ロンドンのバレエ: ドリーブ「コッペリア」

 

スワニルダ: リァーン・ベンジャミン
フランツ: カルロス・アコスタ
コッペリウス: ルーク・ヘイドン
指揮: ニコレ・モルドヴェヌ
コベント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団

 庶民的な感じのする公演で、美男美女のスターを求める向きには向かないが、音楽は非常に楽しめる。ロンドンが、スカラ座の恐ろしくレベルの高いバレエに対抗するのは無理だから、こういう庶民的な路線は独自の居場所を確保する意味でいいと思う。

「コッペリア」は、フランス・ロマンティック・バレエを代表する作品だ。
まずは素晴らしいのが、モルドヴェヌの指揮だ。この人はルーマニア生まれ、バレエ専門の人ではないようだが、初めて名前を聞く。第1曲マズルカで、歯切れのいいリズムが何とも明るい雰囲気を作り出して、思わず楽しくなる。そして第2曲のスワニルダのワルツは、しなやかなコベント・ガーデンの弦と、品のいい流れるような音楽作りがこの上もなく美しく、うっとりとしてしまう。このDVDは、この1曲だけでも買う価値がある。その他の曲でも、細かなところまで隅々とよく振れていて、この公演の成功の立役者と言ってもいいだろう。

コベント・ガーデンの管弦楽団も、いつもの力感が不足しがちな欠点は特に感じられず、長所であるしなやかさが前面に出て、異例とも言えるような満足すべき出来だ。私はかつて、この劇場でプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」を観たことがあるが、オペラの時とはメンバーがまるで違うのではないかと思ったほどオケに失望した経験がある。ここでのオケの出来は、オペラを上回るようでさえある。

主役のスワニルダは、吉田都の急遽の代役でギリシャ出身という。フランツはキューバ人。国際色豊な配役で、素人から見て可も不可もないが、舞台やバックの踊り手やらをも含めた全体の明るい雰囲気はとてもいいと思う。

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