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前原民主党代表「中国は脅威」は正論

2005-12-17 19:10:36 | 中国
 民主党代表の前原氏が代表就任後の初めて訪米し、12月10日にワシントンのシンクタンクで講演した際のいくつかの発言が物議をかもした。
 集団的自衛権のための憲法改正を主張し、中国は現実的脅威だと指摘したことである。そのうち、私は、前者は賛成できないが、中国は現実的脅威だとする指摘は正しいし、もっと主張していいと思う。
 これについて朝日新聞11日付け社説(末尾参照)は、改憲批判をしつつ、中国脅威論についても批判しているが、これは矛盾している。集団的自衛権など日本が軍拡を志向することに待ったとかけるのであれば、中国の軍拡を脅威と認識しないのは、明らかに二重基準である。これでは「朝日社説氏は中国に甘いだけで、いっていることは矛盾だらけ」と左派にも愛想をつかされても仕方がない。朝日は旧態依然たる中国・ソ連びいき労農派左翼、戦後進歩主義に立っているだけで、現在の左派がどういう視点に立っているか理解していないのではないか。
 反戦を掲げ、左派的な立場を堅持するなら、日本の軍拡を憂慮するとともに、中国の現在進行形の軍拡と覇権志向を同時に批判できないのでは話にならない。
 そして、集団的自衛権容認を含めた9条改憲に反対し、中国を良く思いたいのであれば、それこそ、現状の軍拡を「中華帝国の平和(パックスシニカ)の伝統と社会主義の理想に反する」ことを批判して、中国こそ憲法に9条を持ち、アジアの平和の先駆者となるべきことを主張すべきではないのか?

 しかも、朝日の社説は

>小泉政権でさえ、無用の摩擦を避けようと、首相が「中国脅威論はとらない」と言い、
>麻生外相が「中国の台頭を歓迎したい」と語るのとは大違いだ。

と指摘しているが、これは筋違いの批判だ。
 政府高官が外交辞令を使ったり、慎重な物言いになりがちだというのは当然のことで、それを野党である民主党と同列に論じるのは、それこそ政党外交の意味と価値をわかっていないのではないか?
 朝日はかつて社会党委員長の浅沼氏が訪中のときに「アメリカ帝国主義は日中両国人民の敵」と発言したことを「政府の政策に反する」と非難したことがあるのか?社会党が北朝鮮と親密だったときにそれを非難したことがあるのか?
 野党には野党の独自性がある。政府と反対のスタンスを取ることも、政府がいえない思い切ったことをいうことも野党の特性だ。その特性が世論から支持されなければ社会党のように万年野党になるだけだろうし、もし国民感情を代弁したものなら、民主党が成長する契機にもなるだろう(もちろん外交は日本の選挙ではそれほど大きな争点ではないが、中長期的には効果はある)。
 朝日が見間違えているのは、現在民主党を支持する層が、自民党支持層よりも「左」であるとしても、現在の日本の左派は、決して中国に甘い態度を取っているわけではないという点だ。
 むしろ左派、リベラル派が重視する人権、環境、平和・反戦、少数派擁護という観点から見れば、中国こそがアジアの中で最も問題が大きい国家であることは明白であって、まともな左派であれば中国に批判的になるものだ。むしろ中国に媚態を使っているのは、ODA利権のある自民党旧田中派系の腐敗政治家や、中国の実態を知らずに旧態依然とした「社会主義」幻想で中国を見ている旧左翼だけである。朝日新聞はいまだに前者を批判せず、後者に立脚している感があるが、そういうのは左派とはいえない。単なる時代錯誤である。
 それにおかしなことに、朝日新聞の社説は中国が脅威であることを否定する論拠を挙げずに、ただ「小泉や麻生ですらいっていない」と頓珍漢な主張をしているだけである。「中国脅威論」に対して、誰も中国は脅威ではないと証明できていない以上、「中国脅威論」を批判する朝日の社説は欺瞞と偽善である。

 第一、中国の覇権志向、軍拡は明白な事実である。中国はアジア諸国の中で唯一、10年以上にわたって一貫して軍事予算を増大させてきた国でもある。日本と韓国は最近は軍拡に転じたものの90年代には軍縮志向で、北朝鮮は財政そのものが火の車で、台湾は相変わらず軍縮を行ってい中で、中国だけが突出して軍拡志向である。
 これについて、中国外交部は13日の定例会見で、「日本は領土で中国の25分の1、人口で10分の1しかないのに強大な軍事費を維持している。日本の目的は何なのか」などと逆ギレ的な反論を行ったらしい(末尾参照)が、中国は日本よりも物価も人件費も10分の1以下という実態を棚に挙げて単純に「予算額」だけで見ても意味がない。たしかに日本は軍事大国になっている点は事実だが、急速に軍拡を行っている中国が批判する資格などない。
 また、13日の中国外交部定例会見で「歴史上、中国は他国を侵略したことはない」「中国は有史以来一貫して平和国家だった」などと主張した点については呆れるほかはない。さすがにこれを伝える共同電(末尾参照)も「中国は1949年の共産党政権誕生以来、50年の朝鮮戦争、62年の中印国境紛争、69年の中ソ国境紛争、79年の中越紛争など数多くの軍事紛争を経験している」と皮肉っているが、もっと重要な視点が抜け落ちている。それは東トルキスタン占領、59年チベット完全占領、である。
 「他国を侵略したことはない」というのも、そもそも侵略して占領すればそこは「自国領土に編入」してしまうから、理屈上は「他国」にならないから、そういえるだけで、それをいうなら、日本だってかつて侵略したところは「大日本帝国領」にしたのだし、大日本帝国と日本国は同じではないという観点に立つなら、日本は「他国を侵略」していないことになってしまう。中国の理屈は矛盾だらけである。

 また、日本の報道では、前原氏が中国で要人と会えなかったことについて、「中国脅威論」があだになったかのような書き方をしているが、それは牽強付会というべきだろう。要人と会えなかったのは、中国だけではなくて、米国でも韓国でもあえていないので、それは単に民主党の外交力の無さ、事前準備のお粗末さ、パイプの無さを示しているだけで、前原氏の強硬発言が相手の機嫌を損ねたからではない。いや、発言程度で機嫌を損ねるほうが、外交的に幼稚だというべきだろうし、相手の機嫌を損ねないように付き合うしかないという発想が、そもそも日本人的な「気配り」論であって、外国では通用しない。

 そういう意味では、前原氏が帰国後も一貫して、中国脅威論を主張しているのは、正しいといえる。私はそんなに前原氏は好きではないが、この点だけは支持できる。



「中国は有史以来の平和国家」 外務省副報道局長
http://www.sankei.co.jp/news/051213/kok114.htm

 中国外務省の秦剛副報道局長は13日の定例会見で、「歴史上、中国は他国を侵略したことはない」と言明、中国が有史以来一貫して平和国家だったと強調した。
 副報道局長は日本の政治家による「中国脅威論」に対し「中国人民は常に平和を尊ぶ伝統を持ってきた」と反論。逆に「日本は領土で中国の25分の1、人口で10分の1しかないのに強大な軍事費を維持している。日本の目的は何なのか」と批判した。
 中国は1949年の共産党政権誕生以来、50年の朝鮮戦争、62年の中印国境紛争、69年の中ソ国境紛争、79年の中越紛争など数多くの軍事紛争を経験している。(共同)


朝日新聞 12月11日付 社説
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#syasetu2

 前原代表は、民主党をどこへ導こうとしているのか。耳を疑う発言が米国発で届いた。
 いわく、原油や物資を運ぶシーレーン(海上交通路)防衛のうち日本から千カイリ以遠については
「米国に頼っているが、日本も責任を負うべきだ」。このため「憲法改正と自衛隊の活動・能力の拡大が必要になるかもしれない」。さらにミサイル防衛や、周辺事態になるような状況で「集団的自衛権を行使できるよう憲法改正を認める方向で検討すべきだ」と踏み込んだ。
 これまでの自民党政権も踏み出さなかった、米軍などとの共同軍事行動の拡大論である。「対米一辺倒」と批判する小泉政権をも飛び越えて、いっそう米国に寄り添う政策を示したことになる。
 代表になって初の訪米で、ワシントンのシンクタンクで講演した際の発言だ。前原氏は、自民党の国防族議員から「われわれよりタカ派」と言われることもある。日米同盟を重視する姿勢をアピールしたいと勇み立ったのかもしれない。
 「民主党の目指す国家像と外交ビジョン」と題した講演である。聴衆はこれが民主党の路線と受け止めたに違いない。
 だが実際には、前原氏の発言は党内の議論をなんら経ていない。あまりに唐突で突出した内容に、党内には戸惑いや反発が広がっている。ほくそ笑んでいるのは、憲法改正をにらんで「大連立」をもくろむ小泉政権の側だろう。
 前原氏は最近、「代表でいることが目的ではない。安保・憲法の議論はあとさき考えずにやる」と語ったことがある。党内の亀裂を恐れず、明快な主張でリードしていくという決意のように見える。
 それにしても、まずは党内で説明し、論議する努力は必要だ。代表になって間もなく3カ月がたつのに、前原氏が党内論議を試みた形跡はない。これでは独断専行と言われても仕方ない。
 もうひとつ、気になる発言が講演にあった。中国の軍事力は「現実的脅威」であり、「毅然(きぜん)とした対応で中国の膨張を抑止する」などと語ったことだ。小泉政権でさえ、無用の摩擦を避けようと、首相が「中国脅威論はとらない」と言い、麻生外相が「中国の台頭を歓迎したい」と語るのとは大違いだ。
 中国に対して弱腰と取られたくないのだろう。だが、肝心なのは威勢の良さではない。首相の靖国神社参拝でずたずたになってしまったアジア外交を、民主党ならこうしてみせるという、外交政策の対立軸を示すことである。
 韓国に関しても、竹島や教科書問題についての盧武鉉大統領の態度を手厳しく批判したこともある。その結果、希望した訪韓さえできない始末だ。日米同盟は何より大事。中国には毅然と対する。だから民主党が政権をとっても自民党と変わりませんよ、心配はいりません。そう米国に言いたかったのだろうか。ならば、自民党政権のままでいいではないか。
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