ながすゑを おもひわずらひ 風窓に まよひきたりぬ 十六夜の月
追憶の 川面を歩き ひと振りの 金の笛吹く 風は血の声
痛きといふ 痛きおもひは 心臓の 隅に建てたる 小屋にしまひぬ
瑠璃の玉 手に弄び あをきもの すべてを思ひ なすべきをなそ
まんじゅしゃげ 摘みて抱えて なにもなき 胸満たさむと 百舌鳥の声聞く
秋の宵 枝に残りし 柿の実を ともしびと見て 道を正さむ
赤星の 空をすべりて われを訪ふ 長きおもひを 清めに来しと
泣けば泣け 喉割りて泣け たれがいふ わらひくだきて 前を向け我
若者よ つらしといふな くるしくも くるしといふな いへば星落つ
我は我の 君主とあれば 身を統べる ものは我のみ 我は我なり
長々と 歩き来し道 ふりかへり 月の光の さやけきの見ゆ