世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

妖精のつまびき

2008-10-03 07:09:50 | フェアリィウィスパー

時代の魔、ということばがあります。それは、その時代時代に、人間の心の中に吹き荒れていた、ビーストの呪いの嵐だそうです。

たとえば戦争の時代は、ビーストは大挙して人類の心の中を荒らしまわり、「敵は馬鹿だ」「敵は醜い」「敵が殺そうとしている」とふきこみまくります。人間は心の中のその声を信じ込み、おそろしく馬鹿なことを、何も考えずにやってしまいます。そうして、多くの人間が、まるでロボットのように、ひとつの感情のもとに動かされ、まるごと破滅に向かっていくのです。

なぜかはわからないが、みながそう思っている。自分もそう思う、という感じで、みなが動かされているような時代は、神ではなく、ビーストが人間を操っている時代だと言えます。そこに人類はもう、気づいています。

現代の人が、自分の心の内面を見るとき、ビーストの声を探すことができます。たいした根拠もなく、なんとなくそう思っているが、そう思うと自分が苦しいこと、という考えがあります。それはビーストの声であることが多いのです。

たとえば、たいていの人は、「女性は馬鹿だ」と考えているでしょう。なぜだかわからないが、必要以上にさげすみたい、という考えが、自分の中にあるでしょう。男性も女性も、なぜだかそういう考えが自分の中にあり、そのために常に苦しいと感じているでしょう。なぜなら、女性を馬鹿だということが、苦しいからです。そんなことは、ほんとうの自分は思いたくないからなのです。それなのに、自分が思っているということが、苦しいのです。そしてそこから、「自分がいやだ」という感情に発展します。ビーストは常に、「おまえはいやな人間だ」「まったくバカだ」「生きる値打もない」と、人間の心の中でささやきつづけているのです。そのため、現代の人は、必要以上に謙遜します。まるで自信がなく、自分らしい行動を常に躊躇しています。

この時代、ビーストは奔流のように、人類の心の中で暴れまわったので、人類はそうとうに、自分に自信がなく、行動する勇気が持てず、まったく何もできない、という人が増えています。そして、ほんとうに、何かしなくてはいけないときに、何もできず、大変なことになっているということが、多いのです。みな、自分に自信がないのです。勇気が持てないのです。まるで、自分は馬鹿だと、思っているからです。

しかし、ビーストが化けた人間には、これはあまりあてはまりません。ビーストは、ビーストが化けた人間の心の中には、そういうことは言わないからなのです。その反対に、常に「おまえは美しい」「おまえはできる」とささやいています。それでビーストが化けた人間たちは、大した根拠もないプライドがあり、常に自信たっぷりで、行動します。周りの人がみると、なんて勇気があるんだと思うようなことを、立派にやります。できる人なんだな、という感じで、進んで物事をやるのです。けれども、中身はあまりないので、彼らのする仕事には、かなり失敗が多く、それを嘘で隠しているということが、本当にたくさんあります。

できること以上に、大きな自信を植え付けられているからです。

こうして、ビーストは、常に、ビーストをよいものにしようとしてきたのです。

人間は、以上のことがわかったら、やるべきことを考えましょう。

自分の心を見つめなおし、ビーストの声を発見したら、もういやだと言い返しましょう。そして、常に、自分はできる、自分はいいやつだ、と自分に言いましょう。また、同じようなビーストの声で苦しんでいる人に、「あなたは立派な人だ」「いい人だ」と言いましょう。お互いに、たたえましょう。みな、すばらしいのです。

この時代に生まれた人はみな、ビーストの罵倒で、深く心が傷ついているのです。美しい人には、本当に、あなたは美しいと、言いましょう。立派なこと、よいことをしている人には、本当にありがとう、と言いましょう。お互いに、大変な時代に生まれたことを理解し、助けあいましょう。

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