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むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

フランス大統領有力候補が北京五輪ボイコットを呼びかけ ダルフール問題に関連し

2007-03-31 16:41:09 | 中国
フランス大統領選挙は4月22日の第一回投票に向けて、左派を代表する社会党PSのセゴレーヌ・ロワイヤル候補、中道やや右寄りUDFのフランソワ・バイル候補、現与党で保守・右派のUMPのニコラ・サルコジ候補の有力三人の間で現在三つ巴の熾烈な選挙戦が展開されている。そのうち中道のバイルと左派のロワイヤルの有力候補二人が3月20日夜に「Urgence Darfour(ダルフール問題のための緊急行動グループ)」主催の集会に出席、スーダン政権によるダルフール虐殺問題に関連して、スーダン独裁政権を支援している中国を名指しで批判した。特にバイル候補は「中国が姿勢を改めないならば、2008年の北京五輪をフランスは尊厳をもってボイコットすべきだ」と主張し、注目されている。
ロワイヤル候補も「2008年五輪以前こそが、中国に圧力をかけるチャンスだ。今のままで五輪に喜んで参加するのは疑問」として、ボイコットにも含みを持たせた。

▼右派陣営は中国批判を明言せず、親中国姿勢
一方、もう一人の有力候補で現在世論調査トップにつけていることが多い右派与党のニコラ・サルコジ候補は集会にメッセージだけは寄せたが、中国については触れず、ダルフール問題への緊急対処を訴えただけだった。
しかも、呆れたことに右派与党UMP所属の体育省大臣ジャンーフランソワ・ラムール氏は「スポーツを人質にすることは許されない」などとバイル氏らを批判、中国を弁護することまでやってのけた。
右派与党UMPのシラク現大統領をはじめ、現在与党の関係者はスーダンや中国の独裁政権と親しいものが多く、サルコジ氏自身も極めて媚中派である。だから中国の犯罪的関与を名指しで非難できない。
フランス右派は腐っている。絶対、サルコジには当選してもらいたいくない。現大統領のシラクはそれでも親日だからまだいいが、サルコジは反日と来ている。しかもサルコジ自身は名前からしてもハンガリー移民の子孫のくせに、移民流入を規制しようとしている。頭がおかしいのではないか。
もっとも、反日といえば、ロワイヤル氏もわりと反日的だが、今回中国を批判したし、同じ反日なら左派のほうが良いのは当然だ(これは韓国についてもいえる。日本の右派は韓国で次はハンナラ党になればいいなどといっているが、ハンナラ党も反日だし、政党レベルでは中国共産党だけと交流していることを知らないのか?)。バイル氏の対日姿勢は知らない。

▼フランスの中道派と左派の人権感覚はまとも
もっとも、フランスでは伝統的に、中道から左寄りほど中国独裁体制に批判的で、右ほど甘い傾向があるが、今回もそれが現れた格好だ。
フランスでは左派ほど中国に批判的なのは当然で、中国が人権を蹂躙し環境を破壊する独裁体制で軍拡に狂奔しているからだ。右派が中国に甘いのは人権よりも経済利益を重視するからだ。そういう点では、フランスの左右対立は、本来の意味での左右対立だといえる(もっともフランスが左翼・右翼の用語の起源だから当たり前なんだが。とはいえ、18世紀末起源の話だから、その後の発展でもちゃんと左右対立の軸が押さえられている点はすごい)。
私自身もそういう意味でのまともな左派でありたいと思っている。

▼中国の野蛮な資源漁り外交
この緊急行動が行われたのは、中国が国連安保理でダルフール問題に関するスーダン政権非難決議案に反対していることへの危機感の現れだ。
中国自身が独裁政権で、最近「資源外交」からアフリカで資源を持つ独裁政権と癒着結託して、資源をあさりまくっているが、これがアフリカの庶民層はもちろん、欧米でも反発を生んでいる。
しかも注目すべきことに、ロワイヤル候補は1月に中国を訪問して、割と中国に甘い姿勢を見せていたのだが、今回ダルフール問題でようやく目覚めた(?)ようだ。

▼フランスの帝国主義的遺産も問題だが
ただ、ここに、フランス人の傲慢さを感じないではない。
フランスの報道では、ロワイヤル氏が今回ダルフール問題に関連して、反中に転じたのは、どうやら「私も生まれたアフリカの土地で人権が抑圧されているのは、無関心ではいられない」と述べている。ロワイヤル氏は父親が軍の幹部だった関係で、セネガルのダカールで生まれているのだが、フランスがセネガルなど西アフリカにコミットメントしているのはまさに帝国主義時代の産物である。
この部分はまたまたロワイヤル氏の外交感覚の無さ、お馬鹿さを露呈したものといえそうだ(とはいえ私は基本的にはロワイヤル氏に勝って欲しいと思っている)。

▼中国の帝国主義は現在進行形
ただし、だからといって今回、バイル氏やロワイヤル氏の発言に、中国が早速噛み付いたのは中国のお粗末さを露呈させただけだった。
また、中国国内にはダルフールへの関与や国内人権問題を取り上げる欧米世論に対して「帝国主義」という批判を展開する向きが多いようだ。しかし、現に野蛮な行動を行っている現在進行形の帝国主義者・中国には、欧米の過去完了形の帝国主義を非難する資格などない。
中国はやたら過去の他人の行為ばかり批判するが、自分が同じことを現在まさに行っていることには鈍感なようだ。

▼日本は鈍感すぎ
もっとも、日本もあまりにも鈍感である。「遠いアフリカの出来事で関係ない」という認識なのか、あるいは中国を恐れているのか、ダルフール問題についてはほとんど報道も問題提起もされず、反応も鈍い。
北朝鮮(共和国)の「拉致」に関しては、あれほど人権関連概念も総動員して口をきわめて非難するくせに、日本人が関係しない問題については何も言わないのは、人権という概念の意味をわかっていない証拠である。人権はまさに普遍的人権なのであって、国籍や民族や性別には関係しない。しかし日本人は目くじらを立てている相手である朝鮮人と同じような偏狭さで、国籍や民族や性別を限定して「人権」を論じようとする。
その急先鋒だった安倍晋三が、従軍慰安婦=軍の性奴隷制度で反動的な発言をして、米国までも含む国際社会から非難されたのは、日本の特に右派・右翼の人権感覚、国際感覚の欠如として、それが中国や北朝鮮と同レベルであるという事実をあらわにしたものといえるだろう。
「女性は産み機械」「水道水は飲み水ではない」「慰安婦の強制性はなかった」。これでは拉致拉致と騒いでも、世界の誰も相手にしてくれないのは当然である。

▼今回のフランス大統領は面白い
フランス大統領選挙に戻すと、前回5年前の選挙はあまり争点もなく、しかも第一回投票で極右排外主義者ルペン候補が2位浮上、社会党のジョスパン候補敗退を許し、決戦投票では社会党から共産党、その他左翼諸派に至るまでも保守のシラク氏に「鼻をつまみながら」入れるという屈辱の事態を招いてしまった。
ところが、今回は争点がたくさんはっきりしている。雇用、移民流入、国際関係なども争点となって、いかに極右ルペンを追い落とすかも課題になっている。さらに以前までは右派・保守のUMPと協力してきたやや右寄りの中道派UDFが、独自候補のバイル氏を出していることも特徴だ。右派、中道、左派の有力候補三つ巴の効果から、懸案だったルペンの陰は薄くなっている。
改めて、フランス大統領には、ロワイヤル氏か、バイル氏がなればいい。サルコジだけは駄目だ。サルコジはルペンと変わらない。

(ところでこの問題は例の台湾関係の右翼メルマガ「台湾の声」も流しているが、「台湾の声」は大中国反共集団法輪功系の「大紀元」をソースにして鵜呑みにしているため、ロワイヤル氏もボイコットを主張したかのようになっているが、それはニュアンスとしては異なる。ちゃんとフランスのソースで確認すればいいものを、なぜしょせんは中国人が作っている大紀元なんか信用するのだろうか(嘲笑)。

フランス語の新聞記事やブログ
http://www.boursorama.com/pratique/actu/detail_actu_flash.phtml?&news=4036741
JO 2008: émoi olympique après une flèche de Bayrou contre Pékin
Reuters par Kerstin Gehmlich

http://www.comlive.net/sujet-128862.html#entry7759840
Partagez-vous l'opinion de Francois Bayrou ?
Oui, il faudrait boycotter les JO les cas echéant [ 9 ] [28.13%]
Non, c'est une mauvaise idée [ 23 ] [71.88%]
Total des votes: 32

http://www.lemonde.fr/web/depeches/0,14-0,. ..95@7-354,0.html
Francois Bayrou a t-il parlé trop vite, gaffé ?
Ou au contraire, soutiendriez-vous une telle démarche de boycott ?

http://www.20minutes.fr/article/147616/20070323-Monde-Bayrou-et-Royal-nouvelles-betes-noires-de-Pekin.php
Bayrou et Royal, nouvelles bêtes noires de Pékin?


http://www.lefigaro.fr/election-presidentielle-2007/20070323.FIG000000226_pour_pekin_bayrou_et_royal_ne_sont_pas_tres_au_courant_des_subtilites_diplomatiques.html
La Chine n'apprécie pas la menace d'un boycott des JO agitée par Bayrou et Royal
JEAN-JACQUES MÉVEL (à Pékin).
Publié le 23 mars 2007
Actualisé le 23 mars 2007 : 09h29

http://tempsreel.nouvelobs.com/speciales/elysee_2007/20070321.OBS8147/les_candidats_prennentdes_engagements.html
Les candidats prennent
des engagements
NOUVELOBS.COM | 21.03.2007 | 10:52


http://fr.answers.yahoo.com/question/index?qid=20070324055754AA00itA
Royal est-elle contre la participation de la France aux Jeux Olympiques ?


http://www.francematin.info/La-bourde-de-Bayrou_a10644.html
Politique
La bourde de Bayrou
(フランス・マタンは右派紙か?それだけあって、バイル発言を「へま」と捉えているのがずれている)


英語のソース

http://www.iht.com/articles/ap/2007/03/21/europe/EU-GEN-France-Darfur-Olympics.php
China faces Olympic boycott call, tough French stance, over Darfur
The Associated Press
Published: March 21, 2007

http://slam.canoe.ca/CPSportsTicker/CANOE-wire.France-Darfur-Olympics.html
March 21, 2007 French presidential candidate suggests Beijing Olympics boycott over Darfur

英語ソースでは、さすがにチベット関係者が敏感に反応している。
http://www.tibet.ca/en/wtnarchive/2007/3/23_2.html
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=16063
Boycott Beijing Olympics - French Presidential candidate
By Tenam
World Tibet Network News
Published by the Canada Tibet Committee
Friday, March 23, 2007

青蔵鉄道に無批判な日本のマスコミのだらしなさ

2006-07-05 02:15:17 | 中国
中国がチベットに対してまたもや暴挙を働いた。「チベット自治区」ラサと「青海省」西寧を結ぶ青蔵鉄道が7月1日前線開通したことである。
これについて、台湾では、中国時報のように中国資本が入っていて中国寄りと見られている新聞ですら、抗議運動にも触れるなど若干批判も行っているというのに(見出しを挙げると、2006/07/01 A17/兩岸新聞《青藏鐵路系列之四:政治影響篇》徹底統治西藏 通車如虎添翼; 2006/07/02 A17/兩岸新聞 災難!流亡藏人抗議;2006/07/01 A17/兩岸新聞 抗議興建青藏鐵路 3老外扣押後獲釋)、日本の各紙といえば、読売や一部外資系やワイヤサービスを除いては、無批判で絶賛するような記事ばかり。日本のジャーナリズムには批判精神はないということか?

主要紙では比較的まともだったのが読売新聞だけ。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060701i512.htm
世界最高、海抜5072m走る中国・チベット鉄道開業
> 【北京=末続哲也】海抜5072メートルの鉄道世界最高地点を走る中国・青蔵鉄道のチベット自治区ラサ―青海省ゴルムド間1142キロが1日、開業した。
> 中国政府は、同鉄道開業をテコに、経済発展が遅れるチベットの開発を進め、独立運動がくすぶる同自治区の安定強化につなげる考えだ。

と、リードでは中国の公式見解を書いているが(それは記事としては仕方ない)、後ろのほうでは、

> ただ、チベット独立支持派には「鉄道開業で漢民族のチベット流入が加速し、チベットの独自性が失われる」との懸念が強い。AP通信によると、北京駅では6月30日、チベット独立を支持する欧米の活動家3人が「中国のチベット鉄道は(チベット)破壊が狙い」と英語で書かれた横断幕を掲げ、一時拘束された。

と、きっちりとチベット文化破壊への懸念があることを書き込んでいる。ただ、これもリードの末尾で書いたほうが良かった。そういう意味では、読売もやや及び腰だ。

ただ、ほかの各紙はすべて提灯記事。
朝日新聞は、最近は中国に批判的なスタンスも見られるが、これについては相変わらず旧態依然とした絶賛・無批判に終始している。
http://www.asahi.com/international/update/0701/016.html
「世界の屋根」に一番列車 チベット―中国
2006年07月01日21時24分
>中国からの分離・独立運動が根強いチベット自治区を中国で唯一の鉄道空白区から脱却させたことを、党中央はチベットとの距離を縮める絶好の機会ととらえている。

これは視点が完全に北京政府という侵略者の視点であって、チベット人や環境問題などの観点は抜け落ちている。

>青蔵鉄道の開通にあわせ、北京からの直行列車も1日夜、北京を出発した。ラサまでは48時間の旅となる。中国当局は今後、連日3000~4000人の観光客がチベットを訪れると推計している」

ここでは、鉄道による環境破壊を度外視して、観光業などのビジネス資本主義が発展することを手放しで礼賛している。
もちろん、このスタンスは朝日に限らないで、読売以外の主要メディアはみんなそうだが(日ごろは「反中共」のはずの産経もそうだ)、問題は朝日のダブルスタンダードにある。
というのも、朝日新聞は、滋賀県知事選挙については新幹線新駅に反対する環境派無党派候補が当選したことを肯定的に書いていた。私は滋賀県知事選挙で環境派が当選したことを素直に喜んだし、滋賀県知事選についての朝日のスタンスは正しいと思うが、もしそれが朝日の社論であるなら、どうして青蔵鉄道について環境破壊への懸念の視点で報じないのか?
まさか「中国の鉄道は環境を破壊しない」とでも思っているのか?「ソ連の核はクリーンだ」などといった旧社会主義協会系、戦後進歩主義の悪しき「選別主義」「ダブルスタンダード」の臍の緒が取れていないのか。
核兵器も原発も鉄道などの公共建設の多くも、環境破壊につながることは、洋の東西を問わない。まして、共産党一党独裁国家で、環境保護の市民運動を弾圧しているような中国で、環境アセスメントがまともにされているとは思えない。破壊と汚染は、日本のそれよりもはるかに深刻だと考えるべきだろう。

そういう点で、朝日のご都合主義、ダブスタは呆れるしかない。

ここで、もっと呆れるのが日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」である。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-07-02/2006070207_02_0.html
2006年7月2日(日)「しんぶん赤旗」
海抜4000m超チベット鉄道開通
>【北京=菊池敏也】世界で最も標高の高い地域を走る中国の「青蔵鉄道」が一日、全線開通しました。

> ゴルムドでは一番列車の発車を前に胡錦濤国家主席が演説。改革・開放によって中国の「総合的国力が絶えず強まっていることの重要な表れ」と強調しました。
> 胡主席は、青蔵鉄道の建設が「世界の鉄道建設史の一大奇跡」と評価。力を集中して大事業を成し遂げる「社会主義制度の政治的優位性」が示されたと力説しました。
> チベット自治区が北京などと鉄道でつながれたことで、自治区と中国各地の経済的結びつきが強まり、観光業の発展も期待されています。
>また、インド国境の交易所が四十四年ぶりに再開されるため、インドやネパールとの経済交流でチベット自治区の役割が拡大すると注目されています。

日本について、「総合的国力が強まっている」「沖縄と本土の経済的結びつきが強まり」「観光業の発展が期待される」などと言おうものなら、新自由主義の金儲け主義に盲従して、国内植民地への搾取を進める暴挙などと口を極めて批判してきたのが、日本共産党ではなかったのか?まして「社会主義制度の政治的優位性」と書いているしりから、「観光業発展」などという資本主義的なシステムの発展を手放しで絶賛するという神経が信じられない。
こんなことだから、日本共産党は滋賀県知事選でも勝てないし、どんどん衰退するだけなのだ。
いっていることが、ご都合主義、矛盾だらけで、これでは今の日本人の誰にも信用されるわけがない。



文革40周年:経済発展するごとに文化・思想的に退化・野蛮化する中国

2006-05-20 19:23:41 | 中国
 5月16日は中国で文化大革命が勃発して40周年だという。しかし、文革のころの中国と今を比べた場合、実は文化・思想・品格という点では、改革開放・経済成長一直線の今の中国のほうが圧倒的に退化・野蛮化しているのではないかと思うきょうこのごろである。

 特に、外交の手口で見た場合、中国政府による台湾の外交活動への妨害の手口はますます卑劣、野蛮の度を強めているようだ。
 たとえば、陳水扁総統が10日、リビアを電撃訪問した際、自由時報が12日付けで伝えたところによれば、中国在リビア大使館は4台の車と大勢の在住中国人を動員して、空港出口を塞いで陳総統一行を空港外に出さないようにたくらんだという(http://www.libertytimes.com.tw/2006/new/may/12/today-fo2.htm)。
 これは、きわめて野蛮で、リビアという主権国家を侮辱する行動だろう。カダフィ大佐の中国への不快感はこれでさらに強まったはずだ。

 また4月下旬、カンボジアのある都市で、民進党も加盟するアジアのリベラル政党国際組織アジア自由民主連盟(CALD)のシンポジウムが開かれた。ホストはサムレンシー党だったが、中国大使は会議前から会議開催の間中、毎日サムレンシー党首に電話をかけて、「民進党の招待を取り消せ」「民進党の代表に話をさせるな」などと脅しをかけたという。サムレンシー氏は圧迫感を感じたが、そこはさすがカンボジアの権威主義体制と戦ってきた氏。結果的に屈服することなかったどころか、民進党の代表団のために宴席を設けたりしたという。

 中国の台湾に対する外交的圧迫は今に始まったことではない。しかし、少なくとも80年代までは、もっとスマートで、こんなことはやらなかったはずだ。

 中国は共産主義イデオロギーで固まっていた60年代のほうが、毛沢東、周恩来(どっちも好きではないが)という世紀の政治家を持ったおかげで、外交戦術はもっとスマートだった。国内も貧しくて統制があった分、人民も清貧だった部分もあった。
 文革は確かに中国人民に傷跡を残した。しかし、当時の中国人は思想に忠実で、くだらないことを考える余裕はなかった分、ある意味で崇高だったといえよう。
思うに、60-80年代には左翼やハト派を中心に、日本人の間で大勢の「日中友好人士」が育ったのは、偶然ではなく、中国側には思想や理想があって、指導層の知能がきわめて高かったことで、日本人の「心」をつかむことに成功したからだろう。侵略という後ろめたさを感じている日本人に対して「それはあなた方のせいではない、悪いのは一部の権力者だった」などといえば、そりゃほとんどの日本人はイチコロだろうし、貧しいながらもひたむきに生きている中国人民を見れば「清貧」が好きな日本人は感激したのだろう。
今から見れば「幻想」だったということは簡単だろう。しかし、今と比べた場合、当時の中国には、人間をひきつける魅力や何かがあったのではないか?

 たとえば映画を見てもわかる。80年代の「黄色い大地」「赤いコーリャン」「芙蓉鎮」などは人間の生き様と社会との葛藤を描いた秀作だった。とくに私は「黄色い大地」には感動したものだ。ところが、今や同じ監督の「無極」ときたらどうだ。金だけはかけています、といった風で、思想もへったくれもない、脚本や台詞も台湾人ですら「白痴」とバカにする体たらくである。台湾人の文化的コンプレックスの対象であったはずの文化・歴史大国の中国はいまやどこにも文化も歴史もない。
 歴史問題にしてもそうである。周恩来は日本留学時代の日記で靖国神社をみて「感慨を覚えた」と記した。さらに、60年代の中国には、日本人の心の襞もよく知る郭沫若や廖承志らの役者がいた。彼らが生きていたならおそらく靖国神社問題について「日本のかたがたのお気持ちはよくわかりますが、やはりA級戦犯を祀ることだけはやめていただきたく思います。A級戦犯によって日本人民も被害を受けたのですから」くらいは言ってそうなものである。
ところが、今の「知日派」唐樹備や王毅にはそんな芸当はできない。彼らは日本語をぺらぺら操るだけで、日本人のものの考え方や襞がまるでわからない。中国人の発想で日本語を使っているだけだ。そこでひたすら日本人を責め立て、どんな手段でも台湾を封じ込めようと躍起になるわけだ。

 日本人の中で中国に対する反感が強まり、台湾への認知と好感度が上昇した背景には、中国および中国人全体の質の低下・野蛮化と反比例して、台湾が民主化によって「よりよい社会」を気づいたことによるものだろう。
 中国に限っては「衣食足りて礼節を知る」は嘘である。中国は文革のころに、それなりに理想や思想や文化があって、経済発展した今にそんなものはないからだ。
 そういう点では、中国には文革を続け、真面目に共産主義をやり続けて欲しかった。地球環境やエネルギー問題を考えればなおさらである。文革をやっていた中国のほうが、中国人自身にとっても、周りにいる台湾や日本にとっても、世界にとっても幸せだった。


朝日新聞は中国政府に抗議すべきだ

2006-01-18 23:43:34 | 中国
中国外交部(外務省)傘下の雑誌「世界知識」の最新号が日本のメディアについて批評論文を掲載し、産経新聞を「言論暴力団」「保守御用喉舌(宣伝機関)」とこき下ろす一方で、朝日新聞を「広範な大衆を代表する進歩的メディア」などと持ち上げたらしい。産経新聞が17日付けで報じた。
世界知識のHPはどういうわけかここ最近号の更新を行っていないので、記事内容については確認できない。
私は個人的には、日本の新聞なんて、表面的に「朝日が左、産経が右」と見られていても、実際にはどれも商売でそうしたポーズをとっているだけで、似たようなものだと思っているから、今回の論評については、噴飯ものというしかない。
ただし、朝日の報道は産経に比較的裏取りがしっかりしており、台湾でもネットや紙面では朝日を読むことが多いので、朝日にはそれなりに愛着がある。その観点から見れば、この中国の論評は、はっきりいって朝日にとっては大きなダメージであり、産経にとってプラスでしかないと思う。だからこそ産経が大々的に報道したのであろう、朝日新聞社は中国政府に抗議し、また中国政府の出先である駐日中国大使館を業務妨害で訴えるべきであろう。
産経がいかに裏取りが甘くて、記事の質も高くないといっても、中国政府のように侵略・軍拡・労働者搾取・環境破壊を事としている政府に名指しで暴力団と言われる謂れはないし、むしろ中国政府ごときにそう指摘されるならむしろ光栄とすべきであろう。
逆に中国政府が進歩的だと持ち上げた朝日にいたっては、環境破壊・人権蹂躙・軍事拡張・侵略殖民地主義の側からみて同類と見られたわけだから、これは抗議すべき質のものではないか?
少なくとも朝日は、閣僚の靖国神社参拝に対して侵略戦争を発動したA級戦犯が合祀されているという観点から反対し、原発建設にも批判的で、環境保護と平和主義を主張してきたはずだから。ここで中国に対して抗議しなければ、朝日のいってきた環境保護や平和主義は、かつての社会主義協会のいってきた「ソ連や中国の核はきれいだ」論と同一のものと見なされるだろう。

「産経は言論暴力団」 中国誌、名指し批判
 【北京=福島香織】中国外務省傘下の半月刊誌「世界知識」(16日発行)は3ページをさいて
産経新聞などを名指し批判した。中国メディア上で産経が批判対象となることは珍しくないが、「言論暴力団」「保守御用喉舌(宣伝機関)」と呼ぶなど、ここまで激しい論調は珍しい。今月上旬、日中協議の席で、中国側が日本側に報道規制を求め断られた経緯があるが、当局が日本メディアの中国報道にいかに敏感になっているかがうかがえる。
 記事は中国社会科学院日本研究所の金●(●=「亡」の下に「口」、その下に「月女凡」)・助理研究員の執筆で「日本右翼メディアを解剖する」「日本右翼メディアの言論の“自由”と暴力」といった刺激的な見出しが躍る。
 まず「正論」執筆者らを名指しで列挙、「侵略戦争を否定し、靖国神社参拝を支持し、周辺隣国を誹謗(ひぼう)中傷し、平和憲法改正を訴えるのが“正論者”の最大公約数」と説明。「デタラメの論に立ち、故意に過激な言動で人の興味を引きつけようとする」と批判した。
 一方、朝日新聞については、「広範な大衆を代表する進歩的メディア」と紹介し、戦後の保守勢力台頭に断固反対する民衆と朝日新聞に対し「保守勢力は言論操作の重要性を実感した」と解説。フジサンケイグループを、保守政財界のてこ入れで生まれた「保守勢力の御用喉舌」と位置づけた。
 さらに産経新聞などを「狭隘(きょうあい)な民族主義を吹聴するだけでなく、異論を排斥する言論暴力団」と呼び、「朝日新聞や進歩的論客を長期にわたって悪意に攻撃してきた」と述べた。
 中国は最近、日本の新聞の論調に敏感で、中国外交官が「日本新聞で産経だけが首相の靖国参拝を支持している」と語るなど、当局の産経新聞に対する不満が強まっているようだ。
(01/17 11:39)

「言論の自由」の価値がまったくわからない横暴な中国

2006-01-12 21:00:00 | 中国
朝日新聞の報道より:
===========================(引用始め)==========================================
http://www.asahi.com/politics/update/0109/003.html
日本の「中国脅威論」に懸念表明 局長級協議で中国側
日中両国の首脳や閣僚級の対話が途絶える中、両政府の非公式局長級協議が9日、北京で開かれた。中国側は、日本国内で「中国脅威論」が高まり始めていることへの懸念を表明。日本のメディア報道にも異例の注文をつけた。靖国神社参拝問題で小泉政権下では本格的な日中関係の改善は難しいとみられるだけに、中国脅威論をはじめとする「ポスト小泉」の対中姿勢が、06年の日中関係を占う試金石となってきた。
 「日本は、中国のことを一体どう思っているのか」。9日の協議で中国外務省の崔天凱アジア局長が佐々江賢一郎・外務省アジア大洋州局長 に問いかけた。日本側の説明によると、「日本のメディアはなぜ、中国のマイナス面ばかり報道するのか。良い報道がなされるよう中国ではメディアを指導している。日本政府も指導すべきだ」とも述べ、日本政府に「報道規制」を促した。
 佐々江局長は、「中国の発展は脅威ではなく、チャンスだ」との小泉首相の発言を説明。「日本だけが一方的に悪いという主張は受け入れられない。中国としても反省すべき点があるのではないか」と反論し、報道への注文についても「日本ではそういうわけにいかない」と、応じなかった。
============================(引用終わり)==========================================

中国は以前から、自分の特殊かつ独裁的な国情を基準に、日本に注文をつけることがあった。右翼的教科書について、それが数ある一社に過ぎないにもかかわらず、また日本国内でも十分な反対運動もあるにもかかわらず、それ一種類しかない中国の国定教科書と同じだと解釈して執拗に干渉するなど、勘違いが多かった。国情の違いというものがまったくわかっていないのだろうか?
ただ、教科書問題は単なる勘違いや無知ということで済まされるかもしれないが、今回の報道規制の注文にいたっては、行くところまで行き着いた感じだ。完全に狂っているとしかいいようがない。環境汚染や暴動が深刻化する中国は、最近はよほど余裕がなくなっているのだろう。いずれにせよ周恩来、廖承志、郭沫若といった往年の知日派は草葉の蔭で泣いていることだろう。
この発言をめぐっては、さすが親中国とみられていた朝日新聞も上記の記事でも中国に批判的なトーンがにじみ出ており、1月11日付けの紙面は、社説こそかなり中国に気兼ねした書き方であったが、3面の山田紳氏のマンガでは「『脅威論』を封殺せよという姿勢がまた脅威」というキャプションをつけて、胡錦涛らしき人物がとげのある大きな棍棒で、蚊のように小さな「中国脅威論」をたたきのめそうとしている姿を描いている。
朝日のマンガが指摘しているように、まさに報道規制の注文こそが、中国脅威論の存在を実証した形になっている。

ただ、外務省アジア大洋州局長が、報道規制について「そういうわけにはいかない」と反論したのは当然のことだが、これでは手ぬるいのではないか。中国人には、喧嘩腰で物を言わないと、相手に通じるわけがない。「日本は戦前の日本や現在の中国のような言論弾圧国家、全体主義国家ではなく、平和憲法を持った自由民主主義国家だから、そんなことはできるわけがない。あなたのいっていることは、まさに脅威論を実証した形であり、それこそ戦前の日本軍国主義と同じだ。日本を批判する前に、中国は民主化したらどうか」くらいの応酬は欲しかった。
もっとも外務省のモヤシ連中ににそこまで求めるのは酷かもしれないが。

関連記事として末尾に日経新聞と共同通信電の一部を挙げておくが、いずれも「中国は報道の自由を規制している」ことに言及して、不快感を示している。日経は昨年初頭くらいまでは親中的だったはずだが、最近とみに中国(やそれに追随する台湾内の大中国勢力)に対する嫌悪感と警戒感をあらわにしている。昨年の反日暴動で日本企業が多大な損害をこうむったことが影響しているのだろうか。
中国が今回とち狂った注文をつけた背景には、「親中派」だったメディアがどんどん反中に流れていって、中国を味方するメディアが大手には存在しなくなったことへの焦りがあるのだろう。だが、その原因はまさしく中国自身が蒔いた種であり、中国の身から出た錆なのだ。
もっとも中国はこう反論するだろう。「もともと靖国参拝や教科書問題で中国を挑発した日本が悪い」と。たしかに日本の右派勢力が改憲を狙って日中間の不信をあおっているという側面は否定できない。だが、「右派勢力の挑発」は別にいまに始まったことではない。それでも周恩来らの知日派が健在だった60年代には中国は今のように「挑発には挑発で応じる」という幼稚なまねはしなかったし、それが日本における「日中友好」や「中国への好意的ムード」を形成したのは事実だろう。
右派勢力が挑発するのは、どの国でもありうることであって、それに対して挑発で応じるというのでは、つまりには中国自身も日本の右派勢力と同等かそれ以上の極右軍国主義であることを認めたに等しい。それは周恩来時代でも共産党一党独裁である以上は同じなのだが、幼稚になっているという点で、中国は表面的な「経済繁栄」とは裏腹に、内実としては深刻な人材不足(払底)を抱えているといえるだろう。
日本もそんな中国はいちいち相手になどせずに、東南アジア以西中東にいたるまでの「西方外交」を強化すべきだろう。ただ、こちらのほうも、日本の右派政治家には、世界が見えていないようで、東南アジア、インド、中東外交もおろそかになちがちなのだが。中国と喧嘩するなら、中国以外のアジアでの多数派工作をやっておくべきだが、その面では中国のほうが機先を制している有様である。

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日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060110AT3K0900C09012006.html
中国、日本政府に報道規制要請・日中関係改善に向け
 中国外務省の崔天凱アジア局長は9日の日中局長級協議で「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかりなぜ書くのか。日本政府ももっとマスコミを指導すべきだ」と述べ、日本側に中国報道についての規制を要請した。
 中国はメディアを政府の監督下に置いて報道の自由を規制しており、日中関係改善に向け「中国政府もメディアを指導する」と述べた。日本側は「日本は中国とは違う。そんなことは無理だ」と説明したという。


共同通信
http://www.kahoku.co.jp/news/2006/01/2006010901003354.htm
日本に報道規制を要求 中国「対中批判多すぎ」
 【北京9日共同】中国外務省の崔天凱アジア局長は9日、北京での日中政府間協議で「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」と述べ、日本側に中国報道についての規制を強く求めた。
 メディアを政府の監督下に置き、報道の自由を厳しく規制している中国当局者の要求に対し、日本外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長らは「そんなことは無理」と説明したという。

前原民主党代表「中国は脅威」は正論

2005-12-17 19:10:36 | 中国
 民主党代表の前原氏が代表就任後の初めて訪米し、12月10日にワシントンのシンクタンクで講演した際のいくつかの発言が物議をかもした。
 集団的自衛権のための憲法改正を主張し、中国は現実的脅威だと指摘したことである。そのうち、私は、前者は賛成できないが、中国は現実的脅威だとする指摘は正しいし、もっと主張していいと思う。
 これについて朝日新聞11日付け社説(末尾参照)は、改憲批判をしつつ、中国脅威論についても批判しているが、これは矛盾している。集団的自衛権など日本が軍拡を志向することに待ったとかけるのであれば、中国の軍拡を脅威と認識しないのは、明らかに二重基準である。これでは「朝日社説氏は中国に甘いだけで、いっていることは矛盾だらけ」と左派にも愛想をつかされても仕方がない。朝日は旧態依然たる中国・ソ連びいき労農派左翼、戦後進歩主義に立っているだけで、現在の左派がどういう視点に立っているか理解していないのではないか。
 反戦を掲げ、左派的な立場を堅持するなら、日本の軍拡を憂慮するとともに、中国の現在進行形の軍拡と覇権志向を同時に批判できないのでは話にならない。
 そして、集団的自衛権容認を含めた9条改憲に反対し、中国を良く思いたいのであれば、それこそ、現状の軍拡を「中華帝国の平和(パックスシニカ)の伝統と社会主義の理想に反する」ことを批判して、中国こそ憲法に9条を持ち、アジアの平和の先駆者となるべきことを主張すべきではないのか?

 しかも、朝日の社説は

>小泉政権でさえ、無用の摩擦を避けようと、首相が「中国脅威論はとらない」と言い、
>麻生外相が「中国の台頭を歓迎したい」と語るのとは大違いだ。

と指摘しているが、これは筋違いの批判だ。
 政府高官が外交辞令を使ったり、慎重な物言いになりがちだというのは当然のことで、それを野党である民主党と同列に論じるのは、それこそ政党外交の意味と価値をわかっていないのではないか?
 朝日はかつて社会党委員長の浅沼氏が訪中のときに「アメリカ帝国主義は日中両国人民の敵」と発言したことを「政府の政策に反する」と非難したことがあるのか?社会党が北朝鮮と親密だったときにそれを非難したことがあるのか?
 野党には野党の独自性がある。政府と反対のスタンスを取ることも、政府がいえない思い切ったことをいうことも野党の特性だ。その特性が世論から支持されなければ社会党のように万年野党になるだけだろうし、もし国民感情を代弁したものなら、民主党が成長する契機にもなるだろう(もちろん外交は日本の選挙ではそれほど大きな争点ではないが、中長期的には効果はある)。
 朝日が見間違えているのは、現在民主党を支持する層が、自民党支持層よりも「左」であるとしても、現在の日本の左派は、決して中国に甘い態度を取っているわけではないという点だ。
 むしろ左派、リベラル派が重視する人権、環境、平和・反戦、少数派擁護という観点から見れば、中国こそがアジアの中で最も問題が大きい国家であることは明白であって、まともな左派であれば中国に批判的になるものだ。むしろ中国に媚態を使っているのは、ODA利権のある自民党旧田中派系の腐敗政治家や、中国の実態を知らずに旧態依然とした「社会主義」幻想で中国を見ている旧左翼だけである。朝日新聞はいまだに前者を批判せず、後者に立脚している感があるが、そういうのは左派とはいえない。単なる時代錯誤である。
 それにおかしなことに、朝日新聞の社説は中国が脅威であることを否定する論拠を挙げずに、ただ「小泉や麻生ですらいっていない」と頓珍漢な主張をしているだけである。「中国脅威論」に対して、誰も中国は脅威ではないと証明できていない以上、「中国脅威論」を批判する朝日の社説は欺瞞と偽善である。

 第一、中国の覇権志向、軍拡は明白な事実である。中国はアジア諸国の中で唯一、10年以上にわたって一貫して軍事予算を増大させてきた国でもある。日本と韓国は最近は軍拡に転じたものの90年代には軍縮志向で、北朝鮮は財政そのものが火の車で、台湾は相変わらず軍縮を行ってい中で、中国だけが突出して軍拡志向である。
 これについて、中国外交部は13日の定例会見で、「日本は領土で中国の25分の1、人口で10分の1しかないのに強大な軍事費を維持している。日本の目的は何なのか」などと逆ギレ的な反論を行ったらしい(末尾参照)が、中国は日本よりも物価も人件費も10分の1以下という実態を棚に挙げて単純に「予算額」だけで見ても意味がない。たしかに日本は軍事大国になっている点は事実だが、急速に軍拡を行っている中国が批判する資格などない。
 また、13日の中国外交部定例会見で「歴史上、中国は他国を侵略したことはない」「中国は有史以来一貫して平和国家だった」などと主張した点については呆れるほかはない。さすがにこれを伝える共同電(末尾参照)も「中国は1949年の共産党政権誕生以来、50年の朝鮮戦争、62年の中印国境紛争、69年の中ソ国境紛争、79年の中越紛争など数多くの軍事紛争を経験している」と皮肉っているが、もっと重要な視点が抜け落ちている。それは東トルキスタン占領、59年チベット完全占領、である。
 「他国を侵略したことはない」というのも、そもそも侵略して占領すればそこは「自国領土に編入」してしまうから、理屈上は「他国」にならないから、そういえるだけで、それをいうなら、日本だってかつて侵略したところは「大日本帝国領」にしたのだし、大日本帝国と日本国は同じではないという観点に立つなら、日本は「他国を侵略」していないことになってしまう。中国の理屈は矛盾だらけである。

 また、日本の報道では、前原氏が中国で要人と会えなかったことについて、「中国脅威論」があだになったかのような書き方をしているが、それは牽強付会というべきだろう。要人と会えなかったのは、中国だけではなくて、米国でも韓国でもあえていないので、それは単に民主党の外交力の無さ、事前準備のお粗末さ、パイプの無さを示しているだけで、前原氏の強硬発言が相手の機嫌を損ねたからではない。いや、発言程度で機嫌を損ねるほうが、外交的に幼稚だというべきだろうし、相手の機嫌を損ねないように付き合うしかないという発想が、そもそも日本人的な「気配り」論であって、外国では通用しない。

 そういう意味では、前原氏が帰国後も一貫して、中国脅威論を主張しているのは、正しいといえる。私はそんなに前原氏は好きではないが、この点だけは支持できる。



「中国は有史以来の平和国家」 外務省副報道局長
http://www.sankei.co.jp/news/051213/kok114.htm

 中国外務省の秦剛副報道局長は13日の定例会見で、「歴史上、中国は他国を侵略したことはない」と言明、中国が有史以来一貫して平和国家だったと強調した。
 副報道局長は日本の政治家による「中国脅威論」に対し「中国人民は常に平和を尊ぶ伝統を持ってきた」と反論。逆に「日本は領土で中国の25分の1、人口で10分の1しかないのに強大な軍事費を維持している。日本の目的は何なのか」と批判した。
 中国は1949年の共産党政権誕生以来、50年の朝鮮戦争、62年の中印国境紛争、69年の中ソ国境紛争、79年の中越紛争など数多くの軍事紛争を経験している。(共同)


朝日新聞 12月11日付 社説
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#syasetu2

 前原代表は、民主党をどこへ導こうとしているのか。耳を疑う発言が米国発で届いた。
 いわく、原油や物資を運ぶシーレーン(海上交通路)防衛のうち日本から千カイリ以遠については
「米国に頼っているが、日本も責任を負うべきだ」。このため「憲法改正と自衛隊の活動・能力の拡大が必要になるかもしれない」。さらにミサイル防衛や、周辺事態になるような状況で「集団的自衛権を行使できるよう憲法改正を認める方向で検討すべきだ」と踏み込んだ。
 これまでの自民党政権も踏み出さなかった、米軍などとの共同軍事行動の拡大論である。「対米一辺倒」と批判する小泉政権をも飛び越えて、いっそう米国に寄り添う政策を示したことになる。
 代表になって初の訪米で、ワシントンのシンクタンクで講演した際の発言だ。前原氏は、自民党の国防族議員から「われわれよりタカ派」と言われることもある。日米同盟を重視する姿勢をアピールしたいと勇み立ったのかもしれない。
 「民主党の目指す国家像と外交ビジョン」と題した講演である。聴衆はこれが民主党の路線と受け止めたに違いない。
 だが実際には、前原氏の発言は党内の議論をなんら経ていない。あまりに唐突で突出した内容に、党内には戸惑いや反発が広がっている。ほくそ笑んでいるのは、憲法改正をにらんで「大連立」をもくろむ小泉政権の側だろう。
 前原氏は最近、「代表でいることが目的ではない。安保・憲法の議論はあとさき考えずにやる」と語ったことがある。党内の亀裂を恐れず、明快な主張でリードしていくという決意のように見える。
 それにしても、まずは党内で説明し、論議する努力は必要だ。代表になって間もなく3カ月がたつのに、前原氏が党内論議を試みた形跡はない。これでは独断専行と言われても仕方ない。
 もうひとつ、気になる発言が講演にあった。中国の軍事力は「現実的脅威」であり、「毅然(きぜん)とした対応で中国の膨張を抑止する」などと語ったことだ。小泉政権でさえ、無用の摩擦を避けようと、首相が「中国脅威論はとらない」と言い、麻生外相が「中国の台頭を歓迎したい」と語るのとは大違いだ。
 中国に対して弱腰と取られたくないのだろう。だが、肝心なのは威勢の良さではない。首相の靖国神社参拝でずたずたになってしまったアジア外交を、民主党ならこうしてみせるという、外交政策の対立軸を示すことである。
 韓国に関しても、竹島や教科書問題についての盧武鉉大統領の態度を手厳しく批判したこともある。その結果、希望した訪韓さえできない始末だ。日米同盟は何より大事。中国には毅然と対する。だから民主党が政権をとっても自民党と変わりませんよ、心配はいりません。そう米国に言いたかったのだろうか。ならば、自民党政権のままでいいではないか。

こんな記事見つけた→中国広州で「軍艦マーチ」放送(コメント可)

2005-06-22 22:42:24 | 中国
「軍艦マーチ」放送、抗議受け幼稚園が中止 中国・広州
2005年06月20日01時57分
 中国広東省広州市天河区の幼稚園が毎朝、日本の「軍艦マーチ」を流しているという情報が中国のインターネット上に流れ、抗議の書き込みが殺到している。同区教育局が調査に乗り出し、幼稚園側は軍艦マーチの放送を中止。幼稚園責任者が地元メディアに公開謝罪する騒ぎに発展している。
 この幼稚園の女性責任者は「抗日戦争は生まれる前の出来事で、日本の軍歌だとは知らなかった」と説明。園児も「この曲が好きだ」などと話していたという。幼稚園は指摘を受け、「曲を選ぶ際に文化的背景に注目する」ようにし、園内で流す曲をトルコ行進曲などに替えたという。(時事)
http://www.asahi.com/international/update/0620/002.html

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 「日本の軍歌がいかん」なんていったら、北朝鮮はどうなるんだろう?あそこの革命歌の7割は軍歌とそれをちょっと変えたものだといわれている。有名な「チョソンはひとつ」も軍歌をじゃっかんいじったものだし。
 「日本の軍歌だとは知らなかった」というのはすっとぼけた言い訳だろうが、>園児も「この曲が好きだ」などと話していたという<というのは、笑える。さすがに、軍国主義・愛国主義教育を行っている中国では軍歌の調子はフィットするのかも。
 まあ、少なくともこれからわかることは「中国」はひとつではなく、地域によって人によってばらばらで、対日観も大きく違うってことでしょう。そういう意味では、日本の右翼が中国の「反日」に敏感に反応するのも、ずれているといえる。
 ちなみに「トルコ行進曲」などに替えた、とあるが、モーツァルトとベートーベンのどっちのほうだろ?しかもそれって西欧帝国主義によるオリエンタリズムの典型であって、「トルコとの関係を悪くするもの」という批判が出てこないあたりも、なんだかお粗末な感じがする。誰も「インターナショナル」といわなかったのか。
 それから、最近朝日新聞は微妙に中国に批判的になっている感じがする。社説はまだまだ親中的だが、特集記事や普通の記事は、わりと批判的。ま、この記事自身は時事電だが、わざわざ採用するあたりが、よくわかっているというべきか。

強まる中国のネット規制、ポチMSも検閲に協力(コメント可)

2005-06-18 00:10:47 | 中国
「民主主義」入力禁止 米MS、ブログ検閲で中国に協力
2005年06月15日01時05分
 インターネット上で日記形式での情報発信ができるブログを開設する窓口となっている米マイクロソフト(MS)の中国語サイトで、特定の言葉を使った書き込みが禁止されていることが分かった。AP通信は13日、MSが中国政府に協力して検閲していることを明らかにした、と報じた。中国政府がウェブサイトを検閲していることは知られているが、MSのような有名企業が協力を認めたのは珍しい。
 このサイト「MSNスペース」で「民主主義」「自由」「人権」「台湾独立」などの言葉を入力すると、「禁止されている言葉です。消去して下さい」と表示される。
 同サイトは中国政府が出資している企業とMSの合弁企業が運営しており、MS運営の検索サイト「MSN中国」から接続できる。今年5月26日にサービスを始め、これまでに約500万件のブログが開設されたという。
 MSの広報担当者は「具体的にどんな言葉が禁止されているかはコメントはできない。検閲があっても、何百万の人が情報をやりとりするのを助けることになる」と話しているという。
 報道の自由を守るために活動している国際的な団体「国境なき記者団」はAP通信に対し、「巨大な情報企業が中国でビジネスをする際、そのような取り決めを結ぶのは一般的だ」と話した。
 中国は「インターネットニュース管理規則」(00年施行)で、国家の安全に危害を加え、政権の転覆を謀ったり民族の団結を破壊したりするニュースを制作、流布することを禁じている。こうした法律に基づき、ブログ上で特定の言葉を禁止する措置がとられているもの、とみられる。
 別のサイトでブログに書き込みをした経験を持つ20代の中国人女性は「政治的に微妙だったり、ひわいだったりする言葉はMSNだけでなく、たいていのブログで受け付けない」と話す。
 中国のネット人口は約1億人に上る。中国政府は目に見えない情報網を警戒しており、検閲やサイトの閉鎖などを通じて情報管理を強めている。
 デモ騒動のきっかけになったとされる反日サイトの場合、デモが暴徒化するまでは放置されていた。中国共産党がデモ鎮静の方針を決めたとたん、閉鎖されたり、過激な書き込みが削除されたりするサイトが相次いだ。ネット上の言論も、他メディアと同様に政府の統制下にある。
 香港紙などによると、ブログなどへの書き込みによるやりとりで政府の意思に反した世論が醸成されないように、政府の意見を代弁する「書き込み要員」の養成にも力を入れている、という。
 今回の問題の背景に、MSの中国戦略があると指摘する声もある。中国政府は最近、基本ソフト(OS)でのMSへの過度の依存状態から抜け出そうと、独自OSの開発や無償OS「リナックス」の活用に熱心だ。パソコン市場が膨らむ中国で「ウィンドウズ」の販売拡大を進めたいMSとしては「MSN事業で中国側と対立しにくいのではないか」(大手IT企業関係者)とみられる。
 ブログの影響力に、中国政府が警戒感を強めているとの指摘もある。個人で情報を簡単に発することができるブログは、記名での主張に対して読者コメントが瞬時に掲載される。匿名などの雑多な情報が書き込まれるネット掲示板に比べて求心力をもちやすい。米国では報道メディアとして力を強めており、ホワイトハウスや政党がブログのジャーナリストに記者章を発行している。ある大手ネット関係者は「中国が既存メディアと同様にブログも検閲するのは当然の流れだ」と言う。

http://www.asahi.com/business/update/0615/001.html



「ダライ・ラマ」も禁止/MS中国語版ブログ検閲
2005/06/15 09:01
 【ニューヨーク14日共同】米マイクロソフト(MS)による中国語版ブログ検閲問題で、ブログ上で使用できない言葉には「ダライ・ラマ」「(気功集団)法輪功」も含まれることが14日、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部パリ)の調べで分かった。
 記者団によると、「(天安門事件が起きた)6月4日」も使用できないほか、「中国」「汚職」の組み合わせも使えない。入力しようとすると「禁止されている表現が含まれているので、削除してください」とのメッセージが出る。
 記者団は「マイクロソフトは(中国)現地の法規に従ったと説明するが、法規が求めればネット上の反政府活動の情報も提供するのか」と非難する声明を出した。

http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050615000041

(以上引用終わり)--------------------------------------------------------------

ほかに考えられそうな禁句:

台湾正名、李登輝、陳水扁、(台湾)総統、反核、非核、平和、環境保護、愛護動物(動物愛護)、愛護熊猫(パンダ愛護)、立憲主義、選挙、公民投票(住民投票)、(民族などの)自決、社会運動、抗議、市民社会、愛、慈善、慈悲、社会福利(社会福祉)、平等、博愛、正義、社会民主、道徳、倫理、信頼、信用、誠意、誠実・・・。
みなさんも考えてください。

呉儀ドタキャン事件、まさに「scenario chinois」?(コメント可)

2005-06-11 05:13:41 | 中国
 少し前になるが、5月23日、日本を訪問中だった呉儀副首相が小泉首相との会見を急にキャンセルして帰国する事件が起こった。呉儀ドタキャン事件として知られ、BBSでは早速「呉儀る」などという単語も作られた。ここで訳がわからなかったのは、中国側の理由説明が一貫せず、そもそもドタキャンを極度に嫌がる日本人の憤激をさらに強めたことであった。
 「急な公務が発生したため」という中国政府の当初の釈明以降、一連の話を見て、わたしはフランス語でいう「un scénario chinois」という言葉を連想した。直訳すると「中国の台本」、実際には「わけのわからない言葉、でたらめな言葉」を意味するらしい。本来は典型的なオリエンタリズムの表現であるが、最近の中国の状況を見ていると、まさにぴったりだという気がする。ただ、このフランス語のイディオムはフランス人でも普通は知らないようだ。中型辞典にも載っていない。わたしがこの言葉を知ったのは、フランスのポップス歌手パトリシア・カース(Patricia Kaas、名前で見られるようにドイツ系)のヒット曲「Mon mec à moi(わたしのあいつ)」の歌詞に出てくるからなのだ(歌詞では定冠詞複数形)。
 ただ、ドタキャンそのものは、別に中国の十八番ではない。いや逆に中国政府はかつてならやらなかったのではないか。むしろ私は台湾では日常茶飯事だし、フィリピンでもよく出くわした。台湾についていえば、これまで台湾人の政治家の何人かが(現在政府上層部も含まれる)日本を訪問した際、突然理由もなく、予定をキャンセルして顰蹙を買ったらしい。台湾の政治家が頻繁にドタキャンすることが、台湾と日本との関係の阻害要因になっているという見方もあるくらいである。
 もっとも、台湾人の場合は、悪気がないというか、そのときの気分でまったく何の悪意もなく、屈託なくドタキャンしてしまう。理由はあまり説明しないが、もし説明されたらもっとむかつく理由だ。私が経験した中でも「今日は行けない。明日別の友人が来るから」と関係ない理由を言うのでさらに問い詰めたところ、何のことはない、気分的に行きたくなくなったというだけのことなのである。ただ、悪意はなく善意でやってしまうから、こちらも怒りようがない。もし怒っても、逆に「あなた、どうしてそんなに機嫌が悪いの?」と逆に慰められるだけである。日本人にとっては許しがたいが、それでも悪意がないことだけは伝わる。それが台湾人、あるいはフィリピン人の場合である。
 ところが、今回の呉儀ドタキャン事件では、中国には明らかに悪意があることがわかる。「緊急の公務で帰国した」というわりには、訪日後に予定されていたモンゴル訪問は着実に実行されたし、事前の要人との会食の場で北京から帰国命令を受けた呉儀は「急に戻ることになった」といっていたという話もあるから、明らかに小泉首相の顔に泥を塗る目的で行われたことは明白である。
 そもそもわたしは呉儀という人物は、虫が好かない。かつて大阪APECで会見があったときに貿易大臣だったかで来ていたが、態度が倣岸だったため、難詰した覚えがある。
善意で屈託がないのも始末に終えないが、しかし悪意でやってしまう神経もまた救いがたい。
 日本のマスコミの報道で推定されている本当の理由は、どうも小泉首相の靖国神社参拝発言への面当て、特に呉儀との会見で靖国参拝継続発言が出ると面子がなくなるからそれを避けるためのドタキャンということらしい。
 私自身は中国が反対しているかに関係なく靖国神社参拝は反対であり、靖国神社廃止論者ですらある。ただ、靖国神社をどう処理するかは優れて日本人内部の問題だとも一方では考えるから、中国が執拗に反対することも内政干渉で不当だと思う。これは反対する中国だけが不当なのではなく、積極的に賛成して靖国神社に参拝した台湾の右派独立派政党・台湾団結聯盟のような行動も内政干渉だということを意味する。
 それはともかく、結論からいえば、中国がそんなに靖国神社に言いたいことがあるなら、正々堂々と主張すればいいのであって、何もドタキャンという幼稚な手段をとる必要がない、ということである。
 ただし、私が最近とみに感じることには、中国の最近の日本や台湾に対するやり方がどんどん荒っぽく幼稚になっていて、これではわざわざ反感を強めることをしているようなものである。
 日本に対しては、江沢民時代に江が訪日の際、天皇との会食の場で歴史問題を執拗にあげつらったことから始まって、沖ノ鳥島周辺海域で海洋調査船などによる経済水域侵犯、それに対する「沖ノ鳥島は島ではないから経済水域は設定できない」という強弁、東シナ海における天然ガス田採掘、しかも日本側経済水域直下からの吸い上げ、原潜の沖縄領海侵犯、それに対する開き直り、反日暴動における在外公館や日本人関係建物への被害、それに対する正式の謝罪拒否など、あまりにも常軌を逸した言動が多い。
 私が属する左派陣営の間では、中国への幻想を抱いているものが多いから、こうした中国の荒っぽい挑発行為について「もとはといえば靖国参拝が悪い」とする見方もある。ただし、わたしは靖国神社廃止論者ながら、やはり中国には悪意があると考えるほうなので、中国が靖国ばかりをあげつらうのは、「A級戦犯合祀」という比較的まともな問題が重点なのではなくて、何か別の意図や企みがあると考える(中国内部の矛盾の転嫁、あるいは援助額の増額への駆け引きなど)。だから、中国側がいっている額面通りに「靖国が悪い」といっている左派の仲間たちは、あまりにもナイーブで、こんなことだから日本で左派はどんどん衰退する一方なんだろうと思うほうである。
 もっとも、日本政府も、タカ派や極右傾向が強まっているのは事実で、どうも中国を意味もなく挑発しようとして、靖国参拝に固執している部分もあると思う。中国と喧嘩し、中国を批判することはどんどんやるべきだと思う。しかし、どうせ中国を挑発するなら、チベット独立運動にもっとコミットするとか、あるいは台湾を目標としたミサイル配備への批判、中国国内の人権弾圧中止要求など、もっと人類全体の発展にとって意味のある、より普遍的な議題で挑発し、喧嘩を売るべきであって、たかだか明治になって作られた靖国神社(しかも日本近代国家建設に功労があった西郷隆盛すら祀られていない)を後生大事にしているのは焦点がぼけているとしか言いようがない。そういう意味では、日本のタカ派も、中国の一党独裁の統治者も、ピンボケでずれているという意味ではどっちもどっちだといえる。
 日本でも、台湾でも、このごろめっきり反中派が増えた。親中派は少数である。しかも反中の中身は、中国が共産党だから嫌いというよりも、むしろ中国政府の大人げなさやお粗末さに呆れている、というのが動機になっているようだ。
 私自身は反中派を自他ともに認めているわけだが、だが歴史を振り返った場合、これだけ反中が増えて、しかも中国が尊敬されず馬鹿にされるようになったというのは、珍しいことだと思う。
 わたし自身は昔から親中派は好きにはなれない(かといって親台派なら無条件に好きなわけでももちろん、ない)。しかし、かつて1970-80年代の日本には親中派とされる人がかなり多かったという記憶がある。それは日本人自身が中国社会の実態に無知だったということもあろう。80年代以前の中国は今よりももっと閉鎖的な社会だったから、実態をありのままに理解できなかったのは事実だ。しかし、真の問題は中国政府上層部の質が低下したことが大きいのではないか。
 そう思って、よくよく毛沢東、周恩来、あるいは80年代のトウ小平にいたるまで、日本の親中派から賞賛され、尊敬された人物と、その後の江沢民と現在の胡錦涛などとの顔つきを比べると、どうも根本的に違うことがわかる。あるいは日中関係で中国側の窓口には、かつては長い日本留学経験を持ち日本をよく理解していた廖承志、郭沫若(周恩来自身もそうだ)らがいた。わたしは全体主義国家の権力層など好きになれないが、しかし、当時あれだけ多くの日本人が彼らの虜になったことにはそれなりの理由があったのかも知れない。廖承志、郭沫若の日本留学時代の学生服姿の写真を見たことがあるが、彼らには日本人の心を魅了する何かがあったのに違いない。今の台湾の李登輝が日本人を虜にしているのと同じ、いやそれ以上の魅力があったのではないか。ひとことでいえば人物だったということだろう。
 それに引き換え、今の中国側のいわゆる知日派の顔ぶれを見ると、なるほど日本語はぺらぺら話せるに違いないが、何か根本的で決定的なことが欠けているように思える。たとえば駐日大使の王毅。外務次官時代にはそれなりに開明的な人物との評判があったが、中日大使になってからこの人の評価は「頭の回転は速い」という以上のものを聞いたことがない。李登輝が昨年末に訪日した際に、「李登輝は戦争メーカー」などと発言して顰蹙を買った。最近では靖国問題に関連して「首相などが参拝しないという君子(紳士)協定があった」と中国語そのままの表現を使って、日本語能力の限界を見せ付けた。
 また、参事官の黄星原も反日暴動に対する日本の右翼のこれまた幼稚な報復のいたずらに対して「これはテロ」などと偉そうにまくしたてて顰蹙を買った。
 最高指導者の胡錦涛そのものがまた、小物ぶりが否めない。顔つきは普通の小役人の顔つきである。もちろん、あの顔で「チベット自治区」書記時代にはチベット僧侶を多数串刺しにしたほか、チベット人を数万人虐殺したという図太い神経の持ち主なのだが、しかし米国資本に対しては媚を売り、笑顔を振りまいているのを見ていると、単に弱いものいじめしか能がない小心者であることがわかる。
 毛沢東は専制君主であったし、大躍進や文革などで大量虐殺を行った人物であったが、それでも長征、国共内戦では国民党ファッショ勢力と戦ったし、朝鮮戦争などでは米国相手にも戦う姿勢を示したわけで、「弱いものいじめ」ばかりが能ではないことはわかる。気迫や気概のようなものがあったのだろう。
 もちろん、日本でも台湾でも韓国でも、政治家はどんどん小粒になっている。だが、それは民主主義国家ではおかしなことではない。主権在民で国民に決定権がかなりゆだねられている国家であれば、英雄は必要ないし、政治家はむしろ小粒のほうがいい。
 ところが中国は民主主義国家ではない。だが、政治家だけはどんどん小粒になっていく。そうした齟齬が、中国政府がどんどん幼稚になっている原因になっているのではないか。
 しかも人間が小粒で小心者であるということは、政策もどんどん硬直化し、創意工夫にあふれる斬新なアイデアや政策は出てこないことを意味する。中国にも海外留学帰国組は増えていて、日本や台湾に対してもそれなりにまともな思考ができる人間がいるだろうに、それがまったく政策に反映されない。官僚化が進み、大胆かつ新たな発想が通用しないのだ。
 だから、日本と台湾に対する政策がどんどん融通が利かず、時代錯誤かつ硬直化したものとなる。しかもやはり停滞気味の日本はともかく、台湾はどんどん進歩し、人民が賢くなっていく一方だから、中国の硬直した政策と発想を続ければ続けるほど、中国はますます台湾住民から嫌われ、嘲笑されることになる。これは、台湾ネーションおよびナショナリズムの形成にはきわめて有利な加速要因となって私のような立場(台湾建国左派)としてはある面では喜ばしいが、しかし、アジア太平洋の地域の安全と繁栄という側面で見ると不幸なことなのである。
 台湾の民主化の定着と人民の意識の高揚を見れば、もはや中国に台湾を併合する能力と可能性はまったくないと言ってよい。台湾は今後このままの方向に進み、独立国家らしい中身を充実させ整えていけば、早晩国際的に認知されるであろう。
 中国は本来なら、台湾の発展の成果を評価し、積極的に国家として承認し、友好関係を結び、ひいてはチベットなどにおける高度な自治や自決権を認め、さらに日本や韓国などと共同で、アジアの平和と安全を目指すようにするべきなのだ。また、そうしてこそ中国はますます繁栄しそうなものなのに、今の中国政府はどうしてもそうした前向きな発想に立てないようだ。実効支配している中国大陸すらも満足に繁栄させられないで、歴史や面子にこだわって台湾に執着する発想を持っているようでは、中国は早晩アジアの中で孤立し、自滅するだけだろう。
 最近の中国政府指導部のていたらくを見ると、フランス語の「un scénario chinois」はまさにぴったりだといえるだろう。