世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ネオの恋⑧

2018-01-20 04:13:04 | 風紋


「おれ、釣りがもっと上手にできるようになったら、狩人組に入れてもらおうと思うんだ」
「へえ、いいじゃない」
「鹿いっぱいとってくるんだ。狩人組に入れば、みんながいろんなこと教えてくれる」
「すてきね」
「ずっと、モラはおれといるよね。そしたらおれ、モラにとった鹿の、一番いい肉やるよ」
「いいわね、それ」

ネオは明るい目をして、モラに自分の夢をみんな話した。モラはみんな聞いてくれた。ぜんぶ、いいことだって言ってくれた。ネオを見るモラの黒い目は、どこかハシバミの色を含んで、とてもきれいだった。笑ってくれると、ネオは何だか自分がすごくいいものになった気がした。

子供ができるまで、釣った魚をずっと持って来よう。

ネオはモラと別れて、村を走りながら、熱い心でそう思った。そんなネオが通り過ぎていくのを、アシメックが見た。

空を飛ぶ鳥は、いつも明日の方に飛んでいく。アシメックは若い奴を見ると、いつもそんなことを思う。走っていくネオは実に幸せそうだった。アシメックは笑った。オラブのことがひっかかっていたが、村の日々が平和に過ぎていくのは、族長にとってはいいことだった。

もうそろそろコクリがまた咲く。エルヅのところにいって、ナイフのことでもきいてこよう。そう思って、アシメックが宝蔵を訪ねると、エルヅは宝蔵の中で何かしきりにうなっていた。

「どうした、エルヅ、なにしてるんだ?」
「ああ、アシメック!」

エルヅは目を輝かせてアシメックを振り向いた。





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