ティツィアーノ・ヴェチェリオ
そこでピラトは、イエスを捕え、むちで打たせた。兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、それから、その前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。
(ヨハネによる福音書)
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よく描かれるテーマです。尊い人が裸にされ、むごい恰好をさせられて衆目にさらされ侮辱されている。人間はよくこういうことをしてきました。自分というものが果てしなく辛かったからです。あまりにも愚かなことをしている。だから、少しでも自分より清い人がいればこういうことをせずにいられなかった。裸にして誰にでもある恥ずかしいところを見てあざ笑う。恥ずかしいのはこういうことをしている人たちなのだ。
このティツィアーノの絵は、彼にしては非常に下手です。画家が苦しくて描けないのを無理矢理描いている感がある。それがかえって美しいと思いとりあげました。