ガーシュウィン : 「パリのアメリカ人」

ジェリー:松島勇気
リズ:石橋杏実
アダム:俵和也
アンリ:小林唯、他

演出・振付:クリストファー・ウィールドン
プロデューサー:スチュワート・オーケン
劇団四季公演
(7月2日、神奈川芸術劇場) 

 久々のミュージカル。さらっとした清涼飲料のような爽やかな印象を残す公演。よく「歌って、踊って、演技して」と言われるが、本公演は踊りに重点が置かれたことが大きな特徴だ。

ガーシュウィンの50曲のミュージカルに「パリのアメリカ人」という作品はない。もともとはMGM映画が、同名の管弦楽曲を基に、ガーシュウィンの歌を集めてジーン・ケリー主演のミュージカル映画を作ったのが起源だ。これはアカデミー作品賞などを受賞した名作だが、最近、これを舞台用に作り替え、歌もいくつかを差し替えて、世界的にヒットしている。ストーリーは、ベースは共有しているものの、時は終戦直後のパリ、主人公たちはこれから人生を切り開こうというより若い世代に設定が変えられている。
画家志望のジェリーは、リズを一目見て好きになるが、リズは、ユダヤ人の自分を匿ってくれた一家にいた歌手志望のアンリの求愛を断れない。ピアニスト志望のアダムもまた、リズに惹かれている。

バックは録音音源を使っているので、ほとんどストレート・プレイを観ているようだった。音響がよくセリフが明瞭、翻訳とは思えないほど自然な日本語で、劇として非常に楽しめた。最後は映画と同じく管弦楽曲「パリのアメリカ人」による踊りになるが、映画と違いストーリー上の必然性があるので、ある種のクライマックス感を味わえるようになっている。

もとより「ポーギーとベス」の偉大な作曲家ガーシュウィンは影を潜めていて、舞台は明るい。毎日の公演だから広い劇場全体が満員とはいかないが、舞台近くに集まった観客にとっては前後左右満員。いつもは多くの熟年たちの間に若い人たちがいくらかいるという演奏会に慣れているが、今回はこの関係が逆だ。カップルも多く、たまたま場所と時間を共有したこれらの人たちが、みんな幸せになればいい、というような月並みなことを思った。

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