新約聖經已出版
現代台語新約羅馬字聖經 出版感謝e話

新約聖經現代台語
Sin-iok seng3-keng hian7-tai7 Tai5-gu2
Today's Taiwanese New Testament

普及版 ISBN978-986-7530-94-3 TTVR263 280元
精装版 ISBN978-986-7530-95-0 TTVR267 400

見たところ、そんなにバークレーの1933年アモイ語版と変わっていないが、微妙に現代台湾語の口語の言い回しを入れている、という感じだった。ただし、マタイ福音書の「主の祈り」だけはけっこう変えられていて、ずいぶん口語式になっていた。
最近は日曜礼拝に行っていないので関係ないが、礼拝のときの「主の祈り」はこれからどうするのだろう。
ちなみに、最近出たものだけに、印刷は読みやすい。