むじな@金沢よろず批評ブログ

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中国が肩入れすると碌なことはないという見本――世界最悪のインフレ・シンバブエ

2006-05-14 22:41:35 | 世界の政治・社会情勢
朝日新聞の報道:
インフレ率「世界最悪」の1000% ジンバブエ
http://www.asahi.com/international/update/0513/015.html
朝日新聞2006年05月13日20時07分
 深刻な経済危機にあるジンバブエ政府の中央統計事務所は12日、同国の4月時点のインフレ率が年1042.9%に達したと発表した。AFP通信は「おそらく世界最悪のインフレ率」としている。
 同事務所によると、郵便料金は年間で約53倍、理髪代は約45倍、家賃は39倍に上がったという。同国の経済アナリストは「経済は完全に破綻(はたん)した。国民も産業界もまったくやりくりができない状態だ」とAFP通信に話した。
(引用終わり)------------------------------------------------------------------

ジンバブエのムガベ政権はアフリカでも最悪の独裁政権で、中国が最も肩入れしている国として有名。
 これは、中国が肩入れすると碌でもないことになるという見本だろう。
 同じように、スーダン、太平洋のトンガ、アジアのネパールなども、中国が民生を度外視して独裁政権に肩入れして、庶民の暮らしがきわめて悲惨な状態になっている。
中国の援助は、独裁者とその家族に賄賂をばらまいて、その国と親密な関係を築き、さらに日本や台湾を排除していくというもの。
日本や台湾が、その国の庶民生活を向上させることを目的に、学校や病院を無償で建てたり、井戸を掘ったり、農業技術指導したり、医療援助をしたりしても、そこに腐敗した独裁政権であれば中国はそこに目をつけて、権力層だけ取り入ってすべての外交資源を横取りする。
それによって、割りを食うのは、決まって貧しく弱い庶民である。
中国もかつて70年代ごろまでの「社会主義」の理想を建前としてでも堅持していたころは、タンザニア・ザンビア間のタンザン鉄道を人海戦術で建設したり、裸足の医者を派遣したり、井戸を掘ったりと、それなりに民生向上に貢献していたはずだ。
ところが、経済発展して、経済的に大国としてのし上がってくると、実に汚いやり方で、権力層に金をばらまいて、利権を与えるという「援助外交」を展開するようになった。
アジア・中東・アフリカ・中南米には、まだまだ独裁政権が多く、同じ独裁政権で民衆を踏みにじっても平気な中国が取り入り、付け入りやすい余地がある。

かといって、日本でも台湾でも、「これは独裁がいけないのであって、民主化をどんどん輸出すべきだ」と、米国の民主化戦略にならった「民主化押し付け論」がまかり通っているのも問題だ。
独裁体制はそれ自体が問題なのではない。
たとえば、言論抑圧的であったとしても、マレーシアのように、言論の自由は規制されていても、曲がりなりにも民主的な選挙システムがあって、公正な司法や法制度がある程度機能している「good governance(良い統治)」で、対外的にも世界各国とも平和的な友好関係を維持しているようなところであれば、文句を言うべきではない。
また、リビア・カダフィ政権やかつてのイラク・フセイン政権のように、抑圧的で専制的な政権であっても、それなりに民衆の福祉に気を使っていれば、褒められたものではないが、それはそれで良しとしよう。
もちろん、自由化することは望ましい。しかし、それはあくまでも現地の人々が選択することであって、歴史的環境も文化も異なる他国が、みだりに「リビアはけしからん」などという筋合いではない。
独裁体制でも問題なのは、権力層だけが利権を独り占めにし、民生を度外視して、汚職や軍拡に狂奔している、中国、ジンバブエ、スーダンのような場合である。

つまり、日本や台湾が途上国に行うべき援助外交の方向性は、「民主化の押し付け」ではなくて、民主化してもしなくても最低限でもマレーシアのようなgood governance、民生向上と良き統治を目標とすべきであろう。
マレーシアのパフォーマンスは括目すべきである。国際的な地位も高い。たとえば、ノービザで訪問できる国の数は、アジアでは日本が128カ国で一位であるが、二位がシンガポールの126カ国、三位がなんとマレーシアで120カ国なのである。韓国の115カ国よりも多い。これは一人当たりのGDPがいまだ数千ドルのレベルにある中位中進国としては世界に例がない厚遇である。80年代にマハティール首相(当時)が、「ルック・イースト」といって日本との関係を重視したように、マレーシアの発展には、日本の援助や投資、日本との関係が大きな役割を果たしたが、マレーシアとジンバブエとの鮮やかな対比は、日本と中国の援助外交の違いを物語る。

今後、日本や台湾は、ジンバブエの例を持ち出して、「民主化しなくてもいいが、民生を省みない中国の援助に依存すると、国の経済が破綻し、碌なことにならない」ことを途上国にアピールしていく必要があるだろう。


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