かのじょはこの芸術家がきらいだった。
だからめったには使わなかった。
なぜというに、この芸術家こそが、人間の狡さの象徴だからだ。
真実を告げれば、この芸術家の作品は、ほとんどが、裏の馬鹿の操作によってつくられたものなのである。こういう表現者はけっこういる。かのじょの好きな画家の中にも、けっこういるのだが、ミケランジェロほど、ずるい芸術家はいない。
人間は、天使には絶対に正当な評価をしないが、人間には、下駄をはかせまくって、天才を作り上げる。ミケランジェロが順当に人間に評価されているのに対し、レオナルドに対して人間は今も、歪んだ感情を持つ。これによって、ミケランジェロが、本当は、偽物だったということが、わかるのである。
今も、ミケランジェロの作品にケチをつける人間はあまりいない。だが、レオナルドにはいつも、歪んだ人間の気持ちがつきまとう。
要するにミケランジェロは、レオナルドをつぶすために、その対抗として人間がつくりあげた天才なのである。
信じられないかね? だが本当なのだ。
いずれあなたがたは、ミケランジェロの真実を見る。そのとき、彼の作品が、どのように見えるかは、お楽しみにしておくがよい。言っておくが、かなり、きついぞ。
人間というものは、本当に優れたものには、いくつもあらを探して歪んだ評価をするが、本当の馬鹿には、欠点など一切見ずに最高の名誉を与えるのだ。神のごとき、と。