世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

空に

2013-05-02 07:03:13 | 詩集・貝の琴

かなしみを 鳩に託して
空に解き放つ
影を塗られた
君の微笑みの仮面の
割れ目に潜む
ちいさな黒いトカゲが
白アリのように
君のたましいをむさぼっている

なにがほしいときくと
君は言う
おまえが ほしいと
わたしが ほしいと
君はだれにでもそういう
すべてが ほしいと
自分以外の すべて

悲しみを 鳩に託して
空に解き放つ
地上をただよう
硬い幽霊の群れが
何もない空っぽの魂を抱いて
歩いていく
風の中を泳ぐ
見えない魚が
ミントの香りを放ちながら
君の心臓を通り抜けていく

悲しみを鳩に託して
空に 解き放つ
見てしまった真実のかけらに
わたしの心臓は
水をたっぷりと吸った海綿のように
重く垂れさがる
けれども

夢のように 希望を解き放ち
静かな声で歌うわたしの
誰の耳も染めぬその声を
風がさらってゆき
白い鳩の翼を染めて
太陽に溶けてゆく

悲しみを鳩に託して
空に解き放つ



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