世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ホトケノザ

2008-04-07 11:08:14 | 花や木

キクやサクラソウのときに言ったことがあるように、花には、人間があまり好きじゃないっていうのと、つらいこともあるけど、愛してくれる、ていうのがあります。

人間は今、とても馬鹿なことをしているので、花も、本当は苦しいと感じているのです。花はみなの、本当の心が見えるから。人間の馬鹿なうそなんか、ぜんぜん通用しないから。

菜の花やサクラが、時々崇高なまでに美しく見えるのは、どんなにつらくても、愛してるよといってくれる花だからです。だから、人は、満開のサクラや、野原いっぱいの菜の花を見るとき、まるで自分を忘れたように見とれてしまう。もはやこの世のことではないかのような、美しさに酔いしれてしまう。

けれども、花には、キクやスミレのように、人間に厳しい顔をするものもいます。人間はその花を見ると、きれいだけど、なんだかいやだなと感じます。それで、菜の花やサクラほどには、いい顔をしません。花に怒られるからです。

このように、人間が見て、なんだかちょっといやだなって感じてしまう花は、人間に少々厳しい花なのです。ホトケノザも、実はそういう花です。春一番に野に紅をともしてくれる、小さな花ですが、タンポポほどには、ほめそやしてくれません。レンゲソウに似ていなくもないのに、子供たちはそれをめったに摘みません。なぜかな。

それは、ホトケノザが、すごく怒っているからです。人間が嫌いなんではないのです。むしろとてもやさしい花。でも、人間の馬鹿さかげんに、我慢がならないのです。

画像で見ても、なんとなくわかるでしょう。目で見ると、ほんとうにかわいい花なのに、写真に撮ると、どうしても痛いと感じる顔に写る。それはホトケノザが、こういっているから。

やめなさい。ばかなことはやめなさい。

鈍い斧のような叫びが、悲痛に胸を打つように、ホトケノザは言っている。もう我慢がならない。人間がやっていることは、馬鹿なんだよ。なにもわかっていないんだよ。

いやなことを言われているので、人間はほとんど、ホトケノザを見ようとしません。咲いていても、気づかないように通り過ぎるのです。なんとなく、見るのもつらいからです。

失敗をやらかして、自分が馬鹿じゃないかって、苦しさを今抱いている人は、ちょっと、ホトケノザに寄っていってみてください。ホトケノザは、あなたを、怒りませんよ。馬鹿はやめてよって、泣いてくれるのです。

人間のおろかさに、誰よりも痛みを感じてくれる花なのです。


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