むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

遅ればせながら「涼宮ハルヒの消失」、台湾・韓国反応の異同、その他気づいたことども

2011-01-21 00:26:12 | アニメ・ラノベ
「涼宮ハルヒの消失」、台湾では昨年10月22日から11月19?日まで、韓国では1月11日から上映された。

台湾で4回、韓国で1回の計5回も見た。
ある韓国人ファンのブログで「長門が好きなら5回は見るべきだ」と力説されていた覚えがあるが、別に長門は好きではないが、さすが「アニメーション神戸」第15回で作品賞・劇場部門賞を受けただけのことはあって、伏線の張り方、脚本、作画すべてにおいて5回もの鑑賞に耐えられる水準だったということではある。
これはあと何度も見ることになるだろう。
(ちなみにアニメ映画で何度も見たのは、ラピュタが20回以上、ナウシカが15回ほど、カリオストロ、千尋が5回ほどだな)

台湾:
1.台北駅前「威秀京站」で封切初日10月22日の初回午前9時半から(観客70人くらい)
2.台北西門町の「日新」で10月23日午後5時から(観客100人近くでほぼ満席)
3.台北信義区の「信義威秀」で10月26日午後7時40分(観客30人くらい)
4.台北西門町の「日新」に再度行き、10月31日の午後4時15分から(観客30人弱)


韓国:
ソウルCGV龍山(ヨンサン)で11月14日午後8時40分から(観客100人でほぼ満席)

観客が一番盛り上がったのは、台湾で2回目に行った10月23日夕方の「日新」。これは客席占有率でも最高の回だったようだ。
台湾人は映画を見るときちょっとしたことでも笑うし(しかし「ホテルルワンダ」でも笑ったのは困ったものだが)、この回はどうやらヲタが一番多かったこともあって、笑いが頻繁で波のように続いていて、圧巻だった。
それ以外は、台湾も韓国も笑いはぱらぱら。韓国で笑いが起きるのが少なかったのは意外だった。

観客のツボは、台湾と韓国で同じところもあったが、どちらかというと違うところが多かった。

台韓で違うところ

*字幕の違い+
 1)16日のSOS団ミーティングでハルヒのみくるへの発言に「お前は昭和生まれか」というのを、台湾の字幕はちゃんと「昭和」と訳していたが、韓国は「いつの時代か」とぼかしていた。やっぱり日本の元号は韓国ではタブーか。
 2)20日に谷口がハルヒの名前を口走ってキョンが「どこだ」と問い詰めるところで、谷口が「どこどこどこどこ、お前は太鼓か」と関西人らしい?突っ込みを入れるところで、台湾も韓国も字幕は「お前は録音機か」と意訳していた。擬声語の違いからか。
 3)ハルヒシリーズは大仰な表現が多いが、台湾は意訳で、韓国は直訳が多かった。たとえば光陽園学院前で待つキョンが「五臓六腑が逆流しそうだぜ」というところでは、台湾は「頭に来る」みたいに訳していたが、韓国はそのまま直訳していた。まあ韓国語のほうが、日本語と近いということもあるけど。ただ、もともとに日本語でもこんな大仰な表現は使わないのだから、台湾版でも直訳にしたほうが「ハルヒ」らしさが出ると思うのだが。もっとも訳本のところでも指摘するが、台湾人にとって中国語はもともとの母語じゃないから、こうした「文体の使い分け」みたいな器用なことができないんだろうね。

*OP曲「冒険でしょでしょ」。台湾のほうが拍子をとっている人が多かった。

*逆にED曲、茅原のアカペラ。台湾ではアカペラが延々と続くので、みんな退屈そうで途中で「まだあるのかよw」みたいな笑いも起きたくらいだった。韓国のほうが、ED曲に感動している人が多かった。

*16日の部室日常シーン。台湾のほうが笑いが多く、韓国はわりとしらけ気味だった。

*消失ハルヒを光陽園学院校門前で待つキョンの独り言に出てくる「誰に祈ればいい」で出てくる「教祖」。台湾はマホメッドやゾロアスターに笑いが出たが、なぜかラブクラフトには無反応というか、知らないみたいだった(なぜ知らんのか!)。逆に韓国では、他よりもラブクラフトで受けていた。

*消失長門のキョンへの思いと失恋という流れ。特に緊急脱出プログラムのEnterキーを押す前に、キョンが入部届けを返すシーン。台湾は意外に長門の悲しみが読み取れない感じで、韓国のほうが読み取れていた。(私も実は深くは読み取れなかったのだが、映画消失のガイドブックを後で見てみると、入部届け突っ返すシーンでは、消失長門が泣きそうな表情していたんだね)

*伏線の読み取り。これは逆に台湾のほうが伏線に気をつけていた人が多かった。たとえば、キョンが消失みくるを呼び止めて「星型ほくろ」といったシーン、消失長門の普通の和室のシーン(笹の葉ラプソディと対比できる)、消失ハルヒを北高に呼び込む際にキョンが「ポニーテールにしてみないか」というシーンでは、台湾のほうが反応があった。

*エンドロール。台湾では特に日本アニメ映画についてはエンドロール最後まで見るようになっているが、韓国ではエンドロールになったとたんに席を立つのが半分くらいいた。ただ台湾でも韓国でももともとはエンドロールを見ないのが習慣なので、韓国でもエンドロール見ている人が以前より増えているとはいえるが、台湾のほうが徹底している。
あと、そういえば台北信義区の「信義威秀」で10月26日夜見たときには、子連れの中年女性が、見終わって会場を出るときに「ハルヒ萌えーー、長門萌えーー」と日本語でつぶやいていたのが劇藁。

*原作ラノベの翻訳本:映画本編ではないが、原作ラノベの翻訳が、台湾と韓国でも出ていて、今回買ってみた。翻訳の出来は韓国のほうがはるかに良い。台湾中文訳の文章はあまりこなれておらず読みにくい(台湾人の中文は大体下手。まあ本来の母語じゃないからな)

しかし、台湾韓国ともに共通して読み取れていなかったシーンが

*ED曲後のおまけシーン。これは台湾で「什麼了?」、韓国で「뭐지?」(いずれも、何?)と、しらけていた。しかし日本のファンのブログを見ると、通常長門が「キョンに図書館カードを作ってもらってありがとうをいっていないことに気づいて、口元を本で隠す」意図を読み取っていた。

*消失長門の家で、鍋を食べた後、朝倉とキョンがエレベーターで降りるシーンで、たった2階分を降りるのに、1分以上かかっているシーン。これは変だとは思う人が両方あまりいなかったようだ。しかし日本のファンのネットでの書き込みを見ると、わざわざ時間を計ったうえで(そこが日本人だなw)「普通の世界になったのに朝倉だけが妙なオーラでも出しているんじゃないか」という指摘が多いが、これはそうなんだろうね。

しかし、考えてみたら、この話、キョンだけモテモテ、長門と古泉が失恋ってことだなw。
キョンについては、ハルヒとはついに両思い。みくるもキョンに大きな好意を寄せているが、おそらく未来の禁則事項に引っかかるため(キョンの子孫か何かだから)踏み込めない、長門もキョンが好きだが、振られる。朝倉が微妙だが、エレベーターのシーンは嫉妬ともいえる感じがあったので、実は好きなんだろう。(ただ映画消失のガイドブックでは、桑谷は「今回の朝倉、ホントにキョン嫌いだなあ」といっているが)。どうみても、単にブーたれているだけのつまらんやつにしか見えないが、もてるのは不思議だw。実は超能力者だったりしてw。
まあ、もともとSFで、ハルヒというDQNが主人公の話なんで、話がDQNなのも仕方がないかも。

さらに話の矛盾といえば、改変は前にさかのぼって1年の間だけで、3年前の七夕の世界は改変されていないことになっているが、そのわりにはキョンが改変後の12月20日に「光陽園学院」について「お嬢さん学校だろう」といったところ、国木田が「あそこは前から共学だよ」というところがあるが、「改変範囲が一年前まで」としたら、「前から共学」っていう記憶はおかしくないか?
まあ、修正後に病院屋上で長門が「あなたの記憶も消したうえで」といっているし、消失長門も前の待機モード長門を覚えていないから、記憶に関しては「一年前まで」だけじゃなくて、キョン以外の全員の記憶を消し去っているんだろうが、そうならなぜ消失ハルヒだけが「3年前の七夕」の記憶を持っているかが不思議w。まあ、ハルヒは情報統合思念体と同等の神で、長門よりも「上位」の存在だから、長門による改変によっても、ハルヒの記憶だけは影響を及ぼせなかったのだろうか?それはそれでご都合主義だなあ。また、もしそうだとしたら「改変後の世界には情報統合思念体もハルヒの能力も存在しない」という3年前の長門の説明も矛盾するな。
もっともいろんなファンブログで指摘されている「一年前までの改変なのだから、改変前の12月18日午前4時18分に戻っても意味がない」という論を目にするが、時間の流れとしてはちょっと違うような。

そういえばハルヒといえば、2006年12月パレスチナ・ガザ地区であった反戦デモで、少女が「子供殺しを裁こう」(?)とアラビア語で書かれたプラカードで、ハルヒが手を掲げているものが使われているのは、笑える。ハマスとファタハ間の緊張高まる - パレスチナ自治区。いや、本当は笑っちゃいけない話なんだけど、しかしなんで日本でアニメ放映があったばかりの2006年という早い時期に、ガザにいる少女がハルヒを知っていたのだろうか?

日本のアニメの影響力とか浸透力ってすごいな。

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