月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「ブラックサイト」(「Untraceable」)

2008年07月01日 | ◆ハ行&バ・パ・ヴ行

久々のダイアン・レイン主演の映画。髪を短く切りサイバー犯罪を取り締まるFBIのThe Federal Cyber Crimes Task Force、サイバー犯罪課とでもいうのだろうか、そこの捜査官に扮し、とにかくPCの前にいるシーンの多いこと!

娘の世話と家事を母親に任せ、夕方から翌朝まで勤務先の部署に詰めっ放しの夜勤。帰宅後に娘を学校に見送った後に就寝するという昼夜逆転の勤務状態ながら、ベッドの上でもノートパソコンを開いて眉間に皺を刻む。


それというのも、「Kill with me.com」というトンでもないサイトで殺人の実況放映している犯罪者がいるからだ。



通常のネット犯罪者、詐欺などを働いたり相手の情報を盗んで現金を引き出したりというネット犯罪に対しては凄腕の捜査官らしく、相手に偽情報を掴ませダミーカードを餌にして逮捕に至るまで実に手際よくPC操作も鮮やかである。相手のPCのIPアドレスをキャッチした次の瞬間には、相手の住まいや個人情報が即座にPC上に表示されるところなど、いかにもFBIサイバー犯罪課という気もするのだけれど、この「Kill with me.com」というサイトの管理人のIPアドレスは、untraceableつまり、追跡することが出来ない。



というのも、IPアドレスが複数のサイバーとミラーサイトによってコンスタントに変わり、しかもサーバーレコードも常時書き換えてニューアドレスを常時生成。さらに世界中のサイバーを渡り歩くからだ。その「Kill with me.com」のドメインもサーバーも外国であるため(映画ではロシアということになっていて)FBIの捜査権限が及ばない・・・・・

最初の犠牲となったのが猫だったせいか、愛猫家の私としては許せない!という思いになったものだが、次の犠牲者は、好きなアイスホッケーのチケットをネット上で知り合った見知らぬ相手から譲ってもらうため待ち合わせ場所の出かけ、そこで拉致されウェブサイトの殺人ショーの犠牲者となった。



サイトにアクセスする人間が増えれば増えるほど、男の体に注入される凝固剤の量が増え、やがて悶え苦しんで死に至る様子がウェブ上で実況生放送される。なんだか、映画「1300万ドルの女」を思い出す・・・・。匿名性のネットゆえに人間の覗き見趣味はとどまるところを知らずアクセス数は激増し・・・・やがて拉致された男は衆目の中で死に至る。りっぱな殺人だが、アクセス数の増加が点滴の注入量の増量にリンクするプログラムになっているのが本当なら、殺した犯人は誰ということになるのだろう。

記者会見でこのサイトにアクセスしないようにと語る彼女の上司は、あまりに無能な官吏のステロタイプだが、いくらアクセスしないように、「Kill with me.com」にアクセスするということは殺人に加担するのと同じだと道徳的に訴えるが、ナンセンスもはなはだしい。

そこのサイトでは殺人のリアルタイムショーが見られるからアクセスするなと言われたら、アクセスしたくなるのがネット住人というものである。人間からその人の「名前」を取り除いたとき、もうその人間は社会的に存在しないも同じなのだ。そうなったとき人間というものがいかに無責任でおぞましいものか・・・・ネットの匿名性の怖さを、この捜査責任者は一顧だにしない頭の悪さである。

かくしてアクセスはPCだけじゃなく携帯からも増え続ける。
衆目の中で殺された男の遺体が、ネット規制法案に反対している議員の車の中に遺棄されたところから、映画はやっと展開を始めていくのだけれども、次の犠牲者は鉄道マニア。これもネットで知り合った相手に巧みに誘い込まれて自宅まで鉄道の模型を見せてもらいにやってくる。マニアの間では貴重な模型なのだろうが、そうしたことのために会ったこともない相手の指定する場所に一人でのこにこ出かけていく感覚はあまりに稚拙である。

この男も犠牲者となる。
ネットで公開された悶死する直前の男の唇が住所を口にしていることに気づいたFBIの捜査官たちはその住まいに急行するが、中はただの留守宅だった。この場面は、映画「羊たちの沈黙」でラストFBI捜査官たちが逮捕に向かった先がもぬけの殻だったシーンと酷似しているところをみると、監督はどうもその辺をかなり意識しているのだろう。作品が第二の「羊たちの沈黙」、あるいは第三の「サイコ」となるべく狙っているに違いない。

犯人は当然サイコながら、このサスペンスの不気味さは、今日にでも起こりうる新手のサイバー殺人ショーが「映画」と「ウェブ上」という重層ヴァーチャルにおいて展開されること、その不気味さにあるといえるのではないか。

ネタバレになってはいけないので、内容についてはここまでにしますが、犯人は実に用意周到で隙がない。ハッカー行為が朝飯前というくらいにネットに通じているだけではなく、化学や薬品についての知識も実に豊富だ。そして、当然イカレテイル。
この犯人のオリジンたるIPアドレスを辿れないまま、またしても次の事件は起こる。FBIはどのようにして犯人を追跡していくのか、想定外の展開に目が離せない映画です。後日改めてこの映画全般についての感想を書こうと思いますが・・・

ダイアン・レイン久々の主演映画ですが、今日のネット犯罪&近い将来のネット犯罪を先取りして見せてくれているかのような不気味な映画のせいか、始終眉間に皺を刻んだ老け顔になっている彼女の顔色は悪く、体当たり的演技なだけにその表情も真に迫っていて、それがまた怖さを増していきます。
美人というのは、中高年になって皺を刻むほどに深刻な表情をすると、犯罪がおぞましいゆえにいっそう酷いというか映画も怖いものになるという証左ですね。そういえば、「羊たちの沈黙」でもジョディ・<WBR>フォスターは同じ表情してましたね。ただ、あちらは若かったから、復元力もあったけど・・・・。

監督以下のスタッフとキャストについては、末尾でご紹介するサイトをご覧下さい。



公式サイト⇒http://www.sonypictures.jp/movies/untraceable/index.html

 


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