クラシック音楽のある生活

クラシック音楽を生活の糧としている私が出会った演奏会、CDやDVDなど印象に残ったことを紹介をしていきます。

マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(カラヤン:指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団他)

2008-04-20 23:04:46 | オペラCD



 「『カヴァレリア』は磨かれていないが、正真正銘のダイヤモンドだ」というのは、私がこのオペラを聴くときに必ず思い出す言葉だ。このオペラの初演は、イタリア・オペラ史の事件だった。若干25歳の青年マスカーニの作曲したこの1幕もののオペラは、熱狂的な中で60回ものカーテン・コールを受けたという。

オペラはシチリアの片田舎、身寄りのない女性サントゥッツァと、気晴らしにサントゥッツァを誘惑したものの、今はアルフィオの妻になっているローラが忘れられない若者トリッドゥの話だ。前奏曲で静かに始まってから、最後に舞台裏でアルフィオと決闘してトリッドゥが殺され、その知らせにサントゥッツァが呆然とするところまでの約80分、物語は直情的に一気に進行する。このオペラは確かに荒削りだが、「ママも知るとおり」を始めとした美しく心に残るメロディーに溢れていて、真実の人間感情とドラマが描かれている。台本も上出来だ。

この演奏の特徴はまず主役を歌う、フィオレンツァ・コッソット(メゾ・ソプラノ)とカルロ・ベルゴンツィ(テノール)のコントロールの効いた近代的な歌唱による歌の競演だ。特にコッソットの声は情感がこもっている。そして全身筋肉質のような、ミラノ・スカラ座管弦楽団の強靱な音響(特に金管)。そして当然ながら、80分のドラマを感情の襞を織りなして息つく間もなく進める、全体の主役であるカラヤンの指揮。
歌劇場のオーケストラとしては、東の横綱がウィーンとすれば、西の横綱はこのスカラ座管弦楽団だろう(イタリアの中では、ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団と並んで双璧だ)。もともとセラフィンの指揮によるカラスの「ノルマ」でのステレオ録音で、このオケがドラマの表現力という点で尋常でない実力を持っていることは知っていた。そして私は実際にスカラ座でこのオケを聴いて、そのぎっしりと詰まった音の力強さに、まさに「歌劇場のオケとしては世界最高クラス」との確信を得た。難点はピアニシモがもう少しきれいに出れば、と言うところだろうか。

そしてカラヤンの指揮。私はベートーベンやブラームスを特にカラヤンの指揮で聴きたいとは思わないが、カラヤンならではと思う分野が3つあって、それは①リヒャルト・シュトラウス、②シベリウス、そして③イタリア・オペラ、だ。このCDもカラヤンの1960年代を代表する名盤で、聴くたびに感動する。ただCD化に際しての音は、録音時期を考えてももう少し高音部とかに透明感があってもいいように思う。