台湾独立派で文化・政治関係の本を主に出してきた「前衛出版社」がこのほど運転資金繰りに困り、在庫一掃セールを台北市MRT圓山駅出口右手の中山サッカー場1階で行っている。11月1日から始まり、23日午後9時まで。
1冊あたり15-50%引きで、10冊以上まとめて買うとさらに割引される。
前衛出版社の公式サイト:
http://www.avanguard.com.tw/
セール特価本の一覧:
http://vip.web66.com.tw/web66/_file/1838/upload/guardmmm.htm
なる台NEWS No.7642、2008-11-11、前衛出版社が直売:
http://www.naruhodo.com.tw/news/search.php?page_num=0&no=7642
私も遅ればせながら、先ほど行ってきて、これまでもっていない二冊ばかり買ってきた(前衛の本はめぼしいものはほとんど持っているため)。
前衛出版社(林文欽社長)は80年代に反政府運動に関する本をたくさん手がけ、本土(台湾)化・民主化が進んだ後は、台湾の政治・歴史・文化・社会運動に関する硬い本ばかり出してきた。私自身は本は出したことがないが、林社長とは旧知で、以前会社が信義路にあったころはよく遊びに行ったものだ。その後家賃払いが苦しくなり、関渡に引越し、最近では再び市内の農安街に引っ越していた。
これまでのヒット本としては2001年に著者が入国禁止となって話題となった小林善紀(小林よしのり)の「台灣論」や、2007年に人気討論番組「大話新聞」で取り上げられたジョージ・カー(George Kerr)の「被出賣的台灣 Formosa betrayed(裏切られた台湾)」がある。しかしこの2冊が爆発的な記録を飛ばしたものと、その他多くの埋もれた本の在庫費用などがかさみ、決して経営は楽ではなかった。
馬英九政権になって、その反動から再び台湾文化が復興しつつあるが、出版市場そのものはインターネットや実用化の波で苦しくなり、今回運転資金も困って、在庫放出となった。
林社長はそれでも硬派路線を貫くとしている。しかし、私個人は転換を薦めたい。というのも、このまま硬派路線では立ち行かなくなり、つぶれてしまう可能性が高く、つぶれてしまったら元も子もないからだ。それに、林社長の人のよさからか、台湾独立派というだけで、どうみても質も良くなく、売れない本もたくさん出している。これも検討が必要だ。
日本でも学術書や語学書などそれほど売れない領域の本を出している出版社の多くは、一方ではポルノや実用書などを出して稼いでそれを元手にしてあえて売れない本を出している例が多い。日本の左翼系や台湾の人権派の弁護士だって、ヤクザや金持ちの弁護で金を稼いで、そのうえで貧しい人のためにサービス弁護を引き受けているのだ。
台湾でも台湾本土文化ものを出してきた出版社としてほかに玉山社や遠流などがあるが、玉山社は絵本、遠流は実用書も手がけて儲けている。
理念堅持も大事だが、問題は食えなきゃしょうがない。つぶれたら元も子もない。
たとえば、台湾で今一番売れている分野としては健康食品の本があるが、中国の有毒食品が蔓延している中で「台湾国産で安全な食品」をテーマにした食品・料理本を出すという手もある。これなら本来の理念と実益の両方が兼ね備わる。
前衛出版には絶対につぶれてほしくない。