世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ドラゴン・スナイダー

2012-10-12 07:17:50 | 画集・ウェヌスたちよ
ドラゴン・スナイダー、30歳。

友人のアーヴィン・ハットンと、電話一本から始めた出版社が出した、第一作目の本、「燃える月」(ジョン・レインウォーター著)が、思いがけず爆発的ヒットを打ち、小さなビルの三階のフロアに会社を構えたころ。事務員も一人雇った。

アーヴィンは、この小さな出版社「ドラゴン社」(ドラゴンは、I&D社がいいと言ったのだが、アーヴィンが言い張って譲らなかったらしい)ができてからと言うもの、水を得た魚のように、活動を始め、まずはシノザキ・ジュウの最新詩集を出版し、次にレインウォーターの二作目の出版のための準備に入った。そして今彼は、飛行機に乗って、シノザキ・ジュウの住んでいる国に赴き、向こうの出版社と什に直接会いに行っている。前回の出版では書類のやりとりだけで契約を終えたが、今度は実際に詩人本人に会いに行きたかったのだそうだ。

一応会社では、ドラゴンが社長、アーヴィンが専務ということになっている。だがほとんどの仕事はアーヴィンがやっていると言っていい。ドラゴンの仕事は、まあおもに事務的なことと、時折アーヴィンの指示で、作家や画家と難しい交渉をしにいくことだ。どんな難しい相手でも、ドラゴンが行くと、なぜかうまくいくらしい。

ドラゴン・スナイダーの本格的な活躍は、彼が四十代になってからのことになる。そのときのことは、残念ながら物語には出てこない。なぜというと、作者には、詩的ファンタジーは書けるものの、醜い人間模様を赤裸々に書かねばならない企業小説やハードボイルドなどはとても書けないからだ。

しかし、スーツを着るとかっこいいね、ドラゴン。
初めて彼に会う人は、しばらく彼を見て息をのむそうだ。そして三人に一人の割合で、こういうそうだ。
「なんで君、ハリウッドにいかなかったの?」


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