アルブレヒト・デューラー、16世紀ドイツ、北方ルネサンス。
なかなか良い目をしている。これは本物の男である。名声を呼んだ富も、かなりの男前である美も、自分本来のものだ。この男は正しい人生の修業をして、尊い画業を積んだのである。しかしこれだけ探して、優良な本物はほとんどこれとトルストイだけだというのが、人類の現実なのだ。人間は本当の自分から逃れるために、あらゆるあがきをしているのである。画家がこの絵をイエスに似せて描いているというのもおもしろい。なぜならイエスは、人類にとって、人類の罪と本当の自分自身を象徴する存在だからである。