あなたの行うことの何と多いことよ。しかし、それは人々の視界から隠されている。
唯一の神。それ以外存在しない者。
あなたは一人で、あなたの心のままに大地を創った。そして、人類、大家畜、小家畜、
地上にいて、その両足で歩む全てのもの、空中にいて、その翼で飛ぶもの、カルゥとクシュの国々、
エジプトの国を創った。
あなたは、すべての人を、そのあるべき場所に置いた。
アテン賛歌
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アクエンアテンはエジプト古代史において一際光る存在感をもつ王である。唯一神アテンを掲げ、それまでのかなり堕落した多神教から、愛の唯一神を信仰する一神教への改革を断行した。
改革は様々な難と誤解にあい、汚されて失敗に終わったが、その試みは、数千年経った今でも伝えられている。彼は、偉大なことをなしたかったのだ。
イスラームの教祖であるムハンマドもそうだが、一神教を提唱する心には、北辰制を考えたかのじょの心と共通するものがある。馬鹿がはびこり、真実が嘘と紛れて誤解され、世が乱れに乱れている時、愛というものを中心に国と世界を立て直していこうという試みである。
事実から言えば、唯一神などというものは存在しない。神はそれはたくさんいらっしゃる。しかしアテンにしろアッラーにしろ北辰にしろ、それは神というより、永遠の愛の真実の隠喩なのである。
アクエンアテンは、当時の人間の教養から推測できる、永遠の愛の概念を、アテン神を採用することで果たそうとしたのだ。それによって、みだりに汚くなっていた当時の信仰を正そうとしたのである。
唯一の神、それ以外には存在しない者、ということばは、この世界には愛以外のものは存在しないというものだ。
一切の存在と幸福とあらゆる偉大な業績が起こすすばらしい現象を、保証する黄金の真理が、愛なのである。それを古代エジプト人の教養で構築しようとすれば、アテンというただひとりの神になったのだ。
この真実を中心におけば、すべてはよくなっていく、愛のまことを信じることは、すべての自己存在の存在価値を、まさに唯一の太陽のように認めることなのだ。
それこそが北辰制の根幹となる考えである。国家の体制を、愛の真実で構築しようという試みなのだ。
アクエンアテンの業績は今も正当に評価はされていない。当時の常識を根底から覆す試みは、社会の重鈍な抵抗にあい、挫折した。偉大なる失敗だ。だが彼はこれで終わる人ではない。
新たにこの地上に生まれ、またこの地上に永遠の愛の真理を打ち立てるべく、行動を開始するであろう。