ミュージカル: 「モーツァルト!」

脚本: ミヒャエル・クンツェ
音楽: シルヴェスタリー・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション: ウィーン劇場協会
演出: 小池修一郎

モーツァルト: 古川雄大
コンスタンツェ: 木下春香
コロレド大司教: 山口祐一郎
レオポルド: 市村正親
アマデ: 設楽乃愛、他

指揮: 宇賀神典子
オーケストラ: 東宝ミュージック、ダット・ミュージック
(2021.5.26 帝国劇場)

モーツァルトの生涯を、コロレド大司教や父レオポルドとの確執を中心として描いた、1999年初演、2002年日本上陸のウィーン発のミュージカル。私はこのようなミュージカルの存在も、現在上演されていることも知らなかったが、家人の友人にミュージカルの大ファンがいて想定外の鑑賞となった。

作曲者はミュージカル「エリザベート」をも作曲した人らしく、音楽の流れが自然で聴きやすい。ただ、私は筋書きの方に関心があったから、あまり音楽は熱心には聴いていない。悪くはなかったと思う。モーツァルト自身の音楽は、ほとんど使われていない。
筋書きでは、コロレド大司教やレオポルドを軸としたのは、モーツァルトの伝記的な作品としては妥当なところだろう。最後にフランス革命が起こったことを喜ぶ民衆の場面の後に、あたかもそれに関連して書かれたように「魔笛」の作曲の場に移行するのは良かったと思う。モーツァルトの生涯に関しては、昔、フランス革命に言及した記録が残されていないという本の記述から、あまり関心がなかったというような捉え方が一般的と思っていたからだ。「魔笛」をフランス革命の落とし子のように描いた点は共感できた。
しかしそれであればこそ、最後のレクイエムの作曲依頼からは、事実関係が明らかにされているとはいえ、「魔笛」の人気に不安を感じた政府当局による毒殺なのではとの妄想を持った。

オーケストラは、せっかくの実演なのに全体がカバーで覆われていて残念。歌は全体的に良かったが、とくにコロレド大司教はハリのある高音部が印象に残った。アマデは、少年時代のモーツァルトを思わせる黙役で、終始モーツァルトと一緒にあって、音楽的才能を象徴するかのように作曲のペンを横で走らせる。ピリッとした所作が、なかなかの存在感だった。

会場は満員で、大半が女性。この人たちは古川クンの応援団にしろ、夫婦で鑑賞するということがないらしい。こういう作品が毎日上演されていて、それが満席になるということにある種の感慨を持った。コロナでの緊急事態宣言の影響でこの2日後からは公演は中止になったから、観れたのは非常にラッキーだった。

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